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■ワゴンRスマイルのカスタマイズ機能全容と実用燃費を大公開
リアル試乗・ワゴンRスマイルの最終回。
詳細に語るのは本リアル試乗くらいのもので、他ではあまり取り上げられない車両カスタマイズ機能と販売動向、そして実用燃費の算出をしてみます。
これまでこの「リアル試乗」は、いまのところトヨタ車とホンダ車を採り上げているのにとどまりますが、いずれもユーザーの「ここがこうだったらいいのに」という希望を叶えてくれる車両カスタマイズの項目はトヨタが膨大で、ホンダがごく標準的な数でした。
さて、ワゴンRスマイルはどうでしょうか。
●そのカスタマイズ項目数、13項目41点
ワゴンRスマイルの取扱説明書では、他社でいう車両カスタマイズは「セッティングモード」と呼ばれています。今回の試乗車はワゴンRスマイルのハイブリッドXで、メーター内にはカラーの高精細ディスプレイが搭載されているのと、そもそも最上級機種で電子デバイスが満載のクルマだけに、設定できる項目数もかなりの数に上っています。表示がセグメント式になる安い機種もセッティングモードは搭載されていますが、安い機種であるぶん、項目数はそれなりです。
ワゴンRスマイル、ハイブリッドXのカスタマイズ項目は次のとおりです(文章だけでわからないものは、※マークにて説明を入れておきました。)。
青太字は工場出荷時の初期設定です。
1.燃費リセット方法選択:給油連動、TRIP-A連動、非連動
2.時計設定(全方位ナビ非装備車)
・時刻設定
・12h/24h表示:12h表示、24h表示
・日付調整
3.ドアロック設定
・車外ブザー設定:ON、OFF
4.ライト設定
・オートハイビーム設定:ON、OFF
5.盗難防止機能設定
・モード選択:Dモード、Aモード
※セキュリティアラームのモードを選びます。セキリュティアラームは、リモコンで施錠した約20秒後にセットされますが、その状態にてリモコン、リクエストスイッチ、ワンアクションスイッチ操作以外の方法で解錠され、いずれかのドアを開けると警報が作動します。その「警報あり」がDモードで、「警報なし」がAモードです。
6.IS空調設定:標準、燃費優先、快適優先
※アイドリングストップ(IS)の最中の空調設定を選びます。「標準」に対し、「燃費優先」は空調の効きよりもエンジン停止を優先気味にし、停止時間も長くなる…要するに、燃料をよりケチケチする方向に傾きます。いっぽうの「快適優先」は、乱暴にいえば、環境保護に対して「総論賛成、各論反対」のモードで、いうなれば筆者のような暑がりが燃料消費などなんのその、とにかく涼しさ(たぶん暖かいほうも)を優先させるもの。作動は「燃費優先」の逆で、エンジン停止頻度が下がり、停止時間も短くなります。
7.先行車発進設定:ON、OFF
8.標識認識設定:ON、OFF
9.ディスプレイ表示
・時計表示:カレンダーON、カレンダーOFF
・カレンダー表示:DD.MM.YYYY、YYYY.MM.DD、MM.DD.YYYY
・燃費履歴表示:時間表示、運転サイクル表示
・Motion履歴表示:表示ON、表示OFF
・時間/節約燃料表示:表示ON、表示OFF
・IS警告表示:表示ON、表示OFF
・エコスコア表示:表示ON、表示OFF
・パーキングセンサー表示:表示ON、表示OFF
・交差点案内表示:表示ON、表示OFF
・表示優先設定:交差点案内優先、標識認識優先
10.基本画面設定
・燃費表示:表示ON、表示OFF
・燃費履歴表示:表示ON、表示OFF
・平均車速/走行時間表示:表示ON、表示OFF
・積算時間/節約燃料表示:表示ON、表示OFF
・時計表示:表示ON、表示OFF
・Motion表示:表示ON、表示OFF
・アクセル/ブレーキ表示:表示ON、表示OFF
・エネルギーフロー表示:表示ON、表示OFF
・車速/タコメーター表示:表示ON、表示OFF
11.アニメーション設定
・オープニング表示:切り替え、固定A、固定B
・警告表示:表示ON、表示OFF
12.HUD表示
・車速表示:表示ON、表示OFF
・シフト表示:表示ON、表示OFF
・時計表示:表示ON、表示OFF
・標識認識表示:表示ON、表示OFF
・交差点案内表示:表示ON、表示OFF
・クルーズシステム表示:表示ON、表示OFF
・空調表示:表示ON、表示OFF
・高温警告表示:表示ON、表示OFF
・オープニング設定:切り替え、固定A、固定B
13.エコ照明設定:3色変化、青色固定
