バッテリーEVの新型500eは、セカンドカーニーズに応える小さな高級車

■インテリアのデザインや操作系は、内燃機関仕様と大きく異なる

ガソリンエンジンモデルと併売される形でデビューした、バッテリーEVの新型フィアット500e

ひと目でフィアット500と分かるフォルムをまといながらも、ディテールはかなり異なっている部分もあります。内燃機関仕様と同じ丸目ではありますが、表情は少し違っていているように見えます。

フィアット500e
フィアット500e(カブリオレ)の走り

ナンバープレートの上に、「500」の大きなエンブレム(ロゴ)が配置され、その下にはメッシュ状の開口部を配置。フロントマスクの下半分の見え方が大きく異なります。

フィアット500e
写真左が500e、右が内燃機関の500

また、3ドアハッチバックと、電動開閉式ソフトトップのカブリオレでは違い雰囲気が漂っています。

バッテリーEVで、遊び心あふれるモデルは、まだあまり出てきていない印象を受けますが、ソフトトップルーフを開けていても、閉じていても肩ひじ張らないムードが魅力。

フィアット500e
新型500eのインパネ

一方のインテリアは、内燃機関仕様とは似ても似つかぬデザイン、スイッチレイアウトが採用されています。

エンジンスタータースイッチは運転席から少々視認しにくく、操作しづらいステアリング左側にあり、シフトスイッチは、インパネ中央にあるコンソール下に横に配置。

パーキングブレーキの作動レバーはセンターコンソールに、またドアの解除は、ドアにあるオープナースイッチを押して操作するなど、レクチャーなしで初めて操作するとかなり戸惑います。

フィアット500e
センターコンソールにパーキングブレーキスイッチを備える

インパネ中央には、10.25インチの「Uconnect」ディスプレイが用意されていて、「Apple CarPlay」とワイヤレス接続が可能。「Android Auto」の有線接続にも対応しています。おしゃれで遊び心あふれるディテールも印象的です。

フィアット500e
カブリオレモデルのフロントシート

FIATのロゴが使われているモノグラムのシート表皮、トリノの街並みが描かれたというスマホ用トレイ、ドアハンドル底面にあしらわれた「Made in Torino」のロゴやNuova 500のイラストなども遊び心の演出に寄与しています。

全長・全幅ともに60mm拡大しているものの、居住性もフィアット500そのもので、大人2人にジャスト。後席は「収まってしまうと」意外に座れるものの、乗降性も考えると、非常用の域を出ていません。

フィアット500e
500eのリヤシート

気になる走りは、フィアット500らしいヒョコヒョコ動く乗り心地を示しながらも、バッテリーEVらしく、スタートダッシュから鋭くスムーズな加速を容易に引き出せます。

2気筒の「ツインエア」から乗り替えると、その鋭く滑らかな加速に驚くかもしれません。加速時には、バッテリーEVなどに特有の甲高い音とともに速度を上げていきます。

フィアット500e
メーターディスプレイの走行モード表示

驚かされるのは、走行モードを「RANGE(レンジ)」にすると、いわゆるワンペダルモードになり、ペダルを戻した際の減速感がかなり強くなります。数あるEVの中でも強烈な回生ブレーキが掛かるのが印象的。

「NORMAL(ノーマル)」モードにすると、回生ブレーキはほとんど感じられず、滑走(コースティング)するように前に進みます。ガソリンエンジン車からの乗り替えでも違和感のない走りになります。「ノーマル」モードにすると、クリープ現象もありますので、慣れるまでは同モードにする手もありそう。

先述したように、「レンジ」では回生ブレーキの効きが強まり、アクセルペダルを離しただけでブレーキを掛けたような強い減速が得られます。

フィアット500e
500e(ハッチバックモデル)の走り

「シェルパ」は、アクセルレスポンスの制御やシートヒーターをオフにすることで、エネルギー消費を抑え、航続距離を延ばすエコモードですが、街中であれば加速時に遅いと感じさせることはありませんでした。

また乗り心地は、ショートホイールベースらしく、後輪の衝撃がすぐにドライバーに伝わってくる感じで、全体としてヒョコヒョコ感がありながらもボディの剛性感は相当高く、バッテリーを積むことで低重心化にも寄与しています。

とはいえ、路面を優しくなでるような乗り味やフラットライドに終始するようなテイストではなく、あくまで小気味よい機動力を強く感じさせる動きです。軽快なハンドリングは、フィアット500のファンも納得させるはず。

フィアット500e
カブリオレモデルの走行シーン

さらに、500eはボディ剛性の高さに加えて、エンジンがないこと、新設計プラットフォームなどにより高い静粛性も備えています。

内燃機関車、とくに2気筒のツインエアは、好き嫌いが明確に分かれそうなキャラということもあり、初めて500に乗るのなら500eの方が万人向けといえそうです。

500eのこうした静かさは、小さな高級車と呼ぶにふさわしいムードを放っていて、航続距離(航続距離は最大335km)が限られるバッテリーEVということもあり、セカンドカー、サードカー向きといえそうです。

(文:塚田 勝弘/写真:小林 和久)

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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