ホンダが「FCXクラリティ」をロサンゼルスオートショーで発表【今日は何の日?11月15日】

■同時に米国と日本でリース販売することも公表

2007(平成19)年11月15日、ホンダが米国ロサンゼルスモーターショーで新型燃料電池車「FCXクラリティ」を発表しました。

同時に、米国では翌年2008年夏から、日本では秋よりリース販売を開始することを公表しました。FCXクラリティは、ホンダとしては2002年の「FCX」に続くリース販売です。

2007年のロサンゼルスオートショーで発表されたFCXクラリティ
2007年のロサンゼルスオートショーで発表されたFCXクラリティ

●米国政府の認定を受けて米国でのリースを始めたFCX

ホンダは、1990年代から燃料電池車の開発を積極的に始め、1999年にはFCXのベースとなる燃料電池車「FCX-V1」と「FCX-V2」を発表しました。

その後、燃料電池スタックの高出力化や蓄電システムに自社開発のウルトラキャパシタを採用するなどの改良を加え、米国と日本の公道試験を実施。実用化に向けた実証試験によって、走行データから課題などを洗い出して開発を進めてきました。

2002年米国「EPS」と「CARB」の認定を取得した燃料電池車FCX
2002年米国「EPS」と「CARB」の認定を取得した燃料電池車FCX

そして、2002年ホンダの燃料電池車FCXが、初めて米国環境保護庁(EPA)とカリフォルニア州大気資源局(CARB)の認定を取得。これにより、米国での販売が認許され、2002年の年末にFCXはカリフォルニア州のロサンジェルス市庁と日本の中央官庁に納車されました。

その後、日米ともリース販売先を拡大し、2005年にはカリフォルニア州で個人向けのリース販売も開始されました。

●進化したFCXクラリティが米国と日本でリース販売

FCXクラリティのFC構成。モーター、燃料電池スタック、水素高圧タンクで構成
FCXクラリティのFC構成。モーター、燃料電池スタック、水素高圧タンクで構成

FCXを進化させたFCXクラリティは、次世代自動車にふさわしいスマートなフォルムを採用。新システムのポイントは、水素や空気を盾に流す小型・高効率“V Flow FCスタック”と水素と空気の流路を波型形状にした“Wave流路セパレーター”です。

モーターの最高出力は、FCXの78KWから100kWに向上し、パワープラント全体の重量出力密度2倍、容積出力密度2.2倍によって、大幅な軽量コンパクト化と高出力化を達成。さらに、当時課題であった低温始動性についても、マイナス30度まで改善されました。

FCXクラリティのリアビュー。トランク部に高圧水素タンクを搭載
FCXクラリティのリアビュー。トランク部に高圧水素タンクを搭載

これらのシステム効率の向上と車両の軽量化、優れた空力性能によって、燃費は従来FCX比で20%向上。これは、通常のガソリン車の2~3倍に相当します。また、水素タンク(圧力35MPa)は、156.6Lから171Lに拡大して、効率向上と相まって航続距離は30%向上しました。

FCXクラリティは、2008年7月、日本は11月からリース販売が始まりました。

●新型クラリティFCの生産は2021年に終了

2016年には、さらにFCXクラリティを進化させた「クラリティFC(フューエルセル)」のリース販売を開始。2014年から、トヨタのFCV「ミライ(MIRAI)」が市販化(個人向け販売)しているのに対して、クラリティFCは官公庁や企業へのリース販売でした。

2016年リース販売を始めたクラリティFC(フューエルセル)
2016年リース販売を始めたクラリティFC(フューエルセル)

この時点では、クラリティFCの販売価格は766万円(ミライ:723.6万円)、FCスタック最高出力103kW (:114kW)、タンク容量141L (:122.4L)、航続距離750km (:650km)です。クラリティFCは、ミライに対して価格は高いものの、航続距離で勝っています。

クラリティFCは、個人向けのリース販売も始めましたが、2021年8月に生産を終了。しかし、大幅なコスト低減に取り組み、2023年頃再登場するという情報があります。

一方のトヨタ「ミライ」は、2020年12月にモデルチェンジして継続的にブラッシュアップしています。


究極のエコカーと呼ばれても、コストが下がる目途付けがないと、開発リソースを投入するのは困難です。何よりも、政府主導の水素インフラの展開がない限りFCVの未来はないのではと思いますが、まだのようです。積極的な動きに期待したいですね。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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