バッテリーEVの日産「アリア」が北極から南極までの冒険に挑む

■アリアへの充電はどうする?

電気自動車(バッテリーEV)のオーナーであれば、寒い冬場の航続距離(電費)に気を遣う方も多いのではないでしょうか。メルセデス・ベンツEQSのように、WLTCモードで700kmもあれば安心できそうである反面、1578万円〜という価格は、補助金があっても誰もが手を出せるモデルではありません。

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BFグッドリッチの39インチタイヤを履く

そんな中、日産自動車は北極から南極に向かうという日産アリアを公開しました。そんな極地でBEVが走破できるのか気になります。

北極から南極(Pole to Pole)までは、約2万7000kmの冒険になるそうで、今回は「Pole to Pole」探検チームとともに、アイスランドのレイキャビックで日産アリアが公開されています。

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日産アリアと「Pole to Pole」探検チーム

2023年3月にスタートするというこの冒険では、氷原や深い雪、急勾配の山や人を寄せ付けないような砂漠の砂丘など、美しくありながらも極限までに過酷な地形や環境の中を走破することになります。

極地探検車のスペシャリストであるアークティック・トラックス社は、日産のデザイン、エンジニアリング・チームと協力し、こうした厳しい環境に対応できるようにアリアを準備してきたそう。

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走行イメージ

ただし、変更箇所を意図的に最小限に抑え、バッテリーやパワートレインは、市販車のままになっています。

最も大きな変更点は、サスペンションの調整と39インチタイヤの採用。日産の電動四輪制御技術「e-4ORCE」と組み合わせることで、今回の探検車は、極限の地形に挑み、南極点への到達に必要な快適性と制御を実現したとしています。

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極地仕様アリアのリヤビュー

冒険のリーダーであるクリス・ラムゼイ氏は、

「私たちの冒険が目指すことのひとつに、クルマの本当の実力、日常的な能力を明確に示すということがあります。
標準的な市販BEVを使い、最小限の変更でどんな場所も走ります。今回も同様で、ドライブトレインとバッテリーは、工場出荷時のままである市販仕様のアリアを使用し、いかに高性能で多用途であるかを示したいと思っています。
サスペンションを変更し、ホイールアーチを広げることで、安定したプラットフォームと39インチのBFグッドリッチタイヤの美点をより引き出すことができるようになりました。ベース車から素晴らしいモデルがさらにスタイリッシュになり、地球の果てまで行けるよう準備が整いました」

とコメントしています。

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牽引可能なプロトタイプには、軽量の風力発電機とソーラーパネルが搭載される

ラムゼイ氏は大のコーヒー好きだそうで、特別に組み込まれたエスプレッソマシンによって、長時間の旅の途中でサステナブルコーヒーをいつでも楽しむことができるとのこと。そして、屋根の上のユーティリティユニットから直接飛ばすことができるドローンを使って、壮大な環境の美しさを撮影することも可能。

最も気になるのは充電をどうするのかという点。再生可能エネルギーを活用する革新的なポータブルユニットを極地での充電に使うそうです。

牽引可能なこのプロトタイプには、軽量の風力発電機とソーラーパネルが搭載されていて、強風と長い日照時間を利用して、ドライバーが休憩している間にEVのバッテリーに充電が行われることになります。

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専用の足まわり以外は、最小限の変更にとどめられているという

コドライバーを務める妻のジュリー・ラムゼイ氏は

「この4年間、私たちは今回の計画と準備に生活の大半を費やしてきました。3月のスタートが本当に楽しみです。
旅の途中では、気候変動に対して積極的に行動を起こしているコミュニティや個人の興味深い取り組みを見つけ、その経験とストーリーを皆さんと共有していきたいと思っています。私たちの冒険は、これまで誰も試みたことのない世界初の挑戦です」

と意気込みを語っています。

(塚田 勝弘)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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