プジョー2008は3つのパワートレインを選べる自由とボディサイズが魅力【新車試乗】

■ガソリン車とは全く異なるキャラクターに仕立てられたディーゼル車

都市部に多いマンションなどの集合住宅に住んでいると、駐車場事情により人気のSUVが入らない!という人も多いはず。筆者もそんな一人です。筆者の住むマンションの立体駐車場も全幅1,800mm、全高1,550mmの壁があり、クルマ選びには苦労しました。

プジョー2008 GTブルーHDiの外観01
プジョー2008 GTブルーHDiの走行シーン

そんな筆者の現在の愛車が、2020年9月に日本市場に導入されたコンパクトSUVのプジョー2008。

全幅1,770mm、全高1,550mmと、立体駐車場に対応したボディサイズが魅力で、2021年度のプジョーの日本市場における販売台数の約21%を占めています。

これまでは、最高出力130ps・最大トルク230Nmを発生する1.2L直列3気筒ガソリンターボエンジン+8速ATというパワートレインを搭載したアリュールとGTが販売されていました。

2022年3月に一部改良を行うとともに、1.5Lクリーンディーゼルターボエンジンを搭載した、2008 GTブルーHDiを追加しました。今回、このプジョー2008 GTブルーHDiに試乗することができましたので紹介します。

●ル・マン24レースの技術で作られたディーゼルエンジン

プジョー2008 GTブルーHDiの内装08
一部改良で変わったシフトセレクター

まず、2008が行った一部改良のポイントから紹介しましょう。ガソリン車およびディーゼル車のオートマチックセレクターが、従来のレバータイプから指先だけで操作可能なトグルタイプに変更されました。

よりストレスフリーな操作性だけでなく、センターコンソールにおける収納スペースの改善を図りました。これにより、2008のモダンなインテリアが、さらに洗練されたデザインとなっています。

プジョー2008 GTブルーHDiの外観11
1.5L直列4気筒ディーゼルターボエンジン

そして、待望のディーゼルターボエンジンの搭載についてです。DV5型と呼ばれる1.5L直列4気筒ディーゼルターボエンジンは、2009年にル・マン24時間レースを制覇したレーシングカーに搭載されたエンジン技術が採用されている最新エンジン。

プジョー2008 GTブルーHDiの外観06
給油口の横にアドブルーの注入口がある

この1.5L直列4気筒ディーゼルターボエンジンは、最高出力130ps、最大トルクは3Lガソリン自然吸気エンジンに匹敵する300Nmを発生。軽快なレスポンスを実現しながら、燃費性能はWLTCモードで20.8km/Lという好燃費を達成しています。

コンパクトSUVの2008に高トルクを発生するディーゼルエンジンの相性はどうなのでしょうか。1.2Lガソリンターボ車オーナーにとっては非常に気になる部分です。

プジョー2008 GTブルーHDiの外観03
プジョー2008 GTブルーHDiのフロントスタイル

今回試乗したのは、車両本体価格401万7000円の2008ブルーHDi。オプション装備として、7万1500円のボディカラーをはじめ、14万円のパノラミックサンルーフ、25万3330円のナビゲーションシステム、4万4740円のドライブレコーダー、1万670円のETCが装着され、合計453万7240円となります。

ちなみに筆者の愛車は車両本体価格334万6000円のエントリーグレードの2008アリュールなので、車両本体価格だけで67万1000円の差となっています。

プジョー2008 GTブルーHDiの外観09
プジョー2008 GTブルーHDiのリアスタイル

プジョー2008の1.2Lガソリン車と1.5Lディーゼル車の車両重量を比較すると、1.2Lガソリン車が1,270kgに対して今回試乗した1.5Lディーゼルターボ車はパノラミックサンルーフ装着車のため1,350kg(非装着車は1,320kg)と、サンルーフ装着車で80kg、非装着車で50kg重くなっています。

前後の重量バランスをみると、ガソリン車の前軸重が770kg、後軸重が500kg。ディーゼル車の前軸重は820kg、後軸重が530kgなので、エンジンの違いで50kgディーゼル車のほうがフロントヘビーとなっていると言えるでしょう。

プジョー2008 GTブルーHDiの外観10
コンチネンタルのエココンタクト6Qを装着。サイズは215/60R17

最新鋭の1.5L直列4気筒ディーゼルエンジンは、アクセルペダルに対しての反応が、まるでガソリンエンジンかと思うほど鋭い加速性能を実現しています。ドライブモードセレクターをエコで走行しても、スムーズな加速は全くスポイルされません。

1.2Lガソリンエンジンが軽快さを前面に押し出しているのに対して、GTという名前のとおり、1.5Lディーゼルエンジンは重厚感のある落ち着いた走りが特徴です。よく仕立てられたシートも疲れにくく、ロングドライブに適しています。

プジョー2008 GTブルーHDiの内装07
2008 GTブルーHDiのインストルメントパネル

燃費面でも高速道路と一般道を走行し、高速道路では15kmの渋滞に巻き込まれましたが、実走行で18km/Lを下回りませんでした。ガソリン価格の高騰を考えると財布に優しいです。

試乗していて、若干気になったのはエンジン音の大きさと振動面です。特に、アイドリングストップが作動しない際の信号待ちなどでは、振動は大きめに感じました。1.2Lガソリンエンジンと比べると、静粛性と振動は厳しめな評価になりました。

プジョー2008 GTブルーHDiの内装09
ACCの操作を行うレバー。これは改善してもらいたかった

また、1.2Lエンジン車に比べるとフロントヘビーとなったことで、前後の揺れが若干大きくなったように感じます。特にブレーキング時のフロントの沈み込みが大きくなっています。

ただし、せっかく一部改良で、セレクターを変更したのであれば、ACCの操作もプジョー308同様にステアリングのスポーク部に移設してもらいたかったです。ステアリングコラムに装着されたレバーだと、非常に操作しにくいので、この点は変更してもらいたかったです。

1.2Lガソリンエンジンの使用燃料はハイオクガソリン。1.5Lディーゼルターボは軽油です。自宅の近くのガソリンスタンドでは、ハイオクと軽油との価格差は約31円ありました。いくらディーゼル車の燃費がWLTCモードで3.9km/L上回っていても、67万円の価格差を縮めるには相当な走行距離が必要となります。

ロングドライブが多いという人には1.5Lディーゼル車をオススメしますが、国産車と変わらない価格で手に入る軽快な走りが魅力の1.2Lガソリンエンジン車の実力の高さを再認識することができました。

(文・写真:萩原 文博

この記事の著者

萩原 文博 近影

萩原 文博

車好きの家庭教師の影響で、中学生の時に車好きが開花。その後高校生になるとOPTIONと中古車情報誌を買い、免許証もないのに悪友と一緒にチューニングを妄想する日々を過ごしました。高校3年の受験直前に東京オートサロンを初体験。
そして大学在学中に読みふけった中古車情報誌の編集部にアルバイトとして働き業界デビュー。その後、10年会社員を務めて、2006年からフリーランスとなりました。元々編集者なので、車の魅力だけでなく、車に関する情報を伝えられるように日々活動しています!
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