ゴールドウィンが販売するスウェーデン製電動バイク・CAKEに試乗。乗り味はかなりビミョーだが、個性的ではある

■荒削りだけど、北欧風非日常感が味わえた

Osa_flex_リヤビュー
試乗したCAKEの電動バイクOsa flex。角パイプのフレームにシートやヘッドライトがクランプされるユニークな作りです

バイク用のアパレルでも知られるゴールドウィンが、スウェーデンのプレミアム電動バイクの国内販売を発表。その試乗会が行われたので行ってきました。

ユニークで魅力的なデザインではありましたが、乗ったモデルに関しては、正直に言って乗り味はビミョー。ただ、非日常感と、ある種の未来感は間違いなく味わえるバイクでした。

●ゴールドウィンが国内独占販売

4輪、2輪ともにEVの話題が増えてきています。個人的にEVのパワー特性は非常に好きなのですが、決定的な欠点もわかっています。航続距離です。4輪車よりもさらに軽くしないといけない電動バイクは、航続距離が非常に短く、かなり限定された用途でしか使い物になりません。

なので、現在の電動バイクはどうも興味が持てないのですが、これはちょっと乗ってみたい、と思わせるモデルです。その大きな理由のひとつが、ゴールドウィンが独占的パートナー契約を締結して、日本で販売するということです。

ゴールドウィンは、ウエアやバッグなどのバイク用品を扱っているメーカーなので、バイク乗りならご存じの人も多いでしょう。しかし、それだけじゃありません。バイク用品やスキーウェアなどは、自社ブランドで一流のものをリリースしています。そのほかにも、ノースフェイスやヘリーハンセン、エレッセ、スピード、カンタベリーなど、そうそうたるブランドを扱っているアパレルメーカーなのです。

そこが扱うんだからスグレモノなんだろう、と思ったわけです。

●スウェーデンの新興プレミアム電動バイク/自転車メーカー

渡辺社長とイッターボーンCEO
ゴールドウィンの渡辺社長とCAKEの創業者でありCEOであるステファン・イッターボーン氏

そのゴールドウィンが扱うのが、「CAKE」と名付けられた電動バイク。

製造しているのは、スウェーデンの新しいメーカー「CAKE 0 emission AB」で、「エキサイティングなモビリティ体験」と「環境への責任」の両立を目指して、ゼロエミッション社会への移行を加速させることを使命としているそうです。

その製品は、人と自然の共生をよりスマートで環境に優しく、健康的かつ平和的に実現することを目指しているそうですが、電動バイクというのは静粛性が高いので、自然や都市の音をより明瞭に体感しながら移動することができるわけです。また、走行中の二酸化炭素の排出はゼロ。生産時の二酸化炭素の排出に関しても、スウェーデンの電力会社との協業によって、2025年までにゼロを目指して改良に取り組んでいるとのことです。

今回展示されたモデルを紹介しましょう。まずは、スクーターのようなフレームのMakka。リヤのインホイールモーターで駆動するようです。これは最高速が45km/hで、航続距離は54km、重量は70kgだそうです。

次が、Osa+(正確にはOではなく、オーウムラウト)。これはユニークなモデルで、太めの角パイプが中央を貫いています。そこにクランプ的なものでシートを固定したりできるんですね。いろいろ拡張性がありそうです。最高速が90km/hで航続距離が111km/h、重量は97.5kgです。

そしてKalk。これはオフロード走行用のモデルですね。中でもKalk OR Raceというモデルはオーリンズのサスペンションを備えています。最高速度は90km/hだそうです。

また、より小型なオフロードバイクのgoというモデルもありました。

いずれも、非常に魅力的なデザインですね。ちょっと日本人には発想できそうにない個性があります。これが北欧デザインなんですかね。それとも、ベンチャー企業ならではの自由さがあるのかな。

●乗り味は自転車みたい?

