日産とルノーの関係見直し、ルノーは大儲け。日産にメリットあるのか?

■ルノー・日産・三菱による新アライアンス記者発表に国沢光宏が思うこと

●日産は元の時代に戻るのか?

日産自動車
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日産のルノーの関係見直し、ほとんどメディアはポジティブに使えている。なかには「植民地支配からの脱却だ!」みたいに報じるメディアすらあって驚く。

確かに、日産はルノーの了解なければ様々な決定を出来なかった。日産が上げた収益による株主配当の43%を、ルノーに持っていかることに抵抗を示す人も多かったようだ。

ただ、ルノーの影響力が薄くなるということは、1999年以前の日産に戻るということを示す。

考えて頂きたい。なんでルノーが日産の43%の株を持つに至るのかといえば、日産の経営が厳しかったからに他ならない。

当時の日産は、抜本的な変革を行えないまま赤字を垂れ流し続け、2兆5000億円とも言われる有利子負債を抱えてしまう。新型車の開発予算すらままならない状況だった。事実上の破綻状態。ルノーが出資し、ゴーンという稀代の手腕を持つ経営者を送り込んで来なければ、いかんともしがたかった。

ゴーン氏は資産の切り売りをするのだけれど、同時に攻めることも行っている。

翌年に有利子負債を減らしながら黒字化。3年後に株主配当を復活させた。ちなみに株主配当、日産からすれば支払先が変わるだけ。相手が銀行であっても商社であってもルノーであっても、支払わなければならない。

まぁルノーからすれば「株主配当を手厚くしてね」ということくらいだったと思いますが。

いずれにしろ日産側のデメリット無し。

●今後、日産は的確な判断を即決できるのか?

クルマの開発費も困らなくなった。現在、日産で最も売れているノートは、ルノー開発のプラットフォームだ。日産開発のエンジンはルノーも使うことにより、大幅なコストダウンが可能になっている。基本部品の共通化は至る所で行われており、これまたコストダウンに結びつく。ルノーとの関係が薄くなると、2022年に於ける日産の世界販売台数は387万台のホンダより少ない323万台になり、スケールメリットという点で厳しい。

ということで、今回の提携見直しの本質は、「ルノーから自由になるけれど、1999年以前の日産に戻る」と言うこと。

100年に1度の変革期と言われる中(現代自動車の歴史を見ると、初めての変革期だと思いますがね)、日産の経営陣がリーダーシップを持って次々とやってくる「どうする?」に、的確な判断を出来るかどうかということになります。トヨタのようにスピード感を持って決めて行ければ面白いかもしれない。

ただ、1999年以前のような”役人的な経営”をしていたらどうか。日産の体質が変わっていなければ、以前のような「しがらみだらけの選択」をすることになるだろう。

実際、株価を見ると、提携見直しの話が出るようになってジワジワ下がっていた。2月6日のリリースでホンの少し上がったものの、翌日は上がった分だけ下がって同じような株価になっている。投資家も「様子をみましょう」という判断なんだと考えます。

ルノーにとっては、1999年の投資額およそ6000億円。そして今回、日産の株式を28%分手放すと5000億円以上の売却金が出る。そして、新型コロナ禍前の5年間(2016~2020年)だけでも、ルノーへの株主配当は4000億円ほど。そいつを2001年から続けているのだから美味しかったと思う。加えて、欧州はエンジン積む既存のルノー車は減って行く一方。だからこそ、新しく電気自動車会社を立ち上げる。

現時点でプロパーじゃない社長は日産だけ。そもそも日産の顔が見えない。2月6日(月)に行われた記者会見でも、支配からの解放しかポジティブなアピールはなかった。

今後の日産を見守りたいと思う。

(国沢 光宏)