スズキ「ワゴンRスマイル」のオートハイビーム等ライト性能を試す【新車リアル試乗 4-3 SUZUKI WAGON R SMILE 夜間走行編】

■スズキセーフティサポートのライト詳細を追ってみた

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ワゴンRスマイルの、夜間走行も試してみました

ワゴンRスマイル試乗の3回目は、前回のスズキセーフティサポート編の続きで、ワゴンRスマイルのライト性能について見ていきます。

●ヘッドライトはグレード次第で変わる2種類

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ハイブリッドXは、LEDライト+めっき仕立てパーツの顔となる
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いちばん安いSの顔。ハロゲンランプ+シルバー塗装パーツのフェイスとなる

ワゴンRスマイルのリアル試乗第1回で、めっきのグリルのデザインには立体感があっていいと書きました。これが全機種共通の顔かと思ったら、めっきグリルはめっきドアハンドル、めっきバックドアガーニッシュとのセットで、ハイブリッドX、ハイブリッドSの2トーンルーフパッケージ車に装備。いっぽう、ハイブリッドSの単色と2トーンを選ぶ事ができない最廉価Gのグリル&ライトまわりは単なるシルバー塗装となります。

front face 3 offset wrench
めがねレンチ

試乗車のめっき仕立ての顔がいいとも悪いとも思いませんでしたが、ライトまわりのサークルめっきと、そのライト左右を結ぶグリル上下のめっきバーが目立ち、見るたびに筆者はめがねレンチを連想させられました。

そのようなパーツで加飾されるワゴンRスマイルのフロントライトは、最上級のハイブリッドXのみプロジェクターのLED式で、他がハロゲン仕様。バンパー下のフォグランプもハイブリッドXだけにつきます。ということは、ワゴンRスマイルは、ハイブリッドX用となるメッキパーツ+LEDライト仕様、ハイブリッドS・2トーンルーフパッケージ車用のメッキパーツ+ハロゲンライト仕様、そしてハイブリッドSと単なるG用の、シルバー塗装パーツ+ハロゲンライト仕様…3車3様の顔が用意されていることになります。

light front 1 wt
ワゴンRスマイルのフロントランプ構成

レンズ内部で、寄り目のときの黒目の位置に電球のターンシグナル、中央にロー/ハイ兼用のランプがレイアウトされるのはみな同じ。ただしLED版の場合は縦書き文章のカッコ「()」みたいなLEDのスモールランプがプロジェクターレンズをくくっています。

見かけ上は2灯式のライトながら、その実、LED素子がいくつ使われているのかわかりませんが、いつも筆者がいうように、LED素子のどれかひとつ切れただけでもユニットごと交換にならないようにしてほしいこと、表面のアクリルレンズが劣化して黄ばんだり傷ついたりしたとき、やはり総取っ替えにならぬよう、単品でもレンズ交換可能な構造にすること…これらを解決したうえでLED化を進めてほしい…この点に困っているユーザーは多く、筆者は死ぬまでこのことをいいつづけてやろうと思っています。

light front switch
「AUTO」が定位置

ライトスイッチの構成は、新オートライト規制義務化に応えたもので、スズキの場合は下から「OFF/スモール」「AUTO」「ライト」の3ポジション式。「AUTO」が定位置となります。

「AUTO」では、エンジン始動が昼間ならライトは消灯のまま、夜間ならエンジンスイッチを押すやライト点灯。ライト消灯時、先端スイッチの手前まわしであれ手前保持であれ、そのたびに点消灯し、夜間点灯中なら手前まわしでスモール落ち、手前保持で消灯します。

夜間走行では、いつものようにオートハイビームの利便性を確認してきました。

周囲の明るさに応じてロー/ハイを切り替える機能を、スズキでは「ハイビームアシスト」と呼んでいます。

light front switch side wt
ハイビームアシストは、写真の中立状態で作動する

使用法は以下のとおり。

1.エンジンスイッチON。
2.ライトスイッチ位置が「AUTO」。
3.スイッチレバーを前方に押しやる。

hi-beam assist 2 indicator with hi-beam wm
システム判断でハイビームアシストが働いているときのインジケーター
hi-beam assist 1 indicator wm
ハイビームアシストの作動の待機状態ランプ

この状態にするとメーター内に緑色のハイビームアシスト作動ランプが点いてハイビームアシスト待機状態となり、自動でロー/ハイが切り替わるたび、青色のハイビーム灯が追加点灯します。

