「北斗」でも活躍、この秋に見ておきたい! 引退直前の北海道の「キハ281系・キハ183系」名車たち

■北海道のふたつの名車「キハ281系」「キハ183系」が続々と運用終了 

JR北海道では7月13日のプレスリリースで、「北斗」で活躍しているキハ281系が2022年9月で定期運用を終了することが発表されました。

キハ281系「北斗」

さらに同日、「オホーツク」「大雪」で活躍しているキハ183系と、リゾート車両キハ183系5200番代「ノースレインボーエクスプレス」が今年度で引退することも発表されました。

キハ183系5200番代「ノースレインボーエクスプレス
キハ183系5200番代「ノースレインボーエクスプレス
キハ183系「オホーツク」

●北海道の高速化の嚆矢だった「キハ281系」がついに引退

キハ281系は函館〜札幌間の所要時間を短縮するために開発した特急用気動車で、1994年3月1日から「スーパー北斗」で営業運転を開始しました(2020年3月14日に「北斗」に名称変更)。

キハ281系の特徴はJR北海道で初めて振り子装置を搭載したこと。車体を5度傾斜させることでカーブ区間の通過速度をアップさせました。また、出力355psのインタークーラーターボディーゼルエンジンを1両あたり2基搭載し、最高速度130km/hで巡航できる性能を確保しました。

車体を傾けてカーブを通過するキハ281系「スーパー北斗」

「スーパー北斗」の運転開始当時、最速列車の「スーパー北斗2号・19号」は函館〜札幌間の途中停車駅が東室蘭のみとして、所要時間は従来よりも30分短縮した2時間59分を実現。表定速度は在来線最速の106.8km/hを誇りました。なお、2013年11月に「スーパー北斗」の最高速度は120km/hに引き下げられていて、現在は最速列車の所要時間は3時間33分となっています。

キハ281系は営業開始から今年で28年となり老朽化が進んでいます。そのため、後継車のキハ261系1000番代に置き換えられて、9月30日で定期運用を終了することになりました。

キハ261系1000番代は当初車体傾斜装置(傾斜角度2度)を搭載していました。カーブ区間の速度はキハ281系より劣りましたが、エンジンのパワーはキハ281系の330psを大きく上回る460psを発揮して、加速力はキハ281系を上回っていて、キハ281系と同じく最高速度130km/h運転を行いました。しかし2013年に最高速度を120km/hに引き下げ、2014年には車体傾斜装置の使用を取りやめています。

10月から「北斗」はキハ261系1000番代に統一します

JR北海道ではキハ281系のラストランに向け、試作車のキハ281-901を登場時の塗装に変更するとともに、側面のロゴも現在の「FURICO281」から登場時の「HEAT281」に変更する予定です。

現在のキハ281-901

10月22・23日にはキハ281系のラストラン列車として「スーパー北斗」で函館〜札幌間を1往復運転します。

函館8時35分頃→札幌12時16分頃

札幌12時38分頃→函館16時37分頃

ラストラン列車は8両編成で、札幌側先頭車がキハ281-901となる予定です。

●1980年代から活躍してきたキハ183系も終止符

キハ183系は国鉄時代の1979年からJR北海道発足後の1992年まで製造された特急型気動車です。1979年に登場した量産先行試作車900番代と1981年から製造された量産車の0番代はスラントノーズの先頭車が特徴。エンジンは220psまたは440psの2種類がありました。

国鉄時代末期の1986年に製造された500番代は塗装が一新され、先頭車が貫通型に、グリーン車がハイデッカーに大きく変更。さらに台車もモデルチェンジ。エンジンパワーは250ps・550psにアップしました。JR北海道発足後の1988年に登場した550番代は500番代の車体をマイナーチェンジしたもので、エンジンはインタークーラーを追加して300ps・660psにパワーアップしています。

1990年代からは最高速度130km/h対応改造車や、エンジン換装車が登場して、豊富なバリエーションを誇りました。しかしキハ261系1000番代の投入により運用範囲を縮小し、0番代・900番代は全車引退しました。現在は500番代由来・550番代由来の車両の一部が「オホーツク」(札幌〜網走間)2往復と「大雪」(旭川〜網走間)2往復に使用されています。