※速度計上部のエコ照明(ステータスインフォメーションランプ)を、青、緑、白の3色か、青色固定にするかを選ぶことができます。燃費効率のよいときは青から緑に変化し、減速エネルギー回生機能が働いているときには白色に光ります。
14.工場出荷状態:No、Yes → 工場出荷状態に戻すかどうかを決めるモードです。
ON、OFFを選択最後の「14.工場出荷状態」を除くと、ユーザーが任意セッティングできる数たるや、13項目、全41点! 過去採り上げたトヨタ車2台(カローラクロス20項目76点、ヴォクシー35項目107点)には遠くおよびませんが、それでもなかなかの点数を誇っています。
「3.ドアロック設定」は、名称からすると、前回採り上げたN-BOXのように、ドアロックの自動ロック・アンロックを選ぶ項目のように見えますがそうではなく、リモコンやリクエストスイッチによる施錠・解錠時のアンサーバックブザーのON、OFFを選ぶものです。車速検知で自動ロックするかどうかを選べるようであればよかったのに。
車速を検知して自動ロックをする装置の有無に賛否両論あるようですが、筆者は賛成派です。ただ、否定派の意見もわからないではないので、ユーザー任意でON、OFFが選べるようになればいいと思っています(ひと待ちのときなど、アンロック状態で暴漢がいきなりドアを開けて襲ってくるという事件がないとはいい切れないため。)。
注文がふたつ。
ひとつは「ハイビームアシスト設定」についてで、このハイビームアシスト機能のON、OFFはこの「セッティングモード」から追い出し、ハンドル右周辺かライトスイッチの先端にスイッチを設け、ここでON、OFFを決めるほうがいいということです。このクルマのハイビームアシストはロー/ハイの2段切り替え式ですが、その働きが意にそぐわず、機能をOFFにしたければ、クルマを停めなければなりません。セッティングモードに入れるのは停車中に限られるからです。これが高速道路なら、ハイビームアシストON・OFFだけのためにサービスエリアに入らなければならない…物理スイッチなら指先ひとつでその機能を走りながらでも切ることができます。
ふたつめ。セッティングに於ける操作性です。
「選択」も「決定」も、インパネないしハンドル上の「INFO」スイッチ押しだけで行うのが、まことにもってよろしくない。
「選択」はINFO短押し、「決定」は長押しという具合で、「選択}はチョン押しを繰り返す一方通行だけに、たとえば「8.標識認識設定」をするのにうっかり行きすぎたら、そのまま続けて最初に戻り、また8回押さなければならないし、入りこんでからも同様にチョン押し、長押しの繰り返し…その長押しも、電気製品だってクルマだってせいぜい「1秒以上」が一般的なのに、「やけに長ぇな」と思って腕時計で測ってみたら、表示が変わるまで何と3秒! ヘッドアップディスプレイの位置や明るさ調整だって、クルーズコントロールの車速設定だって上下ボタンでさせているのに、何でこちらは「INFO」ひとつでやらせるの? 当のスズキの社員の中にだって、「使いづらいなあ」と思っているひとがいるはずで、こちらも大急ぎで上下で選択、押して決定の上下シーソーボタンと、独立した「戻る」ボタンを設けてほしいと思います。でないと、めんどくささが先だってせっかくのカスタマイズ機能も使われずじまい、宝の持ち腐れになっちゃうヨ。
今回は自前でできるカスタマイズ「セッティングモード」をメインに解説しましたが、以下のカスタマイズ機能もあり、これらはスズキ販社でのみ変更可能です。
1.キーレスプッシュスタートシステム
・キーレスプッシュスタートシステムの各発信機の機能:あり、なし
・リモコン電池消耗警告の、約15秒間の表示(マルチインフォメーションディスプレイ・モノクロ装着車):あり、なし
・リモコン電池消耗警告の、約15秒間の表示(マルチインフォメーションディスプレイ・カラー装着車):あり、なし
・リモコン検出範囲外警告ブザーの吹鳴(1回):あり、なし
2.アンサーバック機能
・非常点滅表示灯/ルームランプによる合図:非常点滅表示灯/ルームランプ、ルームランプのみ
・車外ブザーによる合図(キーレスプッシュスタートシステム車のみ):あり、なし
●販売動向
スズキの方にお願いし、ワゴンRスマイルの昨年2021年8月27日発表・9月10日発売から、今年2022年7月いっぱいまでの販売動向を出していただきました。
とはいえ、ワゴンRスマイル単体の数字、さらには機種別比率の発表もしていないとのことで、ここに挙げている数字は本家ワゴンRも含めたワゴンR「シリーズ」の数字ということになります。
したがって、過去に採り上げてきたクルマとは少々毛色の異なる記載となりますことをご了承ください。
