新型アトレーのスクエアなボディは遊びに使い尽くせるための機能美。そのマルチBOXなデザインとは?【特別インタビュー】

■車内を最大限に生かす「第三の居場所」、そのスタイルとは?

アトレー・メイン
スクエアスタイルとして積めるクルマを表現したボディ

約17年ぶりにフルモデルチェンジとなったダイハツ新型「アトレー」は、レジャー用途など荷室を最大限に活用するため4ナンバー化、「第三の居場所」を掲げました。ではそのスタイルにはどんな意図があるのか、デザインを担当した森岡、井藤両氏に話を聞きました。

── 初めに、新型アトレーは「ハイゼット カーゴ」がベースですが、商用車と乗用車ではデザイン開発の体制などに違いはあるのですか?

「いえ、開発体制や期間など基本は同じですね。ただ、耐久性やドアの開閉限度などクルマが持つ要件が異なりますので、その点の考え方の違いはあります」

── 今回、デザインコンセプトやキーワードは設けましたか?

「はい、ハイゼットカーゴの『The 商用』に対し『The レジャー』としました。遊びを極めるという意図ですね。ベースとして商用のハイゼットカーゴがあって、そのよい点をそのままアトレーに引き継ぐという考え方です」

アトレー・サイド
フラッシュサーフェス化されたサイドボディ

── カタログには「Enjoy The Square!」とありますが、なぜスクエアスタイルとしたのでしょう?

「新型は、クラス最大の積載量やフラットな荷室床などを勘案し4ナンバー化したのですが、まさに積めて使えるシルエットにしたかった。先代に比べAピラーやリアハッチの角度を立て、パッと見てわかるカタチですね。その点で従来はライバルに負けていたのですが、新型はプロユースを含めたユーザーの期待に応えたと思います」

── 全体にスクエアではあるのですが、たとえばガラスの四隅やルーフラインなど、意外に丸みも使われています。

「あまりに角張っていると痛々しくなってしまいますので(笑)。『ラストワンマイル』という言葉がありますが、運送業の方へのリサーチでは、お客さんに荷物を渡す時点で、あまり過度な威圧感を与えたくないそうです。そこで、親しみやすさとスクエアをミックスさせたワケです」

●防犯面や、女性でも違和感なく運転できるベルトライン

── ウインドウとボディの厚みの比率、キャラクターラインの高さはどのように決めましたか?

「ベルトラインではふたつの要件を考えました。まず、高価な道具類を積んでいる場合など、盗難防止の意味から車内があまり見えてしまうのはマズイ。また、小柄な女性が運転する際にはベルトラインを上げ過ぎるとNGで、その中間のベストな高さを追求しました。キャラクターラインは、カーゴとしての頑丈さ、レジャー用途としてのタフさが出る高さですね」

アトレー・リア
ルーフが意外なほど丸みを持っているリアビュー

── サイドウインドウでは、商用としては意外に(?)フラッシュサーフェスが徹底されていますね。

「今回はサイド面も立ててガラスを極限まで外に出し、これに沿ってフラッシュサーフェス化しています。外から見ても積める感じを出す意図ですね。また、先代はCピラーがボディ色だったのですが、新型は昇降機能を省くことでフラット化が可能になり、荷室が長く見える効果も出せました」

── リアでは、バックドアも意外なほど丸みを持たせています。

「たくさんの大切な荷物を載せるべく、リアをあまり四角くしてしまうと壁面感が強くなり、倒れて来るような不安定さを感じてしまうんです。角度は立てつつ、そう思えないところまで削ったと。また、今回はワイパーをウインドウの上に置いたので、リアパネル全体がスッキリ見えると思います」

アトレー・アンダー
ボディ下部をブラック塗装で1周させた

── ボディ下部をブラック塗装で1周させていますが、その意図はどこにありますか?

「まずキズが目立たないことがひとつと、意匠的にはボディ全体を引き締める効果を狙っています。また、レジャーカーとして少しアクティブに走りのよさも出したかった。ワクワク感のようなものですが、これは当初からあった案ですね」

── 乗用車感覚として、インテリアも質感の向上をさせていますね。

「はい。ハイゼットカーゴに対し室内のノイズを減らしています。車中泊を想定したサイドトリムの追加などがその一環で、ストレスを感じないインテリアとしています」

アトレー・インテリア
ハイゼットカーゴに対しノイズを減らしたインテリア

── 最後に。新型はスクエアスタイルを打ち出していますが、最近のダイハツ車は少し個性が薄いと感じます。その点デザイン部はどう認識していますか?

「そこはふたつの背景があります。まずお客様に寄り添い、より受け入れられる商品を目指していること。また、トヨタグループとして、商品の裾野を広げる役割があることです。尖った表現でお客様を限定しない、カタチだけの個性ではなく、お客様の使用シーンを想像しデザインする。その点でお客様の顔が見えてきたとも言えますね。その中でどう差別化するかは難しいところですが、ダイハツには多くの車種がありますので十分対応できると考えています」

── 多くのユーザーに受け入れられ、かつ凡庸にならないデザインの展開ですね。本日はありがとうございました。

アトレー・デザイナー【語る人】
ダイハツ工業株式会社
くるま開発本部 デザイン部 第2デザインクリエイト室
グループリーダー/主担当員 森岡 幸信(写真右)
第1デザインクリエイト室 主任 井藤 孝一(写真左)

(文・インタビュー:すぎもと たかよし

この記事の著者

すぎもと たかよし

すぎもと たかよし 近影
東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、クルマも最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。