ホンダの日仏合同チーム「F.C.C. TSRホンダフランス」が2輪の世界耐久レース選手権「EWC」で逆転チャンピオン

■鈴鹿8耐でも活躍したホンダ耐久チームが2度目の栄光

オートバイの耐久レースといえば、2022年8月7日に3年ぶりの開催となった鈴鹿8耐(鈴鹿8時間耐久ロードレース)が有名ですが、欧州を中心に世界選手権も行われています。

F.C.C. TSRホンダフランスが世界耐久ロードレース選手権で逆転チャンピオン
F.C.C. TSRホンダフランスの走り

それが、ル・マンやボルドールといった伝統のレースが開催される「FIM世界耐久ロードレース選手権(以下、EWC)」です。

鈴鹿8耐もシリーズ戦に入っているEWCですが、その2022年シーズンで、ホンダの日仏合同チーム「F.C.C. TSRホンダフランス(F.C.C. TSR Honda France)」が年間チャンピオンを獲得。

9月17日から18日にかけてフランスのポール・リカール・サーキットで開催された最終戦ボルドール24時間レースで、トラブルに見舞われながらも4位に入り、ランキング2位から逆転で王座を奪取したのです。

●日本の耐久名門チームとフランスホンダが合体

2017年からEWCに参戦するF.C.C. TSRホンダフランスは、日本における耐久ロードレースの名門チーム「F.C.C. TSR」と、ホンダのフランス現地販売法人がタッグを組んだインターナショナルな耐久レースチームです。

同チームは、2017-2018年EWC世界選手権にフル参戦し、年間タイトルを獲得した実績を持ち、今回の王座奪取は4シーズンぶり2度目となります。

F.C.C. TSRホンダフランスが世界耐久ロードレース選手権で逆転チャンピオン
マシンはホンダ・CBR1000RR-RファイヤーブレードSP

同チームは、ライダーにジョシュ・フック選手(オーストラリア出身29歳)、ジーノ・リア選手(イギリス出身33歳)、マイク・ディ・メリオ選手(フランス 出身34歳)の3名を擁し、2022年シーズンのEWCに挑みました。

マシンは、ホンダの1000cc市販スーパースポーツ「CBR1000RR-RファイヤーブレードSP」をベースにした耐久レース仕様。ノーマルでも最高出力218psを発揮するモンスターマシンをベースに、各部を耐久レース向けにアップデートさせたバイクです。

開幕戦は、フランスで開催された伝統のル・マン24時間レース。予選3番手からスタートし、見事に3位表彰台を獲得しました。

F.C.C. TSRホンダフランスが世界耐久ロードレース選手権で逆転チャンピオン
F.C.C. TSRホンダフランスの走り

続く第2戦は、ベルギーのスパ・フランコルシャン24時間レースで、一旦は10位まで順位を落としたものの、レース終盤までに4番手まで順位を戻し、最終ラップでリア選手がし烈な戦いを制して再び3位に入っています。

そして2022年8月7日、3年ぶりに開催された鈴鹿8耐。

このレースでは、決勝前日のフリー走行中にリア選手がシケインで転倒、ドクターヘリで病院に搬送されたため、フック選手とディ・メリオ選手の2名での参戦となりました。

予選4位を獲得しむかえた決勝レースでは、トラブルに見舞われたものの、粘り強い走りで順位を回復し、10位で完走を果たしています。

●28番手から順位を上げ4位フィニッシュ

そして、最終戦は、100周年記念を迎えた伝統のボルドール24時間レース。

F.C.C. TSRホンダフランスが世界耐久ロードレース選手権で逆転チャンピオン
F.C.C. TSRホンダフランスの走り

フランスのカステレに位置するポール・リカール・サーキットで開催されたこのレースでは、鈴鹿8耐で負傷したリア選手の代りに、2017-2018シーズンにチャンピオンを獲得した時のライダーであるアラン・テシェ選手(フランス 28歳)を起用。

レース前の時点でポイントランキングは2位。1位とのポイント差は23ポイントのため、最終戦の結果次第では十分に逆転できる位置につけています。

決勝では、4番手からスタートしたものの、マシンの故障など2度のトラブルにより、一時は28番手まで順位を落とすことに。

でも、長丁場の耐久レースでは、何が起こるか分かりません。ライダーたちは、諦めずに着実に周回を重ね、順位を徐々に回復します。一方、チャンピオンを争うほかのチームは次々とリタイア。

F.C.C. TSRホンダフランスが世界耐久ロードレース選手権で逆転チャンピオン
F.C.C. TSRホンダフランスの走り

F.C.C. TSRホンダフランスは、24時間後の18日15時に4位でフィニッシュすることで、ポイントを逆転し、見事に年間チャンピオンを獲得したのです。

●耐久レースの醍醐味とは?

レース後、ライダーのひとりであるジョシュ・フック選手は、

「「過去の経験からチェッカーを受けるまでは油断はできないと思っていました。僕たちは過去にもさまざまなシチュエーションから復活してきましたが、確実なことはどこにもありません。皆がそうであるように、諦めずに自分たちのレースをしてきました」

と、さすが耐久スペシャリストらしいコメントを発表しています。

F.C.C. TSRホンダフランスが世界耐久ロードレース選手権で逆転チャンピオン
F.C.C. TSRホンダフランスのライダーとスタッフ

今年の鈴鹿8耐でも、転倒などのトラブルがあったにも関わらず、迅速なマシン修復などにより、上位入賞を決めたチームもありましたよね。

「結果は最後まで分からない」、それが耐久レースの醍醐味。そして、その鉄則を諦めずに実践したことが、今回F.C.C. TSRホンダフランスに、2度目の栄光をもたらした大きな要因なのかもしれません。

(文:平塚直樹

この記事の著者

平塚 直樹 近影

平塚 直樹

自動車系の出版社3社を渡り歩き、流れ流れて今に至る「漂流」系フリーライター。実は、クリッカー運営母体の三栄にも在籍経験があり、10年前のクリッカー「創刊」時は、ちょっとエロい(?)カスタムカー雑誌の編集長をやっておりました。
現在は、WEBメディアをメインに紙媒体を少々、車選びやお役立ち情報、自動運転などの最新テクノロジーなどを中心に執筆しています。元々好きなバイクや最近気になるドローンなどにも進出中!
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