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■スズキ「ワゴンR」とホンダ「N-WGN」、人気のハイトワゴン軽自動車を比較してみる
現在、軽自動車はホンダ・N-BOXやダイハツ・タントをはじめとした軽最大級の室内空間を確保し、リアに利便性の高いスライドドアを採用したスーパハイトワゴンが人気となっています。
その軽自動車の中で、安定した人気を誇り定番となっているのがハイトワゴンです。ハイトワゴンは1993年に登場したスズキ・ワゴンRがパイオニアで、ボディサイズに制限のある軽自動車で、全高を高くしたトールボーイスタイルを採用。広い室内空間を確保し、軽自動車に革命を起こし、以降定番モデルとなっています。
その軽ハイトワゴンのパイオニアであるスズキ・ワゴンRが一部改良、そして新モデルを追加を実施。またホンダ・N-WGNがマイナーチェンジを行いましたので、試乗して実力をチェックしてみました。
●主力はスーパーハイトワゴンに移行しても根強い人気を誇るスズキ「ワゴンR」
現行型のスズキ・ワゴンRは2017年2月に登場。広くなった室内空間と、軽ハイトワゴンならではの使い勝手の良さをさらに向上させています。
現行型ワゴンRのデビュー当初のモデル構成は、機能性とデザイン性を両立させた機能美を表現し、幅広い世代のライフスタイルとさまざまな価値観に対応する個性的なFX、FZ、そしてスティングレーという3タイプを設定しています。
現行型ワゴンRは軽量化と高剛性を両立させた新プラットフォーム「ハーテクト」を採用。さらに、エンジンにモーターを組み合わせたマイルドハイブリッドを採用することで、当時軽ハイトワゴンNo.1の燃費性能を実現しました。
安全装備では、単眼カメラと赤外線レーザーレーダーで、前方の歩行者やクルマを検知して衝突の被害を軽減するシステム「デュアルセンサーブレーキサポート(DSBS)」をはじめ、周囲の状況に合わせて自動でハイビームとロービームを切り替えるハイビームアシスト機能を搭載しています。
さらに、運転席前方のダッシュボードに、車速やデュアルセンサーブレーキサポートの警告などを表示する「ヘッドアップディスプレイ」を軽自動車で初めて採用するなど、先進の安全装備が充実しているのが特徴です。
2022年8月に現行型ワゴンRは、一部変更とグレード体系の変更を行いました。グレード体系ではFZが廃止となり、カスタムZを新設定。これによりFX系のスタンダード、カスタムZ、スティングレーの3モデルとなりました。
一部変更のポイントは、夜間の歩行者も検知するデュアルカメラブレーキサポートを全車に標準装備としたのをはじめ、フロントシートSRSサイドエアバッグ、SRSカーテンエアバッグ、全車速追従機能付きのアダプティブクルーズコントロール(ACC)、および車線逸脱抑制機能を、一部のグレードを除いて標準装備するなど、安全機能を充実させています。
また、コネクテッドサービス「スズキコネクト」に対応したほか、オートエアコン、キーレスプッシュスタートシステム、運転席シートヒーターを全車に標準装備しました。また、USB電源ソケット「タイプA/タイプC」も一部のグレードを除いて標準装備し、全方位モニター付ディスプレイオーディオを一部のグレードを除いてメーカーオプションとして設定しています。
新グレードのワゴンRカスタムZは、外観に専用意匠のヘッドランプ、フロントグリル、フロントバンパーを採用し、押し出し感を強めたモデルです。また、インテリアにはブラックを基調とした内装を採用し、力強さと上質さを表現しています。また、アップグレードパッケージやターボ仕様の設定など、充実した装備が特徴です。
今回試乗したのは、ワゴンRカスタムZ ハイブリッドZX 2WDアップグレードパッケージ装着車で、車両本体価格は147万4000円です。オプションとして全方位モニター付ディスプレイオーディオ・スズキコネクト対応通信機(14万800円)、アップグレードパッケージ(6万6000円)が装着されています。
異形のヘッドライトやメッキのグリルを採用したワゴンRカスタムZのフロントマスクは、先代モデルに設定されていたワゴンRカスタムの潮流を感じるデザインです。スティングレーがかなり個性的な表情なので、このカスタムZのフロントマスクは幅広い人に支持されると思われます。