2022年5月からは先頭車とグリーン車各1両を登場時の塗装に復刻して注目を集めていましたが、キハ183系の引退が発表されたことで、今後さらに注目が高まることでしょう。

先頭車とグリーン車が復刻カラーとなったキハ183系「オホーツク」

キハ183系に代わって「オホーツク」「大雪」に投入されるのはキハ283系です。キハ283系はキハ281系の進化版として登場した振り子式気動車で、車体を6度傾けることができます。

キハ283系は1997年3月22日から「スーパーおおぞら」(2020年3月14日で「おおぞら」に名称変更)で営業運転を開始。最盛期には「スーパーとかち」「スーパー北斗」にも使用されましたが、どちらもキハ261系1000番代に置き換えられています。最後まで残った「おおぞら」も2022年3月12日のダイヤ改正でキハ261系1000番代に統一されて、運用を離脱していました。

「おおぞら」で活躍していた頃のキハ283系

キハ283系は「おおぞら」から撤退した時にグリーン車を全て廃車にしています。現行の「オホーツク」「大雪」にはグリーン車がありますが、来年度からグリーン車なしとするのか、グリーン車化改造を実施するのか気になるところです。

●北海道最後のリゾート気動車「ノースレインボーエクスプレス」

キハ183系5200番代「ノースレインボーエクスプレス」は、国鉄・JR北海道のリゾート気動車第6弾として1992年に登場しました。リゾート気動車はスキー客や観光客の輸送を中心に臨時特急など多目的に使用できる車両で、6編成それぞれに個性がありましたが、現在は「ノースレインボーエクスプレス」だけが残っています。

「ノースレインボーエクスプレス」はハイデッカー車4両とダブルデッカー車1両で組成したオール普通車の5両編成で、ハイデッキ・2階からの眺望が自慢。ダブルデッカー車の1階はラウンジとビュッフェとなっています。

客席からの眺望が自慢の「ノースレインボーエクスプレス」

「ノースレインボーエクスプレス」は道内各地の臨時特急や団体臨時列車で活躍したほか、青函トンネルを通過して青森県・秋田県にも足を延ばした実績があります。

しかし2020年10月に後継車となるキハ261系5000番代多目的特急車両「はまなす編成」が登場。翌2021年5月には「ラベンダー編成」も加わって、「ノースレインボーエクスプレス」の出番は2021年秋に函館〜札幌間を運転した臨時特急「ニセコ」程度まで減ってしまいました。

キハ261系5000番代「ラベンダー編成」(左)と「はまなす編成」(右)

現時点では「ノースレインボーエクスプレス」を使用した臨時特急「ニセコ」を9月3〜5日・8〜12日・15〜19日・23〜25日に運転する予定です。

函館13時52分→札幌19時25分

札幌7時56分→函館13時24分

「ニセコ」が経由する長万部〜倶知安〜小樽〜札幌間は、函館本線の山線と呼ばれていて普段特急が走らない区間。また長万部〜小樽間は北海道新幹線開業時に廃止される予定なので、その点でも「ノースレインボーエクスプレス」を使用した「ニセコ」は必見です。

9月はキハ281系の定期運用最後の1ヶ月。さらに「ノースレインボーエクスプレス」が走る日ならば効率よく撮影・乗車ができるので、旅の計画を立ててみたらいかがでしょう?

(文/写真:ぬまっち

この記事の著者

ぬまっち(松沼 猛) 近影

ぬまっち(松沼 猛)

1968年生まれ1993~2013年まで三栄書房に在籍し、自動車誌、二輪誌、モータースポーツ誌、鉄道誌に関わる。2013年に独立。現在は編集プロダクション、ATCの代表取締役。子ども向け鉄道誌鉄おも!の編集長を務める傍ら、自動車誌、バイク誌、鉄道誌、WEB媒体に寄稿している。
過去に編集長を務めた雑誌はレーシングオン、WRCプラス、No.1カーガイド、鉄道のテクノロジー、レイル・マガジン。4駆ターボをこよなく愛し、ランエボII、ランエボVを乗り継いで、現在はBL5レガシィB4 GTスペックB(走行18万km!)で各地に出没しています。
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