ホンダから「ザッツ」デビュー。名前の由来は、“That’s(あれだッ!)”【今日は何の日?2月8日】

■シンプル、スマートをアピールするも一代限りで終了

2002(平成14)年2月8日、ホンダから新型の軽自動車「ザッツ(That’s)」が発売されました。ザッツという変わった名前は、ユーザーが思わず“あれだッ!(That’s)”と言ってしまうような、親しみを感じる存在になるようにという想いが込められていました。

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2002年にデビューしたザッツ。ライフの派生車でラウンドスクウェアのスタイリングが特徴

●“あれだッ!”というインパクトは残せず一代で生産を終える

ザッツは、3代目ライフの派生車として誕生しました。

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広い室内空間と大きめのウィンドウのThat’sのインテリア

角を丸めたラウンドスクウェアのスタイリングで、全体のフォルムだけでなくヘッドライトやドアミラー、リアコンビランプも同様なイメージで統一。インテリアは、広い室内空間と大型のウインドウガラスによる解放感が特徴です。

パワートレインは、660cc 3気筒SOHCのNA(無過給)と、インタークーラー付ターボ仕様の2機種と、3ATの組み合わせ。駆動方式はFFとフルタイム4WDを設定。また、ボディカラーが多彩で、7タイプのスタンダードカラーと7タイプのツートンカラーという計14色がラインナップされました。

ザッツは、シンプルで使いやすく低価格なこともあり、好調な販売で滑り出しましたが、その後は伸び悩みました。同時期に、デザインが類似した三菱「eKワゴン(2001年~)」やスズキ「ラパン(2002年~)」など、ライバル車が多かったためです。

●ザッツを進化させたゼストが登場するも、やはり一代で生産を終える

2007年に生産を終えたザッツの後継として登場したのが、4代目ライフのプラットフォームを利用した派生車の「ゼスト」です。

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2006年にザッツの後継として登場したゼスト

本家のライフが、女性が好むキュートな雰囲気に対して、ゼストは低床ボディやステップワゴン並みの車内高がセールスポイントでした。エンジンは、ライフと同じ660cc 3気筒i-DSI(2点位相差点火制御)。DSIとは1気筒あたり2本の点火プラグを配置して、位相をずらして点火する手法で、これにより急速燃焼が実現されました。

ゼストも、ザッツ同様シンプルさをアピールしましたが、その分、個性足らずだったようで、ライフとともに2014年に生産を終えて、N-ONEにバトンを渡しました。

●ザッツ、ゼストと続いて、ヒットモデルN-ONEが誕生

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2012年にデビューし大ヒットしたNシリーズのN-ONE

ホンダは、2011年の東京モーターショーで、新世代軽自動車の「N CONCEPT」を発表。

かつての名車「N360」をリスペクトして、新設計のプラットフォームとボディ、センタータンクレイアウト、新開発のDOHCエンジン+CVTのパワートレインを搭載した、まったく新しい発想の軽自動車でした。

2011年末の「N-BOX」、翌年2012年の「N-WGN」に続いて、ザッツとゼストの後継となる「N-ONE」が登場。N360をモチーフした可愛いスタイルと上質なインテリアのN-ONEは、大ヒットとなります。N-ONEを含めたNシリーズは、現在も軽をけん引して大ヒットを続けています。


シンプルとスマートさが売りのザッツは、ホンダ車としてはやや個性が足りなかったように思います。しかし、ザッツで磨かれた低床化による室内空間と荷室空間の広さ、運転のしやすさ、安全性などが、結果としてNシリーズのN-ONEに生かされ、花開いたのです。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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