WRC初優勝を飾った三菱「ランエボII」発表。ポテンシャルに磨きをかけて戦闘力を強化【今日は何の日?12月22日】

■エンジンのパワーアップと曲がれる4WDを熟成した2代目

1994年デビューしたランエボIIのリアビュー
1994年デビューしたランエボIIのリアビュー

1993(平成5)年12月22日、三菱自動車が「ランサーエボリューション(ランエボ)II」を発表。翌年の1994年1月17日から発売を開始しました。

初代ランエボでの実戦経験を生かして戦闘力を強化、スウェディッシュラリーでランエボ念願のWRC初優勝を飾りました。

●ランサーのラリーデビューは、ランサー1600GSRから始まった

世界のラリーで活躍した1973年デビューのランサー1600GSR
世界のラリーで活躍した1973年デビューのランサー1600GSR

ランサーのWRC初挑戦は、今から50年近くも前の1973年にデビューした「ランサー1600GSR」まで遡ります。その年のサザンクロスラリーで、初参戦で初優勝、しかも1位から4位まで独占するという快挙を成し遂げました。翌年1974年には、当時の世界3大ラリーのサファリラリーでも優勝して、ランサーの名前は世界に轟きました。

その後、ランサーは国際ラリーで7度の優勝を成し遂げますが、オイルショックの影響で三菱はラリー活動を一時撤退します。

三菱がラリーに戻ってきたのは1981年のランサーの2代目となる「ランサーEX」の輸出モデル「2000ターボ」をベースにしたラリーマシン。2WDながら上位に食い込む健闘をしますが、1983年に4WD開発のためにWRCを再度休止します。

ターボエンジン+4WDというマシンが出来上がって、1989年に「ギャランVR-4」でWRCに挑戦。5年間で優勝6回という実績をあげた後、ついにランエボの登場となります。

●世界で勝てるラリーモデルを目指して誕生した初代ランエボ

初代ランエボがデビューしたのは1992年9月。WRCのホモロゲを取得するために「ランサーGSR1800」に、ギャラン用の4G63型2.0L直4 DOHCターボエンジンを搭載してラリーマシンに仕上げました。

1992年にデビューした初代ランエボ(1800GSR)
1992年にデビューした初代ランエボ(1800GSR)

4G63型ターボエンジンは、最高出力250PS/6000rpm・最大トルク31.5kgm/3000rpmを叩き出し、これにクロスレシオのミッションと4WDが相まって、レスポンスに優れたパワフルな走りを実現したのです。

初代ランエボは、発売前から大きな話題となり、発売わずか3日間で目標台数2500台を完売、さらに追加された2500台もすぐに完売する人気を獲得。

1993年からWRCグループAに参戦し、最高位はRACラリーとサファリラリーで2位ですが、高いポテンシャルを披露しました。

●初代をブラッシュアップして戦闘力をアップした2代目ランエボ

1994年に登場した2代目ランエボは、初代の実戦経験を踏まえてさらなる戦闘力強化を図りました。

エンジンはインタークーラーを大型化、そのほか排圧低減、過給圧アップ、バルブリフト量アップなどによって、出力を260PSに向上。さらにサスペンションの改良やボディ剛性アップ、ホイールベースとトレッドの拡大によるタイヤのサイズアップ、リアに機械式LSDを採用するなどして、特に初代で不評だった旋回性能が大幅に改善されました。

1995年にデビュー、WRCを席巻したランエボIII
1995年にデビュー、WRCを席巻したランエボIII

ランエボIIは、1994年からWRCグループAに参戦、1995年の第2戦スウェディッシュラリーでランエボシリーズとして初の優勝を飾ります。

ここからランエボの大躍進が始まり、次に登場したランエボIIIは1996年に7戦中5勝を上げ、トミ・マキネンは以降4年連続でドライバーズチャンピオンに。また、1998年にはマニュファクチャラーズタイトルを獲得するなどして、三菱ラリーの黄金時代を作ったのです。


ランエボの戦闘力が花開いたのは3代目ですが、名機4G63型エンジンと曲がれる4WDのポテンシャルを示した2代目の果たした役割も大きいですね。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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