以下のすべての条件が揃ったとき、自動でロー/ハイを切り替えます。

【ロー → ハイ】
・車速約30km/h以上。
・自車前方が暗い。
・前方にライト点灯中のクルマがいない。
・前方の道路沿いの街路灯の光が少ない。

【ハイ → ロー】
・車速が約25km/h以下にまで落ちる。
・自車前方が明るい。
・前方にライト点灯中のクルマがある。
・前方の道路沿いの街路灯の光が多い。

hi-beam assist 3 at high way
先行車がはるか遠くにいてもハイビームになってしまっている

実際に使ってみると、ロー/ハイ自動切り替えの判断力&確実性は及第点か、それより少し上といったところ。街中走行であれ、高速道走行であれ、自車前方にクルマがなくても、街路灯ないし道路照明が灯っているとローを維持するし、状況によってはライト点灯中の先行車・対向車があってもハイビームにすることがありました。ただ、その勘違いタイムは長くて数秒のことで、冷静になると? 適切なビームに切り替えます。このへん、他社の2段式自動ハイビームと似たり寄ったりでした。

ところで筆者は夜、前方に先行車・対向車、歩行者ばかりか、のら犬、のら猫さえいなければ、街路灯が灯っていても、幹線路、住宅路問わずハイビームにして走るのですが、そのような者からすると、ひとつふたつ考え直してほしいところがあります。

ひとつは、自動ハイビームはスイッチレバーの向こう押しではなく、中立位置で作動してほしいことで、前述のように、クルマが思い違いをしてローを維持しているとき、即座に自分でハイビームに切り替えたくても現状ではできません。すでにレバーが前方にあるからです。ならばハイビームアシストの機能そのものを走行中でもOFFにできるボタン式のメーンスイッチがどこかにあればいいのですがそれもなく、マルチインフォメーションディスプレイ内のメニューから停車中にしか行えないのは不便な点です。

現状の場合、逆に不要な自動ハイビームを任意でローに落としたい場合はレバーを手前に引けばいいのですが、ここはやはり中立位置のまま自動切り替えが行われ、かつ、押しボタンのメーンスイッチを併設するほうがいいと思います。この点については、後々のカスタマイズ機能紹介の項でも述べるつもり。

もうひとつは、車速条件は不要ではないかということです。約25km/h以下になるとロービームになるので、深夜の住宅路では必然的にローになってしまいます。このような時間のこのような場所は相手がいる可能性が少ないだけに、本当にひとがいたときには見落としかねない。そのときこそ自動なり手動なりでローに落とせばいいわけで、いっそローへの切り替えは停止寸前でもいいのではないかと思っています。また、その意味でもレバー中立位置作動&ボタンによる主スイッチがほしくなるわけです。

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赤城山でのハイビームアシスト作動中のようす

他社の他車に等しく、確実な作動を示したのは真っ暗闇の山間道で、試したのは群馬県の赤城山でしたが、料金所跡を照らす照明光をくぐりぬけ、漆黒の闇に吸い込まれるように続く登り坂にさしかかるや、待ってましたとばかり、自信満々にハイビームをぶっ放す! 中腹でカーブ向こうの対向車光がちらつけば即座にローといった具合で、ここでのロー/ハイ切り替えの確実性は文句なしの100点満点でした。

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欲をいえば左右方向の配光がもう少し拡がるといいと思ったが、現状でも特に不満はない

明るさに不足がなければ配光にも特にいいたい点はなく、欲をいえばカーブ進入先を照らすべく、もうちょい左右に配光を広げてほしいと思いましたが、ただでさえ値段が高くなった軽自動車にターンシグナル連動の単純なコーナーリングランプやAFSを要求しようものならなお高くなるので、それ以上のことはいわないことにしておきましょう。

ただ、以前、三菱自動車がいまのRVRの初期に用いていたライトで、プロジェクター式の構造上、必ずしもすべてを前方照射に使い切れなかった光の残りを別の専用レンズに集め、サイド照射に充てるというものがありました(スーパーワイドHIDヘッドライト)。いわば光の廃物利用。ランプメーカーのアイデアが(ランプだけに)光るもので、当時のRVRで試しましたが、なかなかの性能を見せてくれました。このように、わざわざ新たな光源を追加せずとも、追加したのと同等に照射範囲を拡げる手法はあるわけで、安いのが信条の軽自動車にこそ、いまあるもの内部構造を変えることで機能性を上げる工夫を凝らし、価格上昇を最小限に抑えるように努めてほしいところです。

