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■ヤマハのクワルタラロは惜しくも年間ランキング2位
2輪レース最高峰「MotoGP」の最終戦、第20戦バレンシアGPが2022年11月6日にスペインのバレンシアで開催され、スズキ・ワークスチームのアレックス・リンス選手が優勝しました。
スズキは、2022年7月に、2022年シーズン限りでMotoGPを撤退することを発表し、1974年から数々の歴史を残してきた世界最高峰の2輪レース参戦に終止符を打ちますが、リンス選手の最終戦優勝により有終の美を飾ったことになります。
一方、2021年シーズンの王者、ヤマハ・ワークスのファビオ・クワルタラロ選手は惜しくも年間ランキング2位という結果に。
2022年シーズンは、ドゥカティはじめ、欧州メーカーの活躍が目立ちましたが、スズキが抜けた2023年シーズン、ホンダとヤマハだけとなった日本車勢が、いかに巻き返すのかが気になるところです。
●2輪レース最高峰クラスで計97勝を飾ったスズキ
スズキのラストレース・最終戦の決勝で、リンス選手は予選順位5番手から好スタートを切り、先頭で第1コーナーを通過すると、以後、終始安定した走りで快走。一度も首位を譲ることなくチェッカーフラッグを受けてゴールし、スズキのMotoGP最後のレースを優勝で飾りました。
なお、スズキの2輪最高峰レース参戦は、1974年よりMotoGPの前身であるWGPのGP500クラスへ挑戦。通算成績89勝、6度のライダー年間チャンピオンを獲得しました。
1983年末にWGP、2011年末にはMotoGPの活動を休止したスズキですが、2015年に現在の1000ccマシンで競うMotoGPへチームスズキエクスターで復帰し、ワークスマシン「GSX-RR」を投入。
MotoGPでは全8勝、ライダー年間チャンピオンでは、2020年にジョアン・ミル選手が、スズキにとって20年ぶりの最高峰クラス栄冠をもたらしました。
2輪最高峰クラスで計97勝を飾り、数々の歴史を残してきたスズキだけに、2022年限りの撤退はとても惜しまれます。
●スズキ撤退の理由は?
ちなみに、スズキは、MotoGPだけでなく、世界耐久選手権「EWC」へのワークス参戦も同時に終了。撤退の理由については、
「サステナビリティの実現に向け、経営資源の再配分に取り組まねばならない中で、この度のMotoGPとEWCの参戦終了という決断をいたしました。2輪レース活動は常に技術革新・人材育成の場としてチャレンジをしてきた場所であります。
この度の決断は、レース活動を通じて培ってきた技術力・人材を、サステナブルな社会の実現へ振り向け、新たな2輪事業の創生に挑戦していくことを意味しております」
といったコメントを出しています。
つまり、レースに投入してきた人材や技術、資金などを、サステナブル(持続可能)な社会実現に貢献する新しい2輪事業へ向けるといった感じですね。
また、スズキは、今回のMotoGP最終戦での優勝に関し、
「長年に渡り、当社の2輪レース活動に対し、熱いご声援を頂きました多くのスズキファンの皆様、また、多方面からご支援頂きました関係者の皆様に深く感謝申し上げます」
とコメントを発表。ファンなどに感謝の意を表明しています。
なお、今回優勝したリンス選手は、2023年シーズンにホンダのサテライトチーム「LCRホンダ」へ移籍。日本人唯一のMotoGPライダー中上貴晶選手のチームメイトになります。
また、2020年にスズキ・ワークスで年間チャンピオンを獲得したミル選手は、2023年シーズンにホンダのワークスチームへ移籍し、6度の年間チャンピオンに輝いたマルク・マルケス選手のチームメイトとなります。
●どうなる? 2023年シーズンの日本メーカー
2022年のMotoGPは、イタリアのバイクメーカー、ドゥカティが主要なタイトルを独占し、まさにシーズンを席巻したといえます。
まず、ライダーの年間チャンピオンでは、ドゥカティ・ワークスチーム「ドゥカティ・レノボ・チーム」のフランチェスコ・バニャイア選手が年間チャンピオンを獲得。
ちなみに、ドゥカティが年間チャンピオンに輝いたのは、2007年のケーシー・ストーナー選手以来15年ぶり。しかも、バニャイア選手はイタリア人ですが、イタリアメーカーに乗るイタリア人がチャンピオンになったのは、約50年ぶりなのだそうです。
一方、日本メーカーのバイクに乗るライダーでは、「モンスターエナジー・ヤマハMotoGP」に所属し、2021年チャンピオンのクワルタラロ選手が、惜しくも年間ランキング2位に。
クワルタラロ選手は、2022年シーズン、第17戦タイGPまでランキングトップでしたが、第18戦オーストラリアGPでバニャイア選手に逆転され、そのまま2位でシーズンを終えています。
そのほかの日本車勢では、スズキのリンス選手が7位、ホンダ勢ではマルク・マルケス選手の13位が最も上位となっています。
なお、3位以下から6位までも、ドゥカティのエネア・バスティアニーニ選手や、同じイタリアのメーカー、アプリリアを駆るアレイシ・エスパロガロ選手ら欧州メーカー勢が上位を占め、日本メーカーでは、クワルタラロ選手だけが孤軍奮闘したような感じで終わっています。
また、コンストラクターズ・ランキングでも、前述の1位ドゥカティ以外では、2位はヤマハでしたが、3位アプリリア、4位KTMと欧州メーカーが活躍を見せ、スズキは5位、ホンダは6位という結果に。
なお、ドゥカティは、ほかに、チームタイトルも獲得しており、2022年シーズンで3冠を達成しています。
今まで圧倒的な強さをみせてきた日本製バイクに乗るライダーたちが、ヤマハのクアルタラロ選手を除けば、あまり活躍できなかったのが2022年シーズン。
スズキの撤退により、ヤマハとホンダだけとなった日本車勢が、2023年シーズンにどう巻き返すのかが、とても気になるところです。
(文:平塚 直樹)