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■誰も想定しない着想で魅力のあるクルマを生み出す
8月26日(金)に発売された「スペーシア ベース」は、スーパーハイトワゴン「スペーシア」シリーズの第4弾として登場しました。これまでの3車種は軽乗用車でしたが、一転、軽商用車としてまとめられた点にスズキの巧妙な企画力が感じられます。
ここでは、デザイン的な視点でその手法を見てみたいと思います。
●ポイントを突いた「変更」で最大の効果を狙う
またしてもウマくやったな! つい先日も「ラパン LC」で「その手があったか」と思わせたスズキですが、今回もまた、何の前ぶれもなく私たちユーザーを驚かせることに成功したようです。
その理由はいくつかありますが、まず驚いたのは「スペーシア カスタム」をベースにしたことでしょう。
いまやシリーズの稼ぎ頭である「スペーシア ギア」が標準車をベースにしているのに対し、商用車化をカスタムベースとしたのは実に意外です。しかし、巨大なグリルをブラックに換え、同時にドアハンドルやドアミラー、バックドアガーニッシュなどもそれに揃えることで、程よい道具感を出すことに成功しています。
さらに、これまた道具感溢れるデニムグレーメタリックをセールスカラーにするばかりか、スペーシアギアのメインカラーであるアクティブイエローも採用することで、お互いを上手く共感させているところにも感心します。もちろん、新色のモスグレーメタリックで王道的な商用使いにも対応しています。
●インテリアは差し色に加え機能面も充実を図る
一方、インテリアも巧妙さを感じるところです。まず、インパネやリアクオーターポケットなどに使われているグレイッシュブルーが程よいアクセントになっていて、室内空間に明るさを与えています。また、例のインパネBOXは、最初からこの企画を想定していたのか?と思わせるほどドンピシャのアイテムと言えるでしょう。
機能面でも、4パターンの使い道を持たせたマルチボード、荷室に10ヵ所置かれたユーティリティーナット、リアクオーターポケット、オーバーヘッドシェルフ、フロアコンソールトレーなど、これが単なる「なんちゃって商用企画」でないことを示しています。
このスペーシアベースは、ダイハツ「アトレー」への対向車として企画されたことは容易に想像できます。ライバルのキャッチコピーである「第三の居場所」に対し「自分だけの移動基地」と、いずれも荷物の配送や道具入れだけでなく、オフィスやカフェ、キャンプといった幅広い使い勝手を想定している点はまったく同じです。
ただ、アトレーはオールニューであるのに対し、スペーシアベースはあくまでもシリーズの派生車。にも関わらず、ほとんど引け目のないキャラクター性を発揮させているところが実に巧妙なのです。
一方、偶然か否かはわかりませんが、ダイハツは9月にスペーシアギアに対抗するべく、タントに「FUN CROSS」を設定すると発表しています。ボディ各部にプロテクターを施す手法は、まさにスペーシアギアそのもの。ただし、デザイン的な視点では少々オーバーデコレーションと言えそうです。
そのあたりのさじ加減の違いに、両社のセンスの違いが表れているのかもしれませんね。
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