さて、前々から問題視し、常々再考を要すと思っているのがフロント側ターンシグナルの位置について。

いまのクルマはフロントターンシグナルランプがヘッドランプユニットと一体になっています。場所はグリル寄り、コーナー側、ユニット底辺側といろいろ。とにかくロー/ハイと隣接していますが、それがアダになってターンシグナルの点滅がロービームの光に埋もれ、対向車から右左折の認識がしにくいことが多いのは問題だと思っています。夜の対向車に対し、みなさんの中にも同じことを感じたひとがいるのではないでしょうか。

昔はターンシグナルをフロントバンパーに据えつけていました。いつしかヘッドライト筐体に一体化され、いまのクルマのバンパー側の灯火はフォグランプだけになっています。「すべてを一体化することですっきりと」というのがうたい文句で、そのうちそれさえいわれなくなりましたが、本当の理由は、ヘッドランプ、ターンシグナル、スモールを一体にしてしまえば生産ラインでの車体への組み付けが1回、左右なら2回だけですむことにあります。これがターンシグナルだけバンパー付けにするならフロントランプ関係の組み付けは2回になってしまう…これが世にいう「工数低減」「VA・VE(バリューエンジニアリング・バリューアナリシス)」というやつで、機能や価値を落とさずにすむなら、省ける手間(=時間=コスト)はじゃんじゃん省こうという考え方です。しかし、造り手都合で点滅が見にくくなるなら本末転倒なわけで、工数低減もVAもVEもあったもんじゃありません。ワゴンRスマイルに限らない、いまのクルマの開発者には、もっと夜間に於ける被視認性を重視してほしいところです。

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2代目テラノの改良版(1996年)
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そのテラノに搭載されたHIDランプ(日産呼称・キセノンヘッドランプ)

さて、日産自動車が1996年に乗用車用としては日本初で2代目の改良型テラノにHIDライト(日産商品名「キセノンヘッドライト」)を搭載し、そのHIDがいまLEDに置き換わろうとしています。夜の街には白いライト光のクルマが増えました。HIDやLEDの白い光は、それまでのハロゲン球(または白熱球)と比べて確かに明るく、夜だって晴れていれば見やすいのですが、一転、雨の日にはハロゲン球に戻したくなります。ふだんはグレーなのに、雨に濡れると黒くなってしまうアスファルトに白い光が吸収されてしまうからです。他車のヘッドライト光、街灯やネオンが灯る街中だと自分のライトつけ忘れを疑い、ライトスイッチをカチャカチャすることがあるほど、無灯火と変わらないときだってある。このようなシーンでは黄色味を帯びる光のハロゲン球のほうに軍配が挙がります。

現在、道路運送車両法の保安基準では、「走行用前照灯の色は白色であること。」と規定されています。ただし「平成17年12月31日以前に製作された自動車については、」「…白色又は淡黄色であり、そのすべてが同一であること。」とされています。「淡黄色」のライトとは、いわゆる「イエローバルブヘッドライト」のことで、白い光を見慣れたいまでは「淡黄色」に含みたくなる、黄色味を帯びた従来のハロゲンライト光は「白色」に属します。

最近はひとつのバルブでもスイッチの押し様で白と黄色の2色に切り替えられるLEDフォグランプが売られており、ディーラーオプションにも正式採用されている時代です。白のスモールライトがオレンジ色のターンシグナルになるクルマもある。というわけで、ヘッドライトも白とハロゲン光を再現した色の2色にできないものか? 何もシームレスに変化しなくてけっこう。普段は白い光で走行、雨が降ってきたらスイッチひと押し、またはワイパー連動(ではないほうがいいかなとも思うが)でライト光を白からハロゲン色に変化させる…LEDだもん、できるでしょ? 筆者の見落としでなければ、保安基準に「点灯中、色が変わってはならない。」が旨の表記は見当たらず、4灯式ライトのクルマの中には、ローがHIDの白い光、ハイがハロゲンのままというものもあったくらいですから、色が変化することについてはたぶん問題ないでしょう。

