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■プラグインハイブリッド仕様を廃止し、バッテリーEV仕様を新設
ボルボのエントリーSUVであるXC40は、デザインに惚れて購入する方が多いそうで、取り回しのしやすいボディサイズも日本向きです。
XC40は、2022年夏にマイナーチェンジを受け2023年モデルになり、バッテリーEV(BEV)の「XC40 Recharge」が追加されました。その代わり、プラグインハイブリッド仕様が廃止されています。
48Vマイルドハイブリッド仕様は引き続き設定されていて、2022年モデルの後期から48Vマイルドハイブリッドは、ミラーサイクルエンジンと7速DCT-EVOが新たに採用されています。
ミラーサイクルエンジンは、可変バルブタイミング機構によりインテークバルブのクロージングが制御されるのをはじめ、ピストンデザインの変更、新形状のインテークマニフォールドを採用。さらに、バリアブルノズルタービンを備えたターボ、新型オイルパンも搭載されています。
7速DCTは自社製で、湿式デュアルクラッチの電子制御7速ギヤボックスを備え、奇数ギヤと偶数ギヤの動力経路が独立した構造になっているほか、電子制御の機械式ギヤシフトアクチュエーターも採用されています。
なお、48Vマイルドハイブリッドは「ISGM(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター・モジュール)」と呼ばれるモーター付発電機とリチウムイオン電池からなります。
回生された電力は48Vリチウムイオンバッテリーに蓄電され、エンジンの始動や動力補助を担います。「ISGM」は、スターターモーターの代わりにエンジンの始動も担い、アイドリングストップ後の再始動時における音や振動の低減にも寄与しています。
●48Vマイルドハイブリッド仕様は163PS版の「B3」、197PS版の「B4」を設定
2023年モデルではグレード名が変わり「Plus」「Plus Pro」「Ultimate」というグレード展開になりました。インテリアでは、Google搭載インフォテイメントが全車に標準化されたほか、12.3インチのメーターパネルのデザインを刷新。
エクステリアはフェイスリフトを受け、フロントヘッドライトやフロントバンパー、アルミホイールデザインも一新されています。
「Ultimate」と「Plus Pro」に、ピクセルLEDヘッドライトをオプション設定。ボディカラーでは、新色の「セージグリーンメタリック」をはじめ、「フィヨルドブルーメタリック」「シルバードーンメタリック」「ブライトダスクメタリック」が用意されています。
まずは、XC40の48Vマイルドハイブリッドの走りからお届けします。
2.0L直列4気筒ターボエンジンを積む163PS/265Nm版の「B3」、同じ2.0Lエンジンを積み197PS/300Nm版の「B4」が設定されています。試乗したのは、高出力版の「XC40 ULTIMATE B4 AWD」。モーターは両仕様ともに10kW/40Nmというスペック。
マイルドハイブリッド仕様は、ミラーサイクルエンジンと7速DCTの搭載により燃費向上が図られているだけでなく、走りの面でもスムーズさを存分に享受できます。
DCTであることを感じさせない変速フィールが美点であるうえに、低速域ではモーターアシストも実感できるため、より滑らかな加速を披露。48Vマイルドハイブリッドは、エンジン主体の走りになるものの、スムーズなDCTの変速フィール、低速域を中心としたモーターによるアシスト、そしてターボの過給による力強いダッシュ力を実感できます。
さらに、バッテリーEVのシングルモーター仕様と比べても、250kgも軽いのも武器で(ツインモーター仕様と比べると400kgも軽い)、より素直なハンドリング、速度域を問わない軽快感につながっています。
この軽さと7速DCTによるダイレクト感があり、しかもスムーズな変速フィールが48マイルドハイブリッド仕様の大きな魅力。さらに、重厚感のあるバッテリーEVのツインモーター仕様(C40)と比べると全体的に重く、低速域では揺すぶられるような動きも見せた乗り心地も抑えられています。