さて、その中のOsaシリーズのOsa  flexというモデルに試乗することができました。借りられる時間は30分だけだったので、本当に会場のまわりをちょっと走っただけです。

まず、電動バイクらしくトルク感のある加速力は気持ちいいです。ただ、走行モードによって、30km/hちょっとと40km/hちょっとで加速が急に頭打ちになりました。また、ブレーキは前後とも利きは十分。加減速には不満はありません。まぁ、このへんは電動バイクとしては普通なんですが。

一方、なんかサスペンションがしなやかじゃないというか、ストロークが短いような。もうちょっとグーッと沈み込んで、その先でショックを吸収して欲しいところで、あまり沈み込まないような、そして、そこからポコポコとした突き上げがあります。

バイク的っていうより、自転車的な感じかな。車体が軽いからしかたがないのかな。それとも、シートが自転車のサドルのような感じで、しかも、ほとんどクッション性がないものなので、そのせいかもしれません。

Osa flex試乗2
街中で低速なのに、ずいぶんバンクさせて走っているように見えます。セルフステアが切れてくれないからかなぁ

そして、ちょっとしか乗っていないからはっきりはいえないのですが、右折時・左折時ともに、最初に曲がったときに、「あれっ、セルフステアが切れてくれない!」というような感覚を受けました。乗りかたが悪いのかなぁ。でも、たいていのバイクや自転車で、こんな印象を持ったことはないんですけどね。

まぁ慣れれば問題ないのかもしれませんが、普通のバイクでも自転車でも感じないような違和感を覚えた瞬間はありました。

Osa flex走行
まっすぐ走っているぶんには軽快で静かで快適です

というわけで、試乗したのはOsaだけですが、乗った印象は正直にいってビミョー。軽い感じがするのはいいんですが、「完成度が高いね!」とは感じませんでした。

そして、気になるのはその価格で、このOsaのシリーズのOsa+というモデルは225万5000円! Kalk&(オーリンズ搭載じゃないモデル)が291万5000円! Makka flex :workでも118万8000円! 高い!

確かに、デザインや個性は魅力的ですが、それにしてもこの価格はどうなんでしょう? バイクとしてはかなり荒削りな感じで、特別パワーがあるわけでも、航続距離が長いわけでもない。電動ということと、魅力的なデザインから「欲しい!」と思った人も、どこかで一度、試乗してから買うことをおススメします。

●ゴールドウィンのパークで走れる!?

いっぽう、アパレルメーカーであるゴールドウィンがこのバイクを販売する理由ですが、ゴールドウィンの渡辺社長によれば、デザインに感銘を受けたこと、モノ作りへの考えかたや環境への意識がゴールドウィンに近いと感じたところ、などからきているそうです。

また、ゴールドウィンはアウトドアスポーツに取り組んできたこともあり、音が静かな電動バイクなら自然に没入できるというところにも魅力を感じたようですね。

ちょっと面白いのは、特にオフロードモデルであるKalkに関してですが、ゴールドウィンが富山県にオープンさせる予定の『プレイ・アース・パーク』で体験できるようにすることも考えているそうです。また、最近はスキー場が夏場のアクティビティにも力を入れるようになってきていますが、そういう場所でも活用できそうです。

たしかに、アウトドア・パークで借りて遊べるとか、リゾート地でレンタルして移動に使えるとか、そういう商業的な使いかたにはいいかもしれません。

静かなので走行中にも自然を感じられるとか、排気ガスを出さないとか、乗り味が非日常的とか、デザインが魅力的とか、そういった価値が際立ちますからね。

私もレンタルでなら、またぜひ乗ってみたいと思います。

(まめ蔵)

この記事の著者

まめ蔵 近影

まめ蔵

東京都下の農村(現在は住宅地に変わった)で生まれ育ったフリーライター。昭和40年代中盤生まれで『機動戦士ガンダム』、『キャプテン翼』ブームのまっただ中にいた世代にあたる。趣味はランニング、水泳、サッカー観戦、バイク。
好きな酒はビール(夏場)、日本酒(秋~春)、ワイン(洋食時)など。苦手な食べ物はほとんどなく、ゲテモノ以外はなんでもいける。所有する乗り物は普通乗用車、大型自動二輪車、原付二種バイク、シティサイクル、一輪車。得意ジャンルは、D1(ドリフト)、チューニングパーツ、極端な機械、サッカー、海外の動画、北多摩の文化など。
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