1.販売台数(2021年9月10日~2022年7月いっぱい)
8万2405台(※うち、ワゴンRスマイルは約5割)
2.全体の2WD・4WD比率
約8:2(※ワゴンRシリーズ全体)
3.機種別比率 → 公表せず。
4.ボディカラー比率(ワゴンRスマイルの2トーン上位3種のみ。比率、モノトーンの種別、比率は公表せず。)
1位:インディゴブルーメタリックII × ホワイト 2トーンルーフ
2位:ピュアホワイトパール × ブラック 2トーンルーフ
3位:コーラルオレンジメタリック × アーバンブラウン 2トーンルーフ
5.メーカーオプション装着比率 → 公表せず。
6.ユーザー層
・購入者の約8割が女性。
・独身や子育てが終わった方の割合が高い。
・購入決定のポイント:スタイル・外観・内装デザイン・安全装備など。
・使用用途:買いものや近所への外出、通勤・通学、家族の送り迎えなど。
販売台数についてはおおよその傾向しかわかりませんが、全国軽自動車協会連合会(通称・全軽自協)の、昨年2021年9月10日のワゴンRスマイル発売前後のワゴンRシリーズの販売台数を見てみると…
<2021年>
7月:2824台(12位)
8月:5235台(6位)
9月:7573台(3位)
10月:8808台(1位!)
11月:7267台(5位)
12月:7027台(4位)
このように、ワゴンRとワゴンRスマイルが混在する9月は不明瞭ということにして、10月以降の、7月8月からの跳ね上がりぶりを見ると、追加されたワゴンRスマイルがシリーズ全体の販売量を引き上げたことが明確に読み取れます。
ことに10月なんぞ、3位のN-BOX(ホンダ)、2位のルークス(日産)を抑えて1位! 「スズキ軽のスライドドア車はほしいけど、スペーシアほどの全高は要らない。ワゴンRのスライドドアがあれば買うんだけどなあ。」という潜在需要がかねてからあったことをうかがわせます。
★メーカーコメント
2021年8月の発売から約1年が経過し、エクステリア・インテリアのデザインやスライドドアによる利便性など、おかげさまで多くのお客様に好評をいただいております。
ぜひ一度お近くのスズキのお店でご試乗いただければ幸いです。
●エピローグ
軽自動車をバカにしていたわけではないのですが、どうやら筆者は、軽自動車に対するナメた認識をいまさらながら改めなければならないようです。前回のN-BOXといい、今回のワゴンRスマイルといい、内外の見た目に実際の走り、1990年代までの軽自動車はもちろんのこと、現行軽自動車規格の初期型車と比較しても仕上がりが向上しており、少なくともそこらへんのヘタな1000~1300cc級のクルマに乗るくらいならいまの軽自動車を選ぶほうが賢明、このワゴンRスマイルもその例に漏れません。室内空間の狭さ、造りの安っぽさ、走りのチープさ、騒音、空調の効き…かつては何かしらガマンを強いられたものですが、もはやそのようなイメージはなくなりました…高速道路だって、何の過不足もなくよく走る。もっとも、軽自動車もかつてのミドル級からアッパーミドル級の価格になったので、以前の軽自動車イメージから脱却しているのも当然なのですが。
いまやハイト型が主流になった軽自動車の中で、ワゴンRスマイルを買っても後悔はしないでしょう。
その半面、買う側からすると、ワゴンRスマイルに限らないのですが、スライドドア付きのハイト型軽はどれを買っても同じに見え、「このクルマでなければならない何か」が見当たらないのも事実です。このワゴンRスマイルにもユーザーに注文書に判を押させる決め手があるといいと思います。何もすごいものでなくてもけっこう。日常使用で便利なものがワゴンRスマイルにはある! と思える小さなものでいいのです。
たとえば筆者は、灰皿があるといいと思っているのですが、世界的な禁煙・嫌煙志向と、灰皿廃止で浮いたスペースを別の用途(スイッチの設置場所など)に充てるため、いまのクルマからはなくなりました。「灰皿」というから「この時代に!」と顔をしかめられますが、実はクルマの灰皿は小銭入れに使うのに実に都合がいいのです。だからいまは逆に、灰皿にも使える引き出し式のもの入れがあるとありがたい。
先進デバイスいっぱいがすごいのは充分わかりました。これからも進化するのでしょうが、置き去りにされているユーザーの目や肌に触れる部分の使用性向上…小さいことかもしれませんが、この小さな積み重ねが大きな商品力につながっていくのだと思います。
また話が逸れた終盤になりましたが、次の燃費報告にてワゴンRスマイルの「リアル試乗」を幕とします。
次回の「リアル試乗」もまたまた軽自動車。そして同じスズキ車。スズキアルトを採り上げます。おもしろいクルマだったぞ!
