ホンダが2024年に発売するN-VANベースの電気自動車に期待できること【週刊クルマのミライ】

■100万円台で買える軽商用EV

N-VAN_EV
「N-VAN」ベースの軽商用EVプロトタイプ。グリルやナンバーの位置で識別できそうだ

ホンダが、軽バン「N-VAN(エヌバン)」をベースとした、新型軽商用EV(電気自動車)を2024年春に発売することを発表しました。

これまでも、電動化ビジョンなどの発表の場において、日本では軽商用EVを2024年に投入することについて何度も触れてきていますが、N-VANベースのコンバージョンタイプになることが初めて明言されたといえます。

現時点で、ホンダが日本向けに販売しているEVは、EV専用アーキテクチャーに基づくHonda eだけです。Honda eは、ハンドル切れ角を大きくするためにリヤ駆動を選んでいます。

軽商用EVのニーズを考えると、Honda eのアーキテクチャーをベースにナローボディ化したプラットフォームを使うという手も予想されていましたが、結論としてはN-VANと同様のフロント駆動を基本としたEVになると予想されます。

また、ホンダのアピールしているところによると、EVバージョンにおいても、N-VANの特徴である助手席側のBピラーレスボディは継続採用される模様です。

●2024年春予定、航続距離は200km

2021N-VAN
既存モデルのN-VANにはパーソナルユース仕様も用意される。EVでも同様の展開を期待したい

発売時期や価格帯などの具体的な数字も明らかとなっています。

発売時期は2024年春、価格は100万円台、1充電あたりの航続距離は200km、というのがホンダの目標です。

発売時期については、以前の発表よりも少々前倒しになった印象もありますが、驚くべきは100万円台という価格と、200kmという航続距離の両立をターゲットとしていることです。

航続距離を伸ばすにはバッテリー搭載量を増やすのが常套手段で、当然ながら価格は上昇してしまいます。実際、軽EVとして2022-2023日本カー・オブ・ザ・イヤーに選ばれた「日産サクラ/三菱eKクロスEV」の価格は200万円台で、一充電航続距離は180kmです(バッテリー総電力は20kWh)。

仮に、補助金を考慮せずにN-VANのEVバージョンが100万円台の価格を実現できるとすると、バッテリー搭載量を減らして200kmの航続距離を実現できるだけの電費性能を実現するか、もしくはバッテリーのコストを大幅にダウンするしかありません。

その両面において、大幅な革新を実現できる目途がついたことが、今回の発表につながったといえるのではないでしょうか。

●ホンダオートボディーでの生産が予想される

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2022年3月で生産終了となったS660。その理由として工場の改良が挙げられていたが……

ホンダは軽商用EVだけにとどまらず、N-BOXなどの乗用車においてもEV化を進めていくことを宣言しています。

おそらく、その生産拠点となるのは現状と同じ工場でしょう。つまり、N-VANを生産している四日市のホンダオートボディー(旧・八千代工業)が、ホンダの軽EVを生み出していくはずです。そして、ホンダオートボディーでの経験を活かして、鈴鹿製作所の軽自動車生産ラインが、EV対応のものへと進化していくという計画が予想されます。

ご存知の方も多いでしょうが、2022年3月に生産終了した軽スポーツカー「S660」は、ホンダオートボディーにてN-VANと混流生産されていました。S660生産終了の理由として、生産工場の都合といった内容が紹介されることもありました。2024年からの軽EV生産に向けての改良が、ホンダオートボディーにてまさにいま進んでいるのでしょう。

ホンダの軽スポーツである「ビート」と「S660」を生み出した四日市のファクトリーが、軽EVの生産拠点になるとして、歴史は繰り返すことを考えると、将来的に軽EVのスポーツモデルが登場するという流れになっている、といえるのかもしれません。

自動車コラムニスト・山本 晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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