電動スライドドアの使い方は?ダイハツ新型「アトレー」の便利装備は大進化【新車リアル試乗6-8 ダイハツアトレー ユーティリティ・室内空間編】

■荷室拡大効果であっちもこっちもひろびろと

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今回はひなのさんがいっぱい登場します

アトレー試乗・第7回はユーティリティ編のつづきで、主に乗員にとってどんな造りになっているかを見ていきます。

新型アトレーは商用車登録で、荷室が拡大されました。それが居住性にも活きているのかいないのか?

ひなのさんと見ていきます。

●室内空間

・前席居住性 & 前席シート

seat 1 front with hinano
実は…
seat 3-3 front with hinano floating back
写真で見ると小さい違いかも知れないが、上半身を背もたれに身を任せると、のけぞり、腕は伸びるようになる

頭上空間はばんざいできるほど高いわ、かつタイヤスペースがペダル横にある割に足元スペースもイメージよりも広いわ、ドアと肩の距離もあるわで広さに対して言いたい点はありません。

試乗記に書きましたが、問題はシートバックの角度が最初の固定角ですら寝かせすぎなことで、実は左写真のひなのさんはこちらが何もいわない前から「寝かせすぎ」と気づき、自分から背中を立たせています。

では背もたれに上半身をゆだねるとどうなるかが隣の写真。これじゃあ運転教本に出ている「よくない例」のいい例で、ブレーキペダルを踏める位置にスライドさせてもハンドルは遠いし、もしかしたらリクライニング機構の歯車をひとつずらしてつけたんじゃないかと思うほどです。

seat 3-5 front with hinano floating back up
大急ぎで対応を!
seat 3-4 front with hinano floating back
実際の背中はこれだけ離れている

実際、市場から声が届いているようですが、きょう造るクルマからでも対応してほしい点です。

seat 3 front 1
前席シート
seat 3-2 front 2 with armrest
前席シート・アームレスト使用状態

シート単体で見ると、好敵手・エブリイワゴンが左右つながったベンチ(風)シートであるのに対してこちらはセパレート型。形状そのものは腰部を適度に保持し、座面も長さがしっかり確保されていました。サイドにはアームレストもついています。

seat 3-6 front reclining lever
シートリクライニングのレバーは車両センター側にある

リクライニングレバーが車両内側にあるのがちょっと変わっていますが、使用中のアームレストと干渉することはありませんでした。

形そのものも機能も悪くないのです。これで背もたれ角が適当であれば…


・後席居住性 & 後席シート

seat 2 rear with hinano 1
こちらのほうが背もたれ角がピタッと決まるリヤシート
seat 2-2 rear with hinano 2
別アングルより

着座位置が前席よりわずかに高く、床も高いので、見晴らしは前席よりいくらか上。荷室拡大で倒したときのことを考え、造りは薄くなっていて着座感がいまひとつなのは仕方ないでしょう。

seat 4 rear
薄めの造りの割に着座感はよかった

前席に引き換え、こちらは商用車の決まり事でリクライニング不可(前席シートバックから後ろの空間の半分以上は荷室でなければならないという決まりのため)。だったらと、先代どころか先々々代のアトレーリバーノ(安達祐実がコマーシャルに出ていたやつ)では互い違いにスライドさせるようにしておカタい規定を突破しました。それはともかく、そのおカタい規定のためにリクライニングができないリヤシートこそ、背もたれ角がしっくりくるのはどういうことなんだ?

なお、身長176cmの筆者が後席に座るとひざが前席シートバックに接触しますが、リクライニングもスライドもしようがないので致し方ありません。

・前席乗降性

一般の…例えばミライースのようなクルマに比べればいくらかフロアは高く、小柄なひなのさんは左足をつくのに「よいしょ」という感じでしたが、前席下にエンジンを置いている割には着座位置もフロアも高くはなく、可能な限りがんばって低くしてあるという感じがします。フロントガラス=フロントピラーが立っているため、頭の動きが規制されず、どこにもぶつけていません。

・後席乗降性

四角い開口部なので女性なら両脚を揃えたまま外に向いて降りるという美しい所作が難なくと。前席よりはいくらかフロアが高いので、左足は「着地!」という感じがわずかにします。フロントも同様ですが、この種のクルマはサイドシル(敷居に相当)のない、いわゆる掃き出し構造のフロアなので、足の引っかけようがないのもいい点です。

