■GR86とBRZがカーボンニュートラル燃料でガチバトル!
3月20日(日)に決勝レースが行われたENEOS スーパー耐久シリーズ2022 Powered by Hankook 開幕戦「鈴鹿5時間耐久レース」。その予選日である3月19日(土)にトヨタの豊田章男社長、スバルの中村知美社長、マツダの丸本明社長が共同で記者会見を行いました。
その中で、今シーズンから新たにST-Qクラスに参戦するカーボンニュートラル燃料を使用したGR86とSUBARU BRZについて、トヨタの豊田章男社長、スバルの中村知美社長から説明がありました。
トヨタのGR86とSUBARU BRZは、トヨタとスバルの共同開発で製品化されています。そのため、市販車のエンジンにはともに水平対向の2.4リッターエンジンが搭載されています。が、トヨタがORC ROOKIE GR 86 CNF Conceptとしてスーパー耐久レースで走らせるマシンは、GRヤリスRZのエンジンをベースとした直列3気筒1.4Lターボエンジンを縦置きとして搭載した上で、カーボンニュートラル燃料を使用するように改良しています。
スバルがTeam SDA Engeneering BRZ CNF Concept(※SDA=スバル・ドライビング・アカデミー