第8戦もてぎGT300決勝、圧勝のARTA NSX GT3とチャンプを引き寄せたリアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R【SUPER GT 2022】

■序盤で魅せたNSX GT3の果てしないバトル

11月5日(土)、6日(日)に栃木県のモビリティリゾートもてぎで開催された、2022 AUTOBACS SUPER GT 第8戦(最終戦)「MOTEGI GT 300km RACE GRAND FINAL」。6日(日)には決勝レースが行われました。

グリッドでメンテナンスをするSUBARU BRZ R&D SPORT
グリッドでメンテナンスをするSUBARU BRZ R&D SPORT

11月ともなると日没も早まることから、300kmの決勝レースは13時からスタート。そのスタートは、栃木県警の白バイやパトカーによるパレードラップから始まり、フォーメーションラップを経て行われます。

そのスタートを抜群な精度で決めてきたのが、18号車 UPGARAGE NSX GT3の小林崇志選手。第3コーナーの進入では、ポールポジションの55号車 ARTA NSX GT3からトップを奪います。

チャンピオン争いでは、ランキングトップの56号車 リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rが6番手、ランキング2位の10号車 TANAX GAINER GT-Rが7番手でオープニングラップを終えます。

スタート直後の3コーナー
スタート直後の3コーナー

序盤はUPGARAGE NSX GT3とARTA NSX GT3の激しいバトルが続きます。それこそ、お互い一歩も引かないハイスピードな超接近戦。手に汗握る展開と言っても過言ではありません。

序盤は2台のNSX GT3がトップ争い
序盤は2台のNSX GT3がトップ争い

8周目にはGT500のマシンがGT300のマシンを追い抜いていきますが、この周の第3コーナー立ち上がりで、30号車 apr GR86 GTとGT500マシンが接触。GT500マシンはコースサイドに止まってしまいます。また、apr GR86 GTのボディカウルの破片が大量にコース上に散乱してしまったこともあって、当初はフルコースイエロー(FCY)だったところが、セイフティーカー(SC)の導入となってしまいます。

●SC中の大クラッシュで混乱の中盤

そんなSCの最中、13周目のメインストレートではありえない事態が発生します。

31号車 apr GR SPORT PRIUS GTが、前を走る5号車 マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号に猛スピードで追突! マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号はコクピットから後ろ半分、モノコック以外が無くなってしまうほどの損傷を追ってしまいます。

これによりメインストレートが通過できなくなってしまったために、SCランはピットロードを通過するという異例の事態となってしまいました。

序盤トップだったUPGARAGE NSX GT3
序盤トップだったUPGARAGE NSX GT3

アクシデント2連発という想定外の序盤、中盤からSC解除のタイミングでミニマムのピットタイミングとなってきます。トップを走っていたUPGARAGE NSX GT3もこのタイミングでピットインをしますが、リスタートに時間がかかってしまいポジションを落としてしまいます。

10号車 TANAX GAINER GT-Rのピット
10号車 TANAX GAINER GT-Rのピット

また、早めにピットを済ませた52号車 埼玉トヨペットGB GR Supra GTは、予選9位から後半には2番手に浮上。

そして、ピットタイミングをかなり遅らせていた2番手のARTA NSX GT3は、順当にピット作業をこなし、GT300クラスの各車が所定のタイヤ交換を伴うドライバー交代を終えるとトップに立っていました。

その背後の3番手には、65号車 LEON PYRAMID AMG、4番手には10号車 TANAX GAINER GT-Rと続きます。

●驚きの結末! ポイント圏外からのチャンプ確定!

後半、ペースが上がってきた10号車 TANAX GAINER GT-Rと、5番手となっていた56号車 リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rが、LEON PYRAMID AMGを追い抜き3番手、4番手となっていきます。

10号車 TANAX GAINER GT-R
10号車 TANAX GAINER GT-R

ところが、4番手となったリアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rは、42周目の4コーナーで右フロントタイヤが外れるというアクシデント。3輪となりながらスロー走行でピットに戻り、タイヤを交換の上でレースに復帰します。このアクシデントで21番手まで順位を落としてしまい、チャンピオンが遠のいたと誰もが思った瞬間でした。

一時はチャンピオンも見えた埼玉トヨペットGB GR Supra GT
一時はチャンピオンも見えた埼玉トヨペットGB GR Supra GT

3番手につける10号車 TANAX GAINER GT-Rは、このままの順位で走り切れば大草りき選手がチャンピオンという状況です。しかし、その10号車 TANAX GAINER GT-Rのペースが落ちはじめ、87号車 Bamboo Airways ランボルギーニ GT3とUPGARAGE NSX GT3に抜かれて5番手に落ちます。

10号車 TANAX GAINER GT-Rは終盤に順位を落としていった
10号車 TANAX GAINER GT-Rは終盤に順位を落としていった

これで、チャンピオンの可能性は2番手の埼玉トヨペットGB GR Supra GTが大きくなりますが、その背後にBamboo Airways ランボルギーニ GT3が急接近し、その勢いで埼玉トヨペットGB GR Supra GTをパス! これで埼玉トヨペットGB GR Supra GTはチャンピオンの権利を失います。

埼玉トヨペットGB GR Supra GT
埼玉トヨペットGB GR Supra GT

これでまた、10号車 TANAX GAINER GT-Rにチャンピオンの権利が戻ってきますが、その背後には88号車 weibo Primez Lamborghini GT3が迫ります。