ツインモーター仕様は20インチで、XC40の48Vマイルドハイブリッド仕様は、19インチ(235/50R19)タイヤを履くこともあり、バネ下がより軽く減衰性もより高くなっていました。
なお、筆者はプレス向け試乗会に引き続き、異なる個体の「XC40 ULTIMATE B4 AWD」も数日間乗っていて、こうした美点を再度確認できました。一方で、個体によりブレーキのタッチが異なり、かなり強く、深く踏まないと欲しい制動力が得られず、明確な個体差があったのが若干気になりました。
●マイルドハイブリッド仕様も含めてGoogle搭載のインフォテインメントに進化
2023年モデルでは、Google(Googleマップ、Googleアシスタント)の搭載もトピックス。Googleマップを使い慣れている人はもちろん、従来のボルボ車の音声操作は、特定のコマンドを覚える必要がありましたが、今は対話型で目的地やエアコンなどの設定ができる秀逸な音声操作を手に入れています。
使い勝手の面では、トノボードを床下に収納できる高い実用性をはじめ、助手席側にエコバッグなどが掛けられるフックが追加されるなど、日本車を研究したかのような細かな配慮がされています。
XC40は、プラグインハイブリッドが廃止されたのは惜しいですが、48Vマイルドハイブリッド仕様は、ガソリンエンジン車とモーターアシストの利点をもちろん兼ね備えているだけでなく、軽快なフットワークなど、運動性能の面だけでなく乗り心地やパッケージングの面でも電動化のネガを抱かせるようなことはありません。
●バッテリーEVのシングルモーター仕様の走り
一方、2023年モデルで新たに追加されたBEVの「XC40 Recharge」。C40のツインモーター仕様に対して、XC40はシングルモーター仕様が試乗車として用意されていました。
48Vマイルドハイブリッド仕様と比べると走り出しからBEVらしく明らかに静かで、トルク感を味わえる一方で、床下に重いバッテリーを積むヒョコヒョコとした動きも察知できます。
シングルモーター仕様は、69kWhのバッテリーを積み、170kW(231PS)/330Nmというモーター出力・トルク。404PS/660Nmに達するツインモーター仕様は、0-100km/h加速を4.7秒でクリアする一方で、シングルモーター仕様は、同7.4秒。
ただし、シングルモーター仕様は、ツインモーター仕様よりも150kg軽いこともあり、タウンスピードでは、出力とトルクの差ほどは動力性能の違いをほとんど感じさせません。
加速時や高速域になって初めて明確なキャラの違いが出てきます。さらに、シングルモーターは、加速フィールがより穏やかになっていますので、街乗りでは逆に乗りやすく感じるシーンもありました。
日本の交通事情であれば、シングルモーターでもパワー不足を抱かせることはあまりないはず。また、シングルモーター仕様は、ツインモーターの20インチに対して19インチを履くこともあり、乗り心地が若干ソフトで、路面からの振動も抑えられています。
さらに、ボルボらしい安定志向のハンドリングも美点です。
BEVは、補助金を受けると48Vマイルドハイブリッド仕様よりも安くなる逆転現象も起きています。
XC40のBEVでシングルモーターかツインモーターにするかで迷っている場合は、降雪地域ではAWDになるツインモーターの武器が輝く一方で、非降雪地域ではFWDのシングルモーター仕様でも十分にBEVらしさを手にすることができます。
●ボディサイズ
全長4440×全幅1875×全高1655mm
●XC40 48Vマイルドハイブリッド価格
「XC40 Plus B3」:459万円
「XC40 Plus Pro B3」:499万円
「XC40 Plus Pro B4 AWD」:529万円
「XC40 ULTIMATE B4 AWD」:569万円
●XC40 Recharge価格
「XC40 Recharge Plus Single Motor」:579万円
「XC40 Recharge Ultimate Twin Motor」:739万円
(文:塚田勝弘/ 写真:小林和久)