ホンダ「S660」がマイナーチェンジ。デザインの深化を狙ってボディ細部の変更、キラリ魅力度アップ【今日は何の日?1月10日】

■運動性能は変わらず、内外装とカラーリングを変更

2020年(平成32)年1月10日、発売から5年を迎えたホンダの軽オープン「S660」が、2度目のマイナーチェンジを実施。マイナーチェンジのコンセプトは“デザインの深化”、ヘッドライトやリアコンビランプ、フロントグリルなどを変更してきらりと光る個性を演出しました。

2020年マイナーチェンジのS660(アクティブグルーン・パール)
2020年マイナーチェンジのS660(アクティブグルーン・パール)


●S660の源流は、バブル末期にデビューしたビート

1980年代後半に迎えたバブル期は、軽自動車にも高性能・高機能化をもたらしました。その象徴的なクルマが、1991年にデビューした「ビート」です。

1992年に登場した軽のミッドシップオープンカー・ビート
1992年に登場した軽のミッドシップオープンカー・ビート

軽自動車ながら、2シーターミッドシップのソフトトップ付きオ-プンという贅沢なスポーツカーで、専用設計のミッドシップ用プラットフォームとオープンモノコックボディは、理想的な前後重量配分43:57を実現。パワートレインは、NAながらレスポンスの良い新開発の高回転型660cc直3エンジンと5速MTの組み合わせでした。

これにより、優れた操縦安定性と伸びやかな走行性能を誇る本格スポーツカーとして、高い評価を受けました。しかし、残念ながら発売時はバブルが崩壊して市場は嗜好性の高いスポーツカーを求めなかったため、1996年をもって1世代限りで生産終了となってしまいました。

●ビートを継承した待望のオープンモデルS660

ビートの生産終了から19年後の2015年に、ビートを継承するかのようにデビューしたのがS660です。

2015年にデビューしたS660
2015年にデビューしたS660

エンジンは、ビートがNA(無過給)であったのに対して、ターボを装着。トルクを太くして中高速域の伸びを向上させて、走りに磨きを掛けました。トランスミッションは、軽初の6速MTとCVTを用意し、CVTには力強い走りの”スポーツモード”と”標準モード”の切替え機構が装備されました。

また、曲がる楽しさを追求して高いコーナリング性能にこだわっているのもS660の特徴です。MRレイアウトと低重心で理想的な前後重量配分45:55を実現し、さらにコーナリング特性を安定させる”アジャイルハンドリングアシスト”を採用。これは、横滑り防止システム(ESC)を応用してコーナリング中にブレーキ力を制御するシステムで、これにより安定感あるコーナリングが楽しめます。

久しぶりのホンダのオープンカーということもあり、発売当初は1年以上の納車待ちとなりましたが、販売数は徐々に下降線を描きました。

●マイナーチェンジでよりカラフル&スタイリッシュに変貌

S660が迎えた2度目のマイナーチェンジ(MC)、そのコンセプトは、“デザインの深化”でした。動力性能は変化なく、内外装とカラーリングが大きく変更されました。

2020年マイナーチェンジしたS660(カーニバルーイエロ)
2020年マイナーチェンジしたS660(カーニバルーイエロ)

グレードは、MC前と同じくβをベースグレードとして、快適装備を追加したαグレード、走りを追求したModulo Xの3グレードがあります。これまでModulo Xのみに設定されていたアラバスターシルバー・メタリックを全グレードに設定、さらにαには日本初のアクティブグリーン・パール、Modulo Xには新色カーニバル・イエローIIが用意されました。

さらに、ヘッドライトおよびサブリフレクター、リアコンビネーションランプの色の変更、フロントグリルのデザインの変更、リアセンターパネル&ハイマウントストップランプをクリアーパーツに変更など、全体のデザインとしては大きく変わりはありませんが、細部に渡る変更が実施され、よりスタイリッシュになって魅力度がアップしました。


究極の軽スポーツカーであるとも言える個性的なS660は、2022年3月に惜しまれながら生産を終了しました。生産終了の一因には、昨今の衝突軽減ブレーキの搭載や衝突安全基準の達成、車外騒音規制などに対応するべく、動かしてゆく時間や開発費も、高級車とは違った利益が少ない領域にある軽自動車では、クリアすべきハードルがあるわけですね。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかも知れません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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