・スライドドア タッチ&ゴーロック機能/ウェルカムオープン機能

slide door 1 switch
パワースライドドアスイッチ。上の時計マークが予約スイッチだが、両方いちどの予約はできない

スライドドアには、他のドアが閉まっている状態での電動クローズ中、リクエストスイッチかリモコンによるロック操作をすると、まず他のドアがロック、スライドドアが閉まった時点で追ってこちらもロックする「タッチ&ゴーロック機能」、左右どちらか予約した側の(左右同時は不可)スライドドア解錠範囲に入った約1.5秒後に自動でアンロック&電動オープンするウェルカムオープン機能が入っています。

予約後の待機時間は、フロントドアの約5日とは異なり、こちらは約3時間。買いものからの駐車場戻りを想定しているのでしょうが、この時間は設定変更もできます。

・スライドドアクローズ方法の隠れ技

slide door 2 secret technique of closing 1
スライドドアのアウターハンドルの操作方向は後ろのみ
slide door 2-2 secret technique of closing 2
閉めるときは外から中のインナーハンドルをつかんで前に操作して閉めるほうがやりやすかった

電動スライドドアの開閉方法には、乗車時は内側ハンドル、外側からはドア直付けのハンドル、リモコンなどがありますが、外側ハンドルは後ろ向きにしか操作できないのに対し、内側ハンドルは前後方向に動きます。

閉めるときに限りますが、スライドクローズの方向と異なる外側ハンドルを操作するぐらいなら、いっそ外から内側ハンドルに手をやり、前に操作する方がよほどクローズさせやすいことがわかりましたので参考までに。

・ポップアップガラス機構付リヤガラス

slide door 3-2 pop up rear glass 2
操作は簡単で、開閉はレバーの押し引きだけ。ある年代から上の層には懐かしいと思う

従来の昇降式をやめ、昔の2ドア車のリヤガラスのように押し出して開くポップアップ式に変更。昇降式よりは解放感はぐんと減りますが、昇降式に比べれば構造がシンプルというメリットがあります。壊滅状態になった2ドア車を知らないひとには新鮮に映るかもしれません。そのポップアップ量は51mmでした(筆者実測)。

slide door 3 pop up rear glass 1
「家政婦は見た!」の市原悦子風に、押し出しガラスのすき間からこちらを見ているひなのさん

ところでガラスの昇降を廃してポップアップ式にしたのは、荷室拡大と無関係ではないようです。構造物が入らないほどアウターパネルとインナーパネルの厚みを減らしてでも、そして突起物となるスイッチやレギュレーターハンドルを取っ払ってでも荷室幅を拡げたかった…どうやら第1回で書いた昇降式復活は望めなさそうです。

というのも、昇降式にしたければガラスの組付構造(クオーターガラスと面一でなくなる)どころか、内蔵物を入れるためにドアの厚みを増量…つまり、スライドドアそのものも、同時に、閉めたときに隣接するフロアステップ側もほとんどイチから設計しなおさなければならず、こりゃあフルモデルチェンジでないととうてい不可能だからです。

・ポップアップ式の注意点

slide door 4 pop up rear glass demerit 1 we
右ドアミラーで見たポップアップ状態。ポップアップガラス(青着色部)が車体後部(赤着色部)を遮っているのがわかるかな
slide door 4-2 pop up rear glass demerit 2 we
ポップアップガラス閉じ状態。車体後部が見える

エンジンON不要で開閉できるメリット、運転席からは操作できないデメリットはレギュレーター式そのままですが、ポップアップ状態で走って見たら思わぬ盲点が見つかりました。

ドアミラーから後方視界を得るとき、ミラー内に見るボディサイド後端がつかみにくくなるのです。したがって、斜め後ろの後続車との間隔もつかみにくくなる…ますます運転席からの開閉機構がほしくなったぜ。

写真で見るとカメラ画角の都合から、大した違いはないように感じられますが、実際の運転時には一瞬戸惑いました。開けて走るときはそのあたりを念頭に。開かないはめ殺しよりはずっとましなのだから。

なお、スライドドアでは前後分割ガラスの互い違い開閉が通例で、不可能だといわれていた、長方形1枚ガラスの昇降を実現したのは、さきのアトレーリバーノの前の、いまから先々々々代(!)のアトレーで、日本初だったそうな。自らの「日本初」を自ら捨て去るとは…

●空調/オーディオ

・オートエアコン

auto air conditioner contorol panel 1
オートエアコンの操作パネル

もう軽自動車ではとっくに普遍化しているオートエアコンをアトレーRSと同デッキバンに標準装備。安いXはマニュアル式です。

いったんAUTOを押したら、設定温度に相応しい風温と風量と吹出口選択をクルマが行い、ナノイーだ、プラズマクラスターだといった付加機能はありません。

クーラーを入れても走りの力感が減ることはなく、最近は軽自動車でもそのあたりの設計がうまくなったと思います。

うまくないのは、他社の他車の例に等しく、くもり止め(デフロスター)が吹出口選択に含まれていることで、これは「上半身送風」「上半身+足元送風」「足元送風」とは別系統にすべきでしょう。

・リヤヒーター

auto air conditioner contorol panel 2-2 rear heater 2 we
リヤヒーター本体と温度コントロールの場所はここだ!

