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■安心して速く走れるからこそ仕事の現場で役立つポルシェ
スポーツカーのアイコン、ポルシェといえば、やはりモータースポーツや趣味の世界の乗り物というイメージが強いですよね。でも、その優れたパフォーマンスを武器に、「はたらくクルマ」として活躍しているポルシェもたくさんあるんです。様々な現場を支えるポルシェの中から、とくにユニークなものをご紹介します。
●速度違反の取り締まりはお手の物?!
実は、356や911はパトカーとして長く警察組織をサポートしてきました。オーストリアでは1960年〜70年代に多くのポルシェ製警察車両が登場。その伝統は現在にも繋がっていて、2017年には991型911が無償貸与されています。
また、オランダでは、国道の安全を守る警察隊の車両として、356から901、964といった代表車種はもとより、914、924も含めた様々なポルシェが活躍。合計507台という世界最多のポルシェ製パトカーが治安を見守り続けてきたのです。
●救命の現場で活躍するカイエン
「はたらくポルシェ」の代表格は、なんといってもカイエン。その高い機動性と実用性を、「万が一」を救う現場でいかんなく発揮しています。
たとえばスペイン・マドリードには、ECMO(エクモ=体外式膜型人工肺)を搭載した救急車が存在します。急を要する現場に駆けつけるためにカイエンの走りがモノを言うのはもちろん、プラグインハイブリッド仕様のため、都心部では電気だけで走行できるのも強みになっています。
●激しいカーチェイスの撮影も難なくこなすカメラカー
カイエンは、映画製作の世界でも実力を買われています。とりわけ、大迫力のカーチェイスやスタントシーンの撮影には、「走れるカメラカー」が必須。それなりの車高も必要になります。そこでウクライナ出身のエンジニアが着目したのがカイエンでした。
カメラカー仕様のカイエンは、4〜7mに伸縮するアームの先にリモコンで360度回転できるアタッチメントを装着し、カメラを搭載。電子制御で振動を補正しながら、時速150kmで走行しつつ全方位を撮影できるシステムを構築しています。なお、車体は映り込みを避けるべく、ツヤ消しブラックとなっています。
●ポルシェの名前を冠するトラクターも
スピードとは無縁ですが、ポルシェはかつて農業用トラクターも製造していました。
ポルシェ・ディーゼルの名で生産されたトラクターには空冷のディーゼルエンジンを搭載。トレッドの狭いぶどう園用、ブラジルでの使用を想定したガソリン仕様のコーヒー農園用といった特注モデルも含めて、1963年に生産を終了するまで、およそ12万台のポルシェ製トラクターが出荷されました。
●A380を牽引してギネス記録を獲得
最後に番外編をひとつ。なんと、カイエンはギネス記録まで獲得しているんです。
記録挑戦が行われたのは、2017年の仏シャルル・ド・ゴール空港。エール・フランスの協力により、10機あるエアバスA380のうちの1機と格納庫を借り受けたポルシェは、カイエンを使って「市販車による最重量航空機の牽引」記録に挑んだのです。
世界最大級の旅客機、A380の全長は73m。格納庫そのものも特注するほどの巨体を誇ります。6万平方メートルのスペースには、3000台以上のカイエンを収納できるとか。
その大きな機体に、特注の牽引アタッチメントを介して繋がれた挑戦車・カイエンはディーゼル仕様。その豊かなトルクと高いスタビリティを活かし、従来の記録に115トンの差をつけて、無事にA380を42m牽引してギネス記録に登録されました。
(三代やよい)