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■高いリセールバリュー前提のサブスク、まずはプリウスから
自動車メーカーであるトヨタとクルマのサブスクリプションサービスを提供するKINTOは、新しいサブスクサービスとして「KINTO Unlimited」を立ち上げることを発表しました。
発表によると、新サービスである「KINTO Unlimited」とは、『クルマをお届けした後の「進化」と「見守り」を通じてクルマの価値を維持し、その分を、サブスクの月額利用料の引き下げにあらかじめ充てることにより、お客様が本サービスをリーズナブルにご利用いただける』サービスになるということです。
簡単にいうと、リセールバリューを維持することで従来の計算よりもクルマの残存価値を高め、サブスクの利用料金を抑えることが期待できるというものです。
そのポイントとして挙げられているのが「進化と見守り」ですが、あえてカタカナで表現するとアップデートとコネクティッドとなります。
クルマの価値は経年や走行距離による機械の劣化と、放っておけば古くなる一方の機能性によって失われるとすれば、コネクティッドによって劣化を防ぎ、アップデートによって機能を維持することはリセールバリューの維持に役立ちます。
●トヨタはクルマを売らないスタイルになる?
機械の状態を維持、機能を最新状態にキープするサービスはユーザーの利便性や満足度アップにもつながるでしょう。
新サービス「KINTO Unlimited」は、ひとまず新型プリウスからの提供となるそうです。そもそもプリウスはリセールバリューが悪い種類のクルマではありませんので、ことさらにアップデートをしなくともある程度のリセールバリューは維持できると考えられます。はたして、今後発表されるという利用料金は、新サービスのうたい文句通りの安価なものになるのでしょうか。
それはともかく、新サービス「KINTO Unlimited」用に作られるプリウスには、ハードウェアのアップデートを考慮して、事前に配線をするなどして取付を容易にする工夫がなされると発表されています。
従来より、ディーラーオプションを考慮して、標準状態から配線を取り回しておくという手法はありますが、わざわざトヨタが発表するということは、そうしたレベルを超えた配線を設計段階から盛り込んでいるということでしょう。整備工場以外での作業が可能になるなど、新しい提案にも期待したいと思います。
先進安全機能については、センサーなどのハードウェアは変わらなくとも、ソフトウェアによって機能のアップデートが可能なことは知られています。同サービスではOTA(Over The Air:無線アップデート)によってトヨタセーフティセンスを最新状態に保つことも考慮されているといいます。
リセールバリューを維持することはブランド力につながります。「KINTO Unlimited」のようなサービスを前提にクルマを設計する時代になると、売り切りで劣化していく一方のクルマが存在していることはトヨタというブランドにとってプラスとはいえません。
ビジネスモデルの転換には様々な軋轢が発生しますので、すぐさま売り切りを止めてしまうとは思えませんが、将来的にはトヨタはKINTOありきのビジネスモデルを考えているのかもしれません。
●エンジンオイルの状態を把握する技術に注目
「KINTO Unlimited」で採用された見守りサービスの中で、技術的に注目したいのは「コネクティッドカーケア」です。
通常エンジンオイルというのは定期的に交換することが推奨されていますが、走行距離や運転の仕方、外部環境などによりオイルの劣化状況は異なります。コネクティッドで車両とつながっていることで、運転データが入手できますから、その情報をもとにオイルの状態を把握する独自の技術を開発したといいます。
結果として、専用アプリやディスプレイオーディオなどを通じて、クルマごとの「使用状況」に合わせて、最適なエンジンオイルの交換時期を知らせることができるようになったといいます。
同様の情報提供は、コネクティッド機能を持つトヨタ車であれば対応可能になるでしょう。エンジンオイルの交換サイクルを最適化することは廃油を減らすという意味でも環境対応につながります。「KINTO Unlimited」限定ではなく、全トヨタ車に適応するサービスとして拡大することも期待したいと思います。