目次
●2021年チャンプが2024年まで契約更新
ヤマハ発動機(以下、ヤマハ)は、6月3日、世界最高峰の2輪レース「MotoGP」のヤマハワークスライダーで、2021年に年間チャンピオンに輝き、2022年シーズンも現在ランキングトップの「ファビオ・クアルタラロ」選手との契約更新を発表。
2023年と2024年の2年間も、ヤマハ・ファクトリーレーシングMotoGPチーム(Yamaha Factory Racing MotoGP Team)から参戦することを明かにしました。
●ヤマハワークス初年度に偉業を達成
クアルタラロ選手は、現在、ヤマハのMotoGPワークスチーム「モンスターエナジー・ヤマハMotoGP」に所属するフランス出身のレーシングライダーです。
ワークス入りした初年度の2021年シーズンに、いきなり年間チャンピオンを獲得。ヤマハにとって、2015年のホルヘ・ロレンソ選手以来、6年ぶり18回目の快挙をもたらした実力派のライダーです。
クアルタラロ選手は1999年フランス生まれの23歳。幼い頃からバイクに乗りレースに興味を覚え、2015年に16歳で世界選手権のMoto3クラス(250ccマシンで競うMotoGPの下位クラス)に参戦。
2016年〜2017年は、上位クラスのMoto2に昇格後、2019年にヤマハのサテライトチーム「ペトロナス・ヤマハSRT」に加入し、最高峰クラスのMotoGPにステップアップします。
2019年は7回の表彰台、2020年にも3勝をマークするなどで非凡なる才能を発揮。2021年シーズンからは、前述の通り、伝説のライダーで昨年引退した「バレンティーノ・ロッシ」選手の代わりとしてワークスチームに加入し、いきなりの偉業を達成します。
ちなみに、クアルタラロ選手のMotoGP年間チャンピオンは自身初であるばかりでなく、フランス人としても初めてのタイトル獲得となりました。
そして、全20戦が予定されている2022年シーズンも、ワークスマシン「YZR-M1」を駆り大活躍。5月29日開催の第8戦イタリアGPまでの時点で、2位の「アレイシ・エスパルガロ」選手(アプリリア・ワークス)と8ポイント差で年間ランキングトップに立っています。
ヤマハによれば、クアルタラロ選手は、
「2021シーズンから2022シーズン第8戦までに優勝6回、表彰台14回と見事な成績を残してきたほか、その前の2年間はサテライト・チームから出場し、優勝3回と表彰台10回を獲得。これまでに合計59レースでYZR-M1を駆り、そのうち16回のポールポジションと38回のフロントローを獲得した」
ことで、チームに大きく貢献しているといいます。
また、「彼の紛れもない才能、比類なきモチベーション、周囲を巻き込む明るさが、ヤマハにこのパートナーシップへの自信を与えてくれます」
といったコメントもしています。
●契約更新後、クアルタラロ選手の心境は?
一方、今回、ヤマハと契約更新したクアルタラロ選手は、
「さらに2年、ヤマハ・チームに残ることができるようになり、非常にうれしく思っています。これまでもヤマハでMotoGPへと進み、続いてファクトリー・チームに昇格してきました。ヤマハは初めから私を信じてくれていて、私はこのことに重みを感じています」
とコメント。さらに、
「その上でも今回の新たな合意は大きな決断でした。私は今、キャリアのなかでも最高のタイミングを迎えており、決断には少し時間を要しました。
ヤマハのMotoGPプロジェクトを信頼し、彼らのモチベーションの高さも実感しています。だからこそ私たちは契約を更新し、ともに歩むことを決めたのです。これで現在のシリーズに集中して取り組むことができます」
と語っています。
●苦戦する日本勢のなかで孤軍奮闘
なお、2022年シーズンのMotoGPは、ドゥカティやアプリリアといったイタリアのメーカーが大躍進を果たし、日本メーカーではホンダやスズキが苦戦中です。
ホンダは、ワークスチームのエースライダー「マルク・マルケス」選手が、右上腕骨の手術のため第9戦以降を戦線離脱。
スズキも、ワークスライダーの「アレックス・リンス」選手が現在ランキング6位ですが、2020年にスズキへ20年ぶりの年間チャンピオンをもたらした「ジョアン・ミル」選手は不調。
しかも、スズキは、2022年シーズン限りでMotoGPからの撤退を主催団体のドルナと協議中といった発表も行っています。
日本勢のなかで、まさに孤軍奮闘ともいえるヤマハとクアルタラロ選手。2022年シーズンの2連覇はもちろん、さらにさまざなレコードを伸ばす活躍に期待したいものです。
(文:平塚 直樹)