ポルシェの創業者フェルディナント・ポルシェ生まれる。”20世紀最高の自動車設計者“と称えられる天才技術者【今日は何の日?9月3日】

■今から147年前、VWビートルや数々のスポーツカーを設計したポルシェ博士が誕生

名車356とフェルディナント・ポルシェ(写真:ポルシェAG)
名車356とフェルディナント・ポルシェ(写真:ポルシェAG)

1875(明治8)年9月3日、フェルディナント・ポルシェはオーストリアのブリキ職人の次男として生まれました。

ダイムラー・ベンツで活躍の後、独立してポルシェ社を設立。スポーツカーだけでなく、電気自動車や航空機用エンジン、戦車まで手掛けた多才な技術者です。

●ダイムラー・ベンツで才能を発揮後、独立してポルシェ社を創業

フェルディナント・ポルシェは、1875年にオーストリアのブリキ職人の次男として生まれました。1894年にウィーン工科大学の聴講生となりますが、すぐに大学をやめて電気機器会社に就職。この頃から、モーターの特許を申請するなど自動車に興味を持ち始めます。

その後、電気自動車を開発していたローナー社に引き抜かれて電気自動車の開発に従事し、1906年にダイムラー・ベンツに技術部長として移籍。技術部長兼取締役に就任して、数々のレーシングカーを開発しますが、1928年に経営陣と対立してダイムラー・ベンツを退職します。

1931年に、シュトゥットガルトで自動車の設計コンサルタント会社ポルシェを設立し、国内外から多くの委託開発を請け負います。1933年には、ヒトラーから国民車「フォルクスワーゲン(VW)タイプ1」の設計を依頼されて開発に成功。第二次世界大戦中は、軍用車両や戦車などを開発しました。

●電気自動車やレーシングカー、航空機用エンジンと多彩な才能を発揮

ポルシェが完成させた電気自動車「ローナーポルシェ」(1900年)。インホイールモーターEVの先駆け(C)Creative Comonns
ポルシェが完成させた電気自動車「ローナーポルシェ」(1900年)。インホイールモーターEVの先駆け(C)Creative Comonns

ポルシェが最初に手掛けた自動車は、ローナー社で開発した車輪のハブにモーターを装着した電気自動車「ローナーポルシェ」です。これは現在、次世代EVと位置付けられているインホイールモーターEVの先駆けであり、100年以上も前にこのシステムを考案していたポルシェの才能には驚かされます。

ダイムラー・ベンツに移籍後は、数々のレーシングカーを開発。スーパーチャージャー付4気筒OHCエンジンを搭載したレーシングカーは、タルガ・フローリオで優勝するなど圧倒的な性能を発揮しました。また、航空機用エンジンの設計も行い、その技術は後のV型12気筒エンジンなど高性能の自動車用エンジンにも生かされています。

ポルシェは敬意をこめて「ポルシェ博士」と呼ばれますが、自身は叩き上げの技術者で大学を卒業していません。数々の功績が認められて、ウィーン工科大学とシュトゥットガルト工科大学から名誉博士号を授与されていたので、博士の敬称で呼ばれたのです。

●ヒットラーに依頼された国民車VWタイプ1(ビートル)の大成功

1938年にタイプ1のプロトタイプが完成
1938年にタイプ1のプロトタイプが完成
アドルフ・ヒットラー(左)&フェルナンド・ポルシェ(右)(C)Creative Commons
アドルフ・ヒットラー(左)&フェルナンド・ポルシェ(右)(C)Creative Commons

世界中にポルシェの名前を轟かせたのは、ヒトラーから依頼された国民車VWタイプ1の成功です。大戦後、本格的な量産で発売されるや否や、タイプ1は「ビートル」の愛称で親しまれ、世界中で大ヒット。1955年には累計100万台を達成、ドイツ戦後の復興にも大きく貢献しました。

タイプ1の累計販売台数は1941年~2003年の62年間で2152万9464台、4輪の単一モデルとしては他に類のない史上最多の記録を樹立しています。

ちなみに、車名が同じ単一モデルとして最多の累計販売台数を誇るのはトヨタの「カローラ」で、1966年~2021年11月で5000万台を突破しています。


輝かしい功績を残したポルシェ博士ですが、その後引き継いだ息子や孫たちが多くの名車を生み出し、憧れのポルシェブランドを築き上げました。また、現在もなお多くのクルマの基本技術にポルシェ博士の多くの遺産が生かされていることに驚かされます。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかも知れません。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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