10号車 TANAX GAINER GT-Rの冨田選手は、真横に貼りつかれても粘りを見せますが、weibo Primez Lamborghini GT3は抜き去っていき、さらに10号車 TANAX GAINER GT-RはUPGARAGE NSX GT3にも追い抜かれされ、チャンピオンの権利を失います。

優勝したARTA NSX GT3
優勝したARTA NSX GT3

そしてついに、トップの55号車 ARTA NSX GT3が危なげなく後半を制してポールtoウインで優勝! ルーキーの木村偉織選手はSUPER GT初勝利。そして、2013年にMUGEN CR-Z GTでGT300チャンピオンとなっていた武藤英紀選手も、実はMUGEN CR-Z GTの時には優勝が無く、GT300ではこのもてぎ戦が初勝利となります。

2位は Bamboo Airways ランボルギーニ GT3、3位は埼玉トヨペットGB GR Supra GTが入りました。

チャンピオンが決まった瞬間のリアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R
チャンピオンが決まった瞬間のリアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R

そして、シリーズチャンピオンは、なんと19位のリアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R。完全なる他力本願ではありますが、女神はリアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rに微笑みました。

チャンピオンを喜ぶリアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rのドライバー
チャンピオンを喜ぶリアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rのドライバー
チャンピオンとなったドライバーをたたえる近藤真彦監督
チャンピオンとなったドライバーをたたえる近藤真彦監督

今シーズンのSUPER GTは、コロナ禍とはいえ全戦をスケジュール通りに開催することができ、また、最終戦のもてぎではパドックパスも発売されるなど、コロナ前の状況に少しずつ戻ってきつつあります。

また、来シーズンからはマシンに使用される燃料がハイオクガソリンからカーボンニュートラル燃料となり、脱炭素へ向けた動きもSUPER GTの中へと入っていきます。

来シーズンも大きく進化するであろうSUPER GTは、2023年4月16(土)、17日(日)に開催の岡山戦から始まります。

GT300クラス表彰式
GT300クラス表彰式
シリーズチャンピオン表彰
シリーズチャンピオン表彰
グランドフィナーレの様子
グランドフィナーレの様子


【SUPER GT2022 第8戦 もてぎ GT300 決勝結果】

順位 ゼッケン 周回数 車名 ドライバー
優勝 55 60周 ARTA NSX GT3 武藤英紀 木村偉織
2位 87 60周 Bamboo Airways ランボルギーニ GT3 松浦孝亮 坂口夏月
3位 52 60周 埼玉トヨペットGB GR Supra GT 吉田広樹 川合孝汰
4位 18 60周 UPGARAGE NSX GT3 小林崇志 太田格之進
5位 88 60周 Weibo Primez ランボルギーニ GT3 小暮卓史 元嶋佑弥
6位 96 60周 K-tunes RC F GT3 新田守男 高木真一
7位 4 60周 グッドスマイル 初音ミク AMG 谷口信輝 片岡龍也
8位 10 60周 TANAX GAINER GT-R 富田竜一郎 大草りき
9位 7 60周 Studie BMW M4 荒 聖治 アウグスト・ファルフス
10位 360 60周 RUNUP RIVAUX GT-R 青木孝行 柴田優作
11位 60 60周 Syntium LMcorsa GR Supra GT 吉本大樹 河野駿佑
12位 2 60周 muta Racing GR86 GT 加藤寛規 堤 優威
13位 6 60周 Team LeMans Audi R8 LMS 片山義章 R.メルヒ・ムンタン
14位 11 60周 GAINER TANAX GT-R 安田裕信 石川京侍
15位 9 60周 PACIFIC hololive NAC Ferrari ケイ・コッツォリーノ 横溝直輝
16位 50 60周 Arnage MC86 山下亮生 阪口良平
17位 244 60周 HACHI-ICHI GR Supra GT 佐藤公哉 三宅淳詞
18位 65 60周 LEON PYRAMID AMG 蒲生尚弥 篠原拓朗
19位 56 60周 リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R 藤波清斗 J.P.デ・オリベイラ
20位 61 59周 SUBARU BRZ R&D SPORT 井口卓人 山内英輝
21位 20 59周 シェイドレーシング GR86 GT 平中克幸 清水英志郎
22位 22 59周 アールキューズ AMG GT3 和田 久 城内政樹
23位 48 59周 植毛ケーズフロンティア GT-R 井田太陽 田中優暉
24位 5 13周 マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号 冨林勇佑 平木玲次
25位 31 13周 apr GR SPORT PRIUS GT 嵯峨宏紀 中山友貴
26位 30  7周 apr GR86 GT 永井宏明 織戸 学
27位 25  7周 HOPPY Schatz GR Supra 松井孝允 野中誠太

(写真:吉見 幸夫/文:松永 和浩

この記事の著者

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松永 和浩

1966年丙午生まれ。東京都出身。大学では教育学部なのに電機関連会社で電気工事の現場監督や電気自動車用充電インフラの開発などを担当する会社員から紆余曲折を経て、自動車メディアでライターやフォトグラファーとして活動することになって現在に至ります。
3年に2台のペースで中古車を買い替える中古車マニア。中古車をいかに安く手に入れ、手間をかけずに長く乗るかということばかり考えています。
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