瞬く間に世界最軽量級のオートバイフレームを生み出す、ヤマハ発動機の革新的鋳造工場

■大物で、超薄肉の製品を量産する同社独自の技術を誇る現場

ヤマハ発動機の広報グループが発信している「ニュースレター」。今回のテーマは、鋳物工場です。

鋳物工場は、ものづくりの現場において重要な役割を担っています。クルマやオートバイなどの乗り物に鋳造技術は欠かせません。写真とともに紹介されているのは、ヤマハ発動機のオートバイや船外機などの金属部品が製造される鋳造現場。鋳物工場といえば昔から過酷な現場として知られています。

ヤマハ発動機 鋳物工場
本社工場の一角で稼働を開始した最新鋭ダイキャストマシン「CF+」

しかし、「ニュースレター」では、同社の鋳物工場について、「一度でも鋳造工場を訪れたことのある人なら、きっとそのイメージのギャップに驚くことでしょう」と紹介しています。

設備の改革に関わったメンバーたちは、「この会社の鋳造への情熱が詰め込まれた夢の現場です。魅せる、そして誇れる設備に生まれ変わりました」と胸を張って説明するそう。

工場内の色、音、そして匂いや熱などがこれまでの鋳造現場とは一線を画した印象を受けるそう。稼働されたばかりの最新鋭のダイキャストマシンが大型で、超薄肉のアルミ鋳造部品を次つぎに打ち込み、鋳上がった部品を大型アームロボットが運び出しています。

ヤマハ発動機 鋳物工場
鋳造部品だけで前モデルから約3kg軽量化された「MT-09」

その先にある最新鋭の高性能切削機が手際よくカットすると、瞬く間に世界最軽量級のオートバイフレームが出現します。

ヤマハ発動機の鋳造技術は、前身である日本楽器製造(現ヤマハ)のピアノフレーム鋳造を原点とするそうです。それ以来、主要鋳造部品の製造を社内で行い、CFアルミダイキャスト技術や回転塑性を用いたホイール製造など、世界に誇る独自技術を磨き上げてきました。CFアルミダイキャスト技術とは、金型真空度の向上や溶湯温度の最適制御、注入速度のコントロールなどを組み合わせ、大物かつ超薄肉の製品を量産する同社独自の技術です。

ヤマハ発動機は、部品点数の削減や軽量化、設計自由度の拡大などに貢献する「鋳物を両手で扱う会社」という文化を受け継いでいます。もちろん、鋳造技術も年々進化を遂げています。鮮やかな青と白にカラーリングされた、新規導入された2基のダイキャストマシンは、「CF+1」、「CF+2」と命名されたそう。

工長の望月祐樹さんは、「機械に名前をつけることは稀なケースです。この改革には、非常に多くの人や組織が関わって、魅せる、誇れる鋳造ラインを具現化しようと議論を重ねてきました。デザイナーが製造現場に関与した事例も多くはありませんが、デザインにあたっては、各作業者と会話を積み上げてみんなの誇りをかたちにしました」と改革の想いを語っています。

ヤマハ発動機 鋳物工場
現場からのライブ配信により、遠隔で稼働状況を管理する

当然ながら、変わったのは見た目だけではありません。大型で超薄肉のアルミ鋳造部品を製造するため、溶湯射出力や真空吸引力といった性能、理論値に基づくプロセス改善によって作業性や安全性、生産効率も大幅に向上を果たしたそう。工長の望月さんは、「誇れる設備の中で、誇れる仕事をして誇りを持った人財が育つと信じています。技能と人間力を兼ね備えた次世代のリーダーたちをこの職場から生み出していきたい」と、人づくりへの期待も寄せています。

先述したように、鋳造技術は、製品の性能や品質に直結する同社の大きな強みになっています。技術改革に向けた取り組みの一環として行われた鋳造設備の革新により、次のステージにすでに歩みを進めています。

塚田 勝弘

この記事の著者

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塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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