こちらは4WD全車に標準装備。

操作部が二手に分かれているのが奇妙で、ヒーター作動(ファンON)は運転席側、温度調整は左後席シート下の本体レバーで行うというもの。ヒーター本体ごとシート下に置いているので仕方ないのかな。

<換気性能>

毎度おなじみ換気性能検証のお時間です。

アトレー試乗第4回と5回でライト性能をベタ褒めしましたが、アトレーは換気性能もなかなかのものでした。

方法は例によって、「空調モードを『上半身送風』『外気導入』『ファンOFF』にし、80km/h、100km/hでの走行風圧(ラム圧)による風の入り量が、ファン全風量のうちのいくつあたりに相当するかを見る」という、まことにもって乱暴なもの。

筆者は経験的に、高速走行でのラム圧風導入量はトヨタ車が豊かといってきましたが、アトレーはトヨタグループだからなのか、同じような傾向を示してくれました。

【80km/h時】
ファン風量全7段階のうちの、以下それぞれの状態で次の風量に相当

・全窓閉じ:0.3
・運転席窓 30mm開:0.8
・助手席窓 30mm開:0.8
・両席窓  30mm開:1.0~1.1

【100km/h時】
ファン風量全7段階のうちの、以下それぞれの状態で次の風量に相当

・全窓閉じ:0.6
・運転席窓 30mm開:1.2
・助手席窓 30mm開:1.2
・両席窓  30mm開:1.8

この実験を行ったのはこの寒い時期の夜中で、わかりやすいように風温を最低にするのですが、それはそれは風にあてた手がひんやり冷たくなるほどで、それだけ風の量が豊かだったというものです。

・9インチスマホ連携ディスプレイオーディオ

display audio 1
スマホ連携ディスプレイオーディオ。写真は9インチモデル

これは全車工場オプションで、機種によって多少変わるものの、6.8インチ版と9インチ版から選ぶことができます。試乗車についていたのは9インチ版で、RSの場合、注文時にオプション選択すると、HDMI端子がおまけで付属。他機種の場合はそのあたりが少しずつ変わってくるので、装備表をじっくり見て確認してください。

・ステアリングスイッチ

display audio 2 steering switch we
オーディオ操作用のステアリングスイッチ

ハンドル左スポークのステアリングスイッチ(オーディオ操作用)は、RSと同デッキバンに標準装備。安いXでは6.8インチ版、9インチ版いずれかを選んだ場合にセットで付いてきます。このあたりが要確認といったゆえん。

スイッチの内訳は写真のとおり。

ユーティリティ編はまだまだつづく。

次回は多彩な収容スペースをずらりと並べます。

今回はここまで。

(文・写真:山口尚志(身長176cm) モデル:城戸ひなの(身長152cm) 写真:山口尚志/モーターファン・アーカイブ)

【試乗車主要諸元】

■ダイハツアトレー RS〔3BD-S710V型・2021(令和3)年12月型・4WD・CVT・レーザーブルークリスタルシャイン〕

●全長×全幅×全高:3395×1475×1890mm ●ホイールベース:2450mm ●トレッド 前/後:1305/1300mm ●最低地上高:160mm ●車両重量:1020kg ●乗車定員:2名(4名) ●最小回転半径:4.2m ●タイヤサイズ:145/80R12 80/78N LT ●エンジン:KF型(水冷直列3気筒DOHC・インタークーラーターボ) ●総排気量:658cc ●圧縮比:9.0 ●最高出力:64ps/5700rpm ●最大トルク:9.3kgm/2800rpm ●燃料供給装置:EFI(電子制御燃料噴射) ●燃料タンク容量:38L(無鉛レギュラー) ●モーター:- ●最高出力:- ●最大トルク:- ●動力用電池(個数/容量):- ●WLTC燃料消費率(総合/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):14.7/13.3/15.7/14.7km/L ●JC08燃料消費率:19.0km/L ●サスペンション 前/後:マクファーソンストラット式/トレーリングリンク車軸式 ●ブレーキ 前/後:ディスク/リーディングトレーリング ●車両本体価格182万6000円(消費税込み・除く、メーカーオプション/ディーラーオプション)