ダイハツ「ATRAI WILDRANGER」は一見ワイルドなショーモデル…だけど、実はまじめな提案モデル!?【東京オートサロン2023】

■ダイハツ・ブース、あの緑色のワイルドなヤツは何モノか?

ダイハツブース内で妖艶、ミステリアスな雰囲気を醸し出しているTANTO CUSTOM RED/BLACKの先に、妙にオフロードテイストに溢れている緑色のヤツが1台…何者だ、コイツは?

●ATRAI WILDRANGER

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ATRAI WILDRANGER

コイツの名はATRAI WILDRANGER。

2021年12月発売の新型アトレーを衣装替え。下半身を黒いチッピング塗装と塗り分けながら緑色をまとったボディを、森林と未舗装路を模した背景と併せてディスプレイされています。

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ATRAI WILDRANGER

スズキは、(ブースのではなく、実際の)スペーシアベースのキャッチフレーズを「自分だけの移動基地をつくろう。」としていますが、コイツはもうちょい具体的で、「動く探検基地」「もっと奥まで」がコンセプトです。

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ルーフに備えられたボート

それをダイレクトに表現しているのが、ルーフ上に逆さまに載っかったボート。

クルマの方は、「鬱蒼(うっそう)と茂った緑をかき分け、道なき道をどこまでも」と、まるでアマゾンにでも出かけるような意気込みを感じる体(てい)をなしていますが、緑をかき分け抜けた先に川や海が広がっていたら、さすがに先へは進めません。

だからといって、ここで引き返すようではWILDRANGERの名がすたるというもの。ここから先がボートの出番です。

そう、このボートは、地の端っこから川、海に飛び移り、「もっと奥まで」を実現するためのものだったのです。

降ろしたボートを水に浮かべ、クルマを置いてさらに進んでいく。サイドにはオールがセットされ、夜間の探検でも視界が得られるよう、舳先(へさき)にはLEDのライトが仕込まれています。

なるほど、「地の果てまで来てもさらに奥まで行ってやる!」なんて、確かにWILDなことで。

ボートの重量は30kgほど。見た目にはとてもそうと思えないのですが、うまくすればどうやらひとりででも上げ下ろしができるらしい…。一見、お遊びで造ったクルマでしかないように見えますが、このATRAI WILDRANGERは、ただのショーモデルで終わらせるわけにはいかない可能性を秘めています。

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「救助用 RESCUE」のステッカー。災害時の救助用も想定している

担当の方の説明に思わず筆者も「ぜひ投げかけてみたら」と口にしたほどなのですが、「実は真面目にも考えていて、ここ数十年で多発している水害時には、救助用としても大いに役に立つのではないかと思っているのです。まずは自治体かな…」と。だから舳先サイドには「救助用 RESCUE」のステッカーが逆さまに貼られているわけ。

シートはフラットになるわ、12V&100V電源はついているわ。最近は車中泊ユースを想定した造りのクルマが増えました。

そしてそれはそのまま、災害時には移動可能な避難場所にもなるという、ありがたい使い途もくっついてくるわけですが、さすがに水に埋もれてしまったが最後、ひとはクルマで動くことも中で過ごすこともできなくなります。

しかしここにボートが備われば、雨風をしのぐことはできないまでも、移動の余地だけはしっかり残されるわけです。ライトだってついているから、避難時でも救助活動時でも昼夜を問わない。

いざというときは救助用に、個人所有ならひとり者でも家族持ちでも上げ下ろしして避難移動に使えるボート付きヴィークル。災害時に於けるクルマ使用の救助活動にひとつの道が加わったのかもしれません。

(文・写真:山口 尚志