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■60年以上の歴史を誇るホンダ伝統のビジネス車を振り返る
ビジネス用途から通勤・通学といった普段の足、ツーリングなどのレジャー用途まで幅広く使えることで人気なのが、ホンダ伝統の原付2種ビジネスバイク「スーパーカブ110」。
その新型が大阪・東京・名古屋のモーターサイクルショーでお披露目され、2022年3月末に価格なども含め正式発表されたことで、大きな話題を呼んでいます。
スーパーカブ110といえば、1950年代から続き、世界中で販売されているホンダのロングセラー「スーパーカブ」シリーズに属するモデルだけに、その注目度の高さはさすがです。
ここでは、そんなスーパーカブ110について、最新モデルから初期モデルまでを振り返ってみましょう。
●スーパーカブ110ってどんなバイク?
スーパーカブ110は、1958年に発売された「スーパーカブC100」を元祖に持ち、世界中で大ヒットしたビジネスバイク「スーパーカブ」シリーズに属するモデルです。
扱いやすく、燃費性能も抜群な空冷の単気筒エンジン、足や体などに吹く風を防げるレッグシールド、クラッチ操作なしでシフトチェンジが可能なロータリー式シフトペダルなど、スーパーカブの伝統的スタイルや装備を今に受け継いでいることで、大きな支持を受けています。
スーパーカブのシリーズには、かつて50ccや70cc、90ccなど豊富な排気量のラインアップを揃え、多様なニーズに応えていましたが、現在は50ccの「スーパーカブ50」と、今回モデルチェンジした100ccのスーパーカブ110、それに125ccの「スーパーカブC125」を用意。
ほかにも、派生モデルとして、「クロスカブ110」や「CT125・ハンターカブ」といった、アウトドアなどのレジャー用途に似合うデザインや便利な装備を揃えた仕様もあります。
●初期型は90に代わり2009年に登場
スーパーカブ110の初代モデルJA07型は2009年6月。1964年から長らく販売されていた排気量90ccの「スーパーカブ90」に代わって登場しました。
外観デザインは、丸目ヘッドライトの採用などで、スーパーカブの伝統的でオリジナリティあふれるスタイリングを踏襲。それでいて、新世代のスーパーカブを主張するような滑らかな曲面で構成されていました。
エンジンには、110ccの空冷4ストローク単気筒を搭載。電子制御燃料噴射装置「PGM-FI」の採用などで、燃費はスーパーカブ90を上回る63.5km/L(60km/h定地走行テスト値)を達成していました。
クラッチシステムは、発進と変速にそれぞれ独立したクラッチ機構を備えた2段クラッチシステムを採用し、変速時のショックを軽減。4速トランスミッションの採用によって、巡航時の快適性の向上も図っていました。
また、始動方式にはセルとキック式を併用。バッテリーが完全に放電した状態でも、キックによって始動ができるシステムは、最新モデルにも継承されています。
さらに、車体は、バックボーンタイプの新設計パイプフレームを採用。剛性を向上させながらも、軽快な取り回しも実現していたのが特徴です。
●2012年のフルモデルチェンジで角目ライトに
2012年のフルモデルチェンジで登場したJA10型では、デザインを刷新。
シンプル、フレンドリー、質実を表現した「丸みのある四角」をテーマにしたフォルムを採用し、ヘッドライトは丸目から角型マルチリフレクターに変更されました。
また、車体には角断面パイプを採用したバックボーンフレームを採用。シート高を従来モデルと同様の735mmに維持しながらも、フレーム剛性の見直しとホイールベースを20mm延長したことで、荷物積載時のより安定した走行を実現させました。
なお、このモデルは、生産拠点を中国の新大洲本田摩托有限公司としたことで、調達から生産までを効率化。メーカー希望小売価格を従来モデルに比べ2万1000円安く設定した22万8900円(消費税込みの当時価格)とすることで、低価格化も実現しました。
●2017年に丸目ヘッドライト復活
2017年11月のモデルチェンジで登場したJA44型は、丸目ヘッドライトを復活させると共に、LED化が施されました。
また、レッグシールドからリヤフェンダーにつながる滑らかな曲面で構成された外観デザインに一新。ボディ両サイドに取り外し可能なサイドカバーを採用するなどで、使い勝手もより向上させました。
なお、このモデルから生産拠点は、再び国内工場(熊本製作所)に移管されています。
この先代モデルでは、2018年11月にスーパーカブの誕生60周年を記念し、特別なカラーリングを施した受注期間限定モデル「スーパーカブ110・60周年アニバーサリー」も登場(スーパーカブ50にも設定)。
さらに、2020年5月には、2輪車灯火器基準に関する法規対応を施したテールランプも採用されました。
ほかにも、2020年7月には、当時話題を呼んだ新海誠監督のアニメーション映画「天気の子」とのコラボモデル「スーパーカブ110・『天気の子』ver.」も販売(スーパーカブ50にも設定)。
これは、劇中に登場したスーパーカブのカラーリング「サマーピンク」を忠実に再現した仕様で、レッグシールド内側上部には『天気の子』ver.専用ステッカーも配置されていました。
●新型は新エンジンやキャストホイール採用
そして、2022年4月14日(木)に発売が予定されている新型モデル。型式は、JA44型からJA59型に変更されていますから、4代目ということになります。
主な変更点は、まず、最大トルクと燃費性能の向上を図りながら最新の排出ガス規制に対応した新エンジンを搭載したこと。
排気量に変更はありませんが、ボア×ストロークを従来型の50.0×55.6mmから47.0×63.1mmへとロングストローク化。最高出力も8.0psと同じですが、最大トルクは従来型の0.87kgf-mから0.90kgf-mにアップされています。
燃費性能はWMTCモード値で従来型67.0km/Lに対し67.9km/Lと、こちらも若干ですが向上。新型の燃料タンク容量は4.1Lですから、数値上の航続距離は1回の満タンで278km以上を実現することになります。
足まわりでは、メンテナンスのしやすさをより考慮した前後キャストホイールやチューブレスタイヤを新たに採用。前輪にはABS付きのディスクブレーキを装備することで、より制動力の強化も図られました。
なお、メーター内にはギアポジションや時計、平均燃費などを表示する機能を追加し、使い勝手をより高める変更が施されています。
カラーバリエーションには、グリントウェーブブルーメタリック、パールフラッシュイエロー、バージンベージュ、タスマニアグリーンメタリック、クラシカルホワイトの5色を設定。
価格(税込)は30万2500円です。
(文:平塚 直樹)