平素ここで、自動車用ライトの総LED化に反発心を抱く筆者をもうならせるような、LEDでなければできない機能を考えてほしいと思います。

…ワゴンRスマイルから話が逸れました。話題をクルマ本体に戻します。

●リヤランプ

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ワゴンRスマイルのリヤランプ構成

後ろにまわってリヤランプも見ておきましょう。

角を丸めた長方形の、至ってシンプルな形状のリヤランプには、上から四角形のライン状に光るテール&ストップランプ、その下でターンシグナルとリバースランプが重なっています。その下の余白ならぬ余赤部分はリフレクター。

「テール&ストップ」と書いたことからおわかりのとおり、このふたつは同じ発光部が受け持っており、テールとストップとで面積は変わりません。ライン状に灯るので、イメージからすると光量不足が心配になるのですが、実際に目にしたときはそのようなことはありませんでした。昼間のビル影や夕暮れどきは大丈夫かナ。

ここで車両前後各光源について触れておきましょう。

【フロント灯火】
★ヘッドライト(ハイブリッドX):LED
・ヘッドライト(ハイブリッドX以外): 60/55W球(H4)
★ターンシグナル(側面ドアミラー用・ハイブリッドX):LED
★ターンシグナル(側面フェンダー用・ハイブリッドX以外):5W球
・ターンシグナル(前面用):21Wウェッジ球
★車幅灯(スモール・ハイブリッドX):LED
・車幅灯(スモール・ハイブリッドX以外):5Wウェッジ球
★フォグランプ(ハイブリッドX):LED

【リヤ灯火】
★ハイマウントストップ:LED
・テール&ストップ:LED
・ターンシグナル:21Wウェッジ球
・ナンバープレートランプ(番号灯):5Wウェッジ球
・リバースランプ:16Wウェッジ球

★マークがついている灯火は非分解式で、仮に点灯しなくなってもユーザーレベルでの補修作業はできません。ハイブリッドX以外の機種が用いる、フロントフェンダーのターンシグナル球が5Wのウェッジ電球を使用しているにもかかわらず非分解式なのは謎。そういえば筆者が使っている旧ジムニーシエラも同じだっけ。

逆に筆者が淡い期待を抱いているのは、テール&ストップは非分解式に属していないことで、取扱説明書に「点灯しないときは、スズキ販売店またはスズキ代理店にご相談ください。」とあることから、不点灯の際でもテール&ストップだけは何らかの手を打てるようになっているのかもしれません。

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夜間照明が灯っているときの運転席まわり

さて、最後に夜間照明を灯した室内写真を載せておきますので参考にしてください。

車内各部の照明色は、薄いオレンジというか、それこそ淡黄色というものでした。本当は暗闇では黒の正反対の白、または緑がすっきりして見やすくていいんだけどネ。

というわけで今回はここまで。

次回、「車庫入れ&荷室編」でお逢い致しましょう。

(文・写真:山口尚志)

【試乗車主要諸元】

■スズキワゴンRスマイル ハイブリッドX(5AA-MX91S型・2021(令和3)年型・2WD・CVT・コーラルオレンジメタリック アーバンブラウン2トーンルーフ)

●全長×全幅×全高:3395×1475×1695mm ●ホイールベース:2460mm ●トレッド 前/後:1295/1300mm ●最低地上高:150mm ●車両重量:870kg ●乗車定員:4名 ●最小回転半径:4.4m ●タイヤサイズ:155/65R14 ●エンジン:R06D(水冷直列3気筒DOHC) ●総排気量:657cc ●圧縮比:12.0 ●最高出力:49ps/6500rpm ●最大トルク:5.9kgm/5000rpm ●燃料供給装置:EPI(電子制御燃料噴射) ●燃料タンク容量:27L(無鉛レギュラー) ●モーター:WA04C(直流同期電動機) ●最高出力:2.6ps/1500rpm ●最大トルク:4.1kgm/100rpm ●動力用電池(個数/容量):リチウムイオン電池(5個/3Ah) ●WLTC燃料消費率(総合/市街地モード/郊外モード/高速道路モード):25.1/22.6/26.2/25.7km/L ●JC08燃料消費率:29.2km/L ●サスペンション 前/後:マクファーソンストラット式/トーションビーム式 ●ブレーキ 前/後:ディスク/リーディングトレーリング ●車両本体価格159万2800円(消費税込み・除くディーラーオプション)