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■ルノー・スポール最後のモデルは1976台限定のメガーヌ
ルノーブースのプレスカンファレンスで眩しいほどのストロボを浴びていたのが、全世界1976台限定で販売される「メガーヌ R.S. ULTIME(ウルティム)」。今後スポーツモデルの開発はすべてアルピーヌが一括して行うことになるグループにとって、これは「最後のルノー・スポール」であり、「ルノー・スポールの集大成」ともいえる1台なのです。
●実車がリアル公開されるのは世界初
「メガーヌ R.S. ウルティム」は、2023年1月11日にフランス本国でワールドプレミアされたばかり。ちなみに、同プレミアはデジタル上で実施されたため、実車の姿がリアルの世界で公になるのは、この東京オートサロン2023が世界初となります。
限定台数の「1976」という数字は、ルノー・スポールの設立年にちなんだもの。全車、センターコンソールにシリアルナンバーと、ルノー・スポール開発ドライバーであるロラン・ウルゴンさんのサインを刻んだプレートがあしらわれるということです。今回の展示車のキャビンを覗きこんでみると、「0000/1976」のプレートが装着されていました。
「メガーヌ R.S. ウルティム」は、トルセンLSDなどを採用する「トロフィ」仕様をベースに、ウルゴンさんが20年間で培ってきたパッション(情熱)とノウハウのすべてを盛り込んだそう。じつは、これからウルゴンさんの通勤の相棒になることが決まっているそうです。
●2023年春頃に600万円台中盤で発売
走りの作り込み以外にも、ルノーのアイコンであるロサンジュ(losange=フランス語で菱形の意)をモチーフにしたストライプアクセント、ブラックホイール、ブラックロゴなどを採用。前輪駆動スポーツの王者として君臨してきた誇りを感じさせる、辛口な仕立てとなっています。
なお、本限定モデルの欧州での発売に伴い、メガーヌ R.S.およびメガーヌ R.S.トロフィの生産は終了。すなわちウルティムは、メガーヌR.S.シリーズを新車で入手できる最後のチャンスなのです。
日本での発売は2023年春頃の予定で、車両価格は600万円台中盤。トランスミッションはEDCとMTの両方を日本へ導入する計画であるということです。
気になるのは1976台中、何台が日本に割り当てられるのかという点ですが、カンファレンスに登壇したルノー・ジャポン小川隼平社長は、「(日本で販売できる台数は)正式発表の際に明らかになりますが、十分な数を確保する予定です」と自信たっぷりに語ってくれました。
●ルノー・スポールの「走りの秘訣」
カンファレンスに登壇したのは、2004年以来、ルノー・スポールの“走り”を作り続けてきた名テストドライバー、ロラン・ウルゴンさん。彼のもとで鍛え上げられたメガーヌは、ニュルブルクリンクでFF最速の称号を獲得するなど、驚くべきポテンシャルで人々を魅了してきました。
スポーツカーのように速いのに、日常にもすんなりと馴染み、とにかく扱いやすく乗りやすいクルマ。ルノーのR.S.モデルに共通するそんな“走り”を実現する秘訣のひとつが、「テストの際、エンジニアがテストドライバーと共にクルマへ乗ること」であるとウルゴンさんは語ります。
「そうすれば、エンジニア自身もクルマの動きを体で感じとることができます。(ダンパーの)ハイドロリック・コンプレッション・コントロール(後輪操舵の4コントロール)も、そうやって開発してきたんです」(ウルゴンさん)
ルノーのR.S.シリーズの走りを磨きに磨き込んできたウルゴンさんと彼のチームは、現在、アルピーヌで将来製品も含めたスポーツモデルの開発に携わっています。ブランド名は変われど、1976年から培われてきたルノー・スポールの物語はこれからも続いていくようです。
なお、ルノーブースには「ラリージャパン2022」で自動車ジャーナリストの国沢光宏さんが駆ったマシン、ルーテシアRALLY5も展示されています。
(三代 やよい)