(文・写真:山口尚志)
【燃費報告】
★トータル燃費:21.33km/L(カタログ燃費(WLTC総合):25.1km/L)
★総走行距離:414.3km/L(一般道132.3km + 高速道250.8km + 山間道31.2km)
★試乗日:2022年7月18日(月)~19(火) 期間中、晴れときどき雨。クーラーはほとんどONのまま。
【経路内訳】
一般道:東京都練馬区~新宿区~江東区、群馬県前橋市内、高崎市内 計132.8km
高速道:
首都高11号台場線IC~都心環状線C1右まわり~5号早稲田IC 計47km
関越自動車道・練馬IC~北関東道・前橋南IC 88km、関越前橋IC~昭和IC 28.7km、昭和IC~前橋IC 27.9km、関越前橋IC~練馬IC 92.6km
山間道:赤城山1往復 31.2km
※今回は燃料残量の都合上、赤城山走行は1往復にとどめました。
【所感】
カタログ燃費達成率、約85%。クーラーをONしっぱなしだったにもかかわらずこの数字! 筆者はどのようなクルマでもリッター15km走ればいいヤと考えているクチで、ましてやクーラーを働かせっぱなしでこの数字なら御の字の御の字。といってもこのクルマは純粋なハイブリッドとは異なる、エンジン回転をモーターアシストするにとどまるマイルドハイブリッドで、車両重量は870kg。軽自動車としては軽くはなく、たとえばアルトのようなクルマに対する重量増ぶんの燃費増大だけを抑える、ほどほどハイブリッドと考えるべきかも知れない。
帰着しての給油時の燃料計のめもりは2ドット。スタート時と同じ給油機で注いだ燃料の量は19.42 Lでした。
【試乗車主要諸元】
■スズキワゴンRスマイル ハイブリッドX(5AA-MX91S型・2021(令和3)年型・2WD・CVT・コーラルオレンジメタリック アーバンブラウン2トーンルーフ)
●全長×全幅×全高:3395×1475×1695mm ●ホイールベース:2460mm ●トレッド 前/後:1295/1300mm ●最低地上高:150mm ●車両重量:870kg ●乗車定員:4名 ●最小回転半径:4.4m ●タイヤサイズ:155/65R14 ●エンジン:R06D(水冷直列3気筒DOHC) ●総排気量:657cc ●圧縮比:12.0 ●最高出力:49ps/6500rpm ●最大トルク:5.9kgm/5000rpm ●燃料供給装置:EPI(電子制御燃料噴射) ●燃料タンク容量:27L(無鉛レギュラー) ●モーター:WA04C(直流同期電動機) ●最高出力:2.6ps/1500rpm ●最大トルク:4.1kgm/100rpm ●動力用電池(個数/容量):リチウムイオン電池(5個/3Ah) ●WLTC燃料消費率(総合/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):25.1/22.6/26.2/25.7km/L ●JC08燃料消費率:29.2km/L ●サスペンション 前/後:マクファーソンストラット式/トーションビーム式 ●ブレーキ 前/後:ディスク/リーディングトレーリング ●車両本体価格:159万2800円(消費税込み・除くディーラーオプション)