ヤマハ発動機の産業用無人ヘリコプターが海外での害虫駆除でも活躍

■低い高度を飛び、多くの積載量と連続航行時間を可能とする産業用無人ヘリコプターの利点

ヤマハ発動機の産業用無人ヘリコプターは、人手不足などの課題を抱える農業分野で活躍しています。同社の広報グループが発信するニュースレターの今テーマは、その産業用無人ヘリコプター。

ステージは日本ではなく、オーストラリアのシドニーから飛行機で約3時間、太平洋に浮かぶノーフォーク島です。人口約2,200人の美しい島で、風光明媚な島の上空をヤマハ発動機の産業用無人ヘリコプター「FAZER R(自動航行機能付)」が飛んでいます。

ノーフォーク島
オーストラリアのノーフォーク島で活躍する産業用無人ヘリコプター「FAZER R(自動航行機能付)」

用途は農業ではなく、害虫駆除のため空中から駆除剤が散布されています。

同社の現地法人ヤマハモーターオーストラリアの森奈津美さんは、「アルゼンチンアリの繁殖が猛威を振るって、深刻な問題としてクローズアップされ始めたのは、2005年頃からだといわれています。有害アリが繁殖しているとみられるのは、島内の約495ヘクタール。16のゾーンに分けて4年前から駆除を始め、駆除剤の散布を終えたゾーンでは、おおむね根絶が確認されました」と得られた効果を紹介しています。

アルゼンチンアリの繁殖により、絶滅が危惧される島固有の鳥類や植物の受粉を助ける在来種のアリの捕食、農作物に害を与えるアブラムシとの共存関係や、住宅やホテルへの大量侵入など、被害は広範囲に及んでいます。

アルゼンチンアリ
無人ヘリで散布した薬剤に群がる有害アリ

以前は、住民が噴霧器を背負って駆除に当たっていたものの、その効果は限定的で、研究機関の推薦をきっかけに、2018年からは無人ヘリによる計画的な散布も行われるようになったそうです。このアルゼンチンアリは、貨物に付着して外部から入ったとみられていて、その後、アリが付着したガーデニング用品が島内で販売されたため、瞬く間に島の全域まで繁殖域が広がってしまったそうです。

今後も数年間をかけて残った繁殖ゾーンの散布を進めるとともに、根絶されたゾーンでも再繁殖を防ぐためのモニタリングなどが続けられる計画になっています。

ノーフォーク島での成功事例は、同じような課題を抱える他の地域からも注目されています。インドネシアにも近いクリスマス島では、異なる種類の有害アリが島の顔であるクリスマスアカガニを襲って食べる被害が広がっています。また、オーストラリア本土のクイーンズランド州でも外来種のアリによる健康被害の懸念も高まっているそうです。こうした地域でも、産業用無人ヘリによる駆除剤散布の検討が始められています。

ヤマハ発動機
ノーフォーク島の学校で行われた自然環境保護の無人ヘリによる課題解決の授業。ヤマハモーターオーストラリアのスタッフが講師を務めた

現地法人の森奈津美さんは、「それぞれの地域に有害アリ駆除のためのメソッドがあり、地域に合った方法で取り組まれています。ただ、手作業による散布では繁殖に追いつかず、上空高く飛ぶ有人ヘリでの散布では河川や住宅地に薬剤が飛散するリスクもあります。オーストラリアの環境保護に、当社の技術が貢献できるのはうれしいです。先日はノーフォーク島の学校で、島の自然を守る取り組みの授業もさせてもらいました」と、これまでの課題と手応えを語っています。

低い高度を飛び、電動ドローンでは実現困難な積載量と連続航行時間を可能とする無人ヘリの活用に注目が集まっているそうです。

塚田 勝弘

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
続きを見る
閉じる