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■バブル景気の勢いに乗ってガルウイングのMRスポーツがデビュー
1992(平成4)年9月24日、マツダから軽のミッドシップスポーツの「オートザムAZ-1」がデビュー。オートザムは、当時マツダが進めていた5チャンネル販売体制の中のひとつです。軽初のガルウイングにミッドシップ(MR)と、バブル景気が生んだ贅沢なスポーツモデルでした。
●バブルが生んだ軽の2シータースポーツ“ABCトリオ”
1980年代には、「ソアラ」や「マークII」などハイソカーと呼ばれる高級車が一大ブームを起こし、軽自動車も高性能、高機能のクルマが人気を博していました。1980年代後半には空前のバブル景気が到来、その勢いに乗ってバブル期に開発された3台の軽スポーツカー“ABCトリオ”が、1990年代初頭にデビューしました。ABCは、車名の頭文字をとったものです。
・マツダ「オートザムAZ-1」(1992年~):ガルウイングを備えた唯一の軽自動車、スズキ製エンジンを搭載したミッドシップスポーツカー
・ホンダ「ビート(Beat)」(1992年~):NAながらレスポンスの良い高回転型エンジンを搭載したミッドシップスポーツカー
・スズキ「カプチーノ(Cappuccino)」(1991年~):軽量化にこだわり加速性能に優れた軽乗用車唯一のFRスポーツカー
●軽初のガルウイングを装備したMRスポーツ
オートザムAZ-1は、モノコックフレームをFRP製ボディパネルで覆った車体に、最大の特徴であるガルウイングドアを装備。ガルウングの装備は、軽としては最初で最後(2022年9月現在)でした。
パワートレインはスズキから調達した、当時最強を誇ったアルトワークスの64PSを発揮する660cc 直3 DOHCターボエンジン、これと5MTの組み合わせ。駆動方式は、エンジンを運転席直後に横置きに搭載したミッドシップレイアウトで、前後車両配分44:56を実現しました。
センターメンバーとサイドメンバーは剛性を高めるために太く設計されているので、室内スペースとしては2人乗りでギリギリの状態。居住性というよりは走りにこだわりを置くものでした。
画期的な装備で若者を魅了しましたが、販売は期待通りには伸びず、わずか2年で生産を終えました。生産台数は4,409台、バブルがもたらした軽自動車とは思えない豪華でユニークなクルマでした。
●AZ-1以外にもあった日本の跳ね上げ式ドア車
ガル(カモメ)ウイング(翼)は、ドアを開けたときのシルエットが、カモメが翼を広げたように見えることから名付けられました。ガルウイングを最初に採用したのは、1955年に登場したメルセデス・ベンツ「300SL」ですが、日本車でも過去にAZ-1以外にもガルウイングなどの跳ね上げ式ドアを採用したクルマがありました。
日本で初めて跳ね上げ式のバタフライドアを採用したトヨタ「セラ」、三菱のターボGTカーをベースにしたガルウイングの「スタリオン・ガルウイング」、スポーツモデルではなく移動販売車などに使われたガルウイングのダイハツ「ミラ・ミチート」などです。
ガルウイングなど、跳ね上げ式ドアの魅力は、なんといってもドアを開けたときのカッコよさですが、横のスペースがなくても開閉できるメリットがあります。一方で、構造が複雑で重くなってしまうといったデメリットがあります。日本の跳ね上げ式ドア車は、ほとんどバブル期に登場したモデルであり、実用性ばかりが重視されがちな現在、もう日本で跳ね上げ式ドア車を見ることはないかもしれませんね。
AZ-1はバブル期に開発され、発売した時にはバブル崩壊というタイミングの悪いクルマだったのでしょう。出来の良いクルマでも、バブル崩壊の憂い目に遭ったクルマは結構ありますね。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかも知れません。
(Mr.ソラン)