ハスラーやスペーシアといった最近のスズキの軽自動車は、全高の高いモデルでも、ロールやピッチングが抑えられていて、非常に好感を持っていました。
今回試乗したワゴンRカスタムZは、軽量・高剛性のハーテクトを採用していますが、カーブを曲がる際のロール量も大きく、やや無駄な動きが多い印象を受け、背の高いクルマ特有の重心の高さを感じました。アップデートするのであれば、この揺れの大きさも改善してもらいたかったというのが正直なところです。
●小型車に匹敵する質感の高い走りと高い利便性が魅力のホンダ「N-WGN」カスタム
一方、2代目となるホンダN-WGNは2019年8月に登場しました。ホンダの軽自動車Nシリーズの提案する“Nのある豊かな生活”という想いのもとに、安全性能と使い勝手を追求。ユーザー1人1人の毎日の暮らしに馴染み、誰もが心地よく使え、親しみやさを感じるクルマを追求しています。
N-WGNは、燃料タンクを前席下に収めるホンダ独自のセンタータンクレイアウトを採用。広くて多彩なアレンジ可能な室内空間と、使い勝手の良い荷室を確保しています。その荷室ですが、開口部を先代モデルよりさらに低くしたことで、重い荷物や高さのある荷物も積みやすくなっているのが特徴です。
さらに、備え付けのボードを使用すれば、荷室を上下2段に棲み分けることもでき、シーンに合わせたアレンジが可能となっています。
運転席には軽自動車としては珍しい、テレスコピック&チルトステアリング機構を採用。様々な体格のドライバーが、最適なドライビングポジションを確保できるように工夫されています。
安全面では、8つの機能をパッケージ化した先進の安全運転支援システム「ホンダセンシング」を標準装備(一部グレードを除く)。その機能の一つである衝突軽減ブレーキ(CMBS)は、軽乗用車として初めて横断中の自転車に対応。また、街灯のない歩行者検知も可能となるなど性能を向上させています。
N-WGNは2022年9月にマイナーチェンジを実施。内外装の変更に加えて、ホンダセンシングの新機能となる「急アクセル抑制機能」をホンダ車として初めて採用しました。
急アクセル抑制機能は専用のキーで解錠しエンジンをスタートさせると、万が一、アクセルペダルやブレーキペダルの踏み間違いなどによる急加速を抑制し、警告音とディスプレー表示でドライバーに注意喚起を行います。
さらに、障害物がない状況においても加速制御が可能となっており、ペダルの踏み間違いによる事故を抑制することができます。
試乗したのは、車両本体価格174万9000円のN-WGNカスタムL・ターボ。オプションの急アクセル抑制機能やドライブレコーダーなどを装着し、総額は178万2000円となっています。
N-WGNカスタムの外観は、フロントグリルにメッキパーツを追加し、さらにスポーティ感を強調しています。15インチという軽自動車としては大径タイヤを装着していますが、路面からの衝撃は非常に抑えられており、快適に走行できます。
こちらは最高出力64psを発生するパワフルなターボエンジンを搭載していますが、車内への音の侵入も良く抑えられていました。
何より特筆すべきは、走行安定性の高さです。全高1,705mmという背の高いN-WGNですが、重心の高さを感じさせるような、クルマの無駄な揺れが非常に抑えられています。
これはドライバーだけでなく、乗員すべてに安心感を与えてくれるでしょう。また開口部が広く、備え付けのボードで上下を分けることができるラゲッジルームの使い勝手は抜群です。
そして、使用するキーによって効果を発揮する急アクセル抑制機能は、1台のクルマを家族で使用する時の効果は絶大です。これにより、ペダルの踏み間違いによる事故は減少できると実感できました。
今回の試乗車はワゴンRカスタムZが自然吸気車、N-WGNはターボ車でした。ワゴンRカスタムZは車両本体価格は163万3500円のターボエンジンを搭載したZTを設定していますが、それでもN-WGNは11万5500円高となっています。
しかし、ワゴンRカスタムZとN-WGNカスタムL・ターボの走行性能や利便性を考えたら、実力はこの価格差以上に感じました。
(文・写真:萩原 文博)