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■カワサキが399㏄水冷4気筒エンジン車を発表
いまや二輪において、4気筒エンジンというのは少数派です。
1980年代のバイクシーンで記憶が止まっているオールドライダーからすると、250cc以上の4サイクルエンジンは、すべて4気筒というイメージもあるかもしれませんが、各社のラインナップを見ても4気筒なのは600cc以上のスポーツモデルくらい。リッターバイクであっても2気筒がスタンダードといえるのではないでしょうか。
そうしたトレンドに、ひとり抗っているのがカワサキです。
2020年に発売開始となったNinja ZX-25Rは、名前の通り250ccクラスのスポーツモデルですが、新開発の4気筒エンジンを積んでいます。
ロジックでいえば同程度のパワー・トルクを発生でき、許容回転を上げられるのであれば、気筒数は少ないほうが車体は軽くできますし、設計の自由度も増します。ですが、誰もがレースのため、速さのためにバイクに乗っているわけではありません。
あえてバイクという、雨の日には濡れてしまうような乗り物を好むのは、そこにロマンがあるからです。4気筒エンジンというのは、そうしたマインドを刺激してくれるメカニズムという面もあるのではないでしょうか。
そんなカワサキがやってくれました!
今度は400ccクラスの4気筒エンジンを新設計、スポーツモデルに搭載したのです。
北米で発表されたニューモデルの名前は「Ninja ZX-4RR」。現地では最上級仕様といえるKRT EDITIONのローンチがアナウンスされ、メーカー希望小売価格は9699ドル、日本円にすると125万円といった価格感で販売されることが明らかとなりました。
●ニンジャZX-4RRは北米で約9700ドル
1万ドルを切った価格設定というのは、4気筒エンジンだからといって付加価値商品として高値で売ろうというのではなく、4気筒マルチの魅力を多くのライダーに味わってほしいという、作り手の願いが感じられるのは筆者だけでしょうか。
とはいえ、メカニズムを見ていくと、ヘッドライト間のインテークから走行風を取り込むラムエアの採用、クラッチ&シフト操作を楽にするアシスト・スリッパークラッチ、クイックシフターといったメカニズムは、標準で備えているようです。
このあたりZX-25Rにも採用されていますから、兄貴分たるZX-4RRで非搭載にするというのは考えられなかったのでしょう。
電子制御では、3つのモードを持つトラクションコントロールを備えていることも発表されています。4.3インチのカラー液晶メーターは、そうしたモードを切り替えることを楽しませてくれそうです。
●大型二輪免許不要の時代に戻るか?
日本の二輪免許制度は、大きくわけて3段階になっています。
125ccまでの車両に乗れる「小型限定普通二輪」、400ccまでの車両に乗れる「普通二輪」、排気量制限のない「大型二輪」と分類されます(それぞれにAT限定もあります)。
冒頭でも記したように、新車で4気筒エンジンモデルを選びたいなら、大型二輪免許が必須といえました。
普通二輪免許で運転できる4気筒エンジンのバイクは、カワサキZX-25Rか、2022年に生産終了となったホンダCB400スーパーフォアくらいしかなく、それぞれのカテゴリーで一択状態だったからです。
大きなトレンドとして、4気筒エンジン≒大型二輪という状況は変わらないかもしれませんが、カワサキZX-4RRが日本国内でも販売されるようになり、4気筒エンジン搭載車へのニーズが高まれば、他社が追随する可能性はないとはいえません。
1980年代、まだ大型二輪免許が教習所では取得できなかった時代(限定解除をしなければならなかった時代)には、2サイクル250ccエンジンや4サイクル400ccエンジンを搭載したレーサーレプリカが全盛で、あえて大型二輪に乗る必要がないというムードもありました。
はたしてZX-4RRが登場したことで、バイクマーケットのマインドへどのように影響するのか気になります。
カワサキの399cc4気筒エンジンはレアな存在になるのか、トレンドを変えるのか、大いに注目していきたいと思います。