■生産本部内の「モノづくり人財戦略部」が進める社内留学制度例をご紹介
ヤマハ発動機の広報グループが発信している「ニュースレター」。今回のエピソードは、産休明けから復職した女性のお話です。
部品加工職場からDS(データセンシング)技術開発グループに社内留学中の嶋 鮎美さんが今回の主役。
嶋さんが出産前まで働いていたのは、エンジン部品工場の加工職場。重い器具を持ち上げる作業などもありますので、基本的には男性中心の職場だそうです。
嶋さんは「女性従業員の交替勤務は前例がなく、相談させていただいた上長も困ったと思うのですが、希望して2交替、3交替で勤務していました」と、出産前の勤務について語っています。しかし、産休明けからの復職後であり、子育てをしながらの夜間勤務は、現実的ではないのは容易に想像がつきます。
「楽しみは、子どもたちとの散歩の時間。そのひと時を大切にしたい」と考えていたそうで、タイミングよく社内留学の声が掛かりました。
以前お伝えしたように、ヤマハ発動機には社内留学制度があります。さらに同社では、2022年1月に、自動化や「DX(デジタルトランスフォーメーション)」などにより、変革しつつある生産現場で活躍する未来人財を育てるべく、生産本部内にモノづくり人財戦略部を新設しています。
その取り組みのひとつとして推進されているのが、前述の社内留学制度。嶋さんはいま、社内留学生として生産現場のDX推進に取り組んでいます。
嶋さんは「パソコン初心者の私が……という思いもありましたが、まわりの皆さんに支えられながらシステム開発にチャレンジしています。留学期間はわずか2年ですから毎日が勉強です」と、戸惑いつつも前向きに挑んでるようです。
その成果として、先日、嶋さんらの開発による金型修理デジタル依頼書が現場に導入されています。
生産現場の風景が変わってゆく中で、嶋さんのモチベーションを高めているのは「主役は人」という現場の考え方とのこと。さまざまな工程で自動化が進んでも、同社のモノづくりの現場は、「人が幸せに、充実感を持って働ける職場を目指す」という指針を大切にしていて、嶋さんも強く共感を抱いているそう。
「私の強みは、作業者としての右手を持っていること。そこにIT技術やデジタル思考という左手を手に入れることができたら、その両方を行き来できる両利きのDX推進者として、現場の皆さんの課題解決に貢献できると考えています」と、ユーティリティプレイヤーになる決意を強めています。「職場の熱」「切削油の匂い」「夜間勤務による疲労」など、現場の実体験を持つ人財ならではの実効性の高いソリューションが生み出されるかもしれません。
なお、広報担当者によると、生産現場の女性従業員の割合は全体の1割未満だそうです。しかもその大半は組立職場に配属されているため、嶋さんのように加工現場の経験を持つ女性は非常に稀有な存在とのこと。
生産現場のダイバーシティを進めていくためにも、「両利きのDX推進者」は大きな力を発揮するはず、と社内の期待を集めています。
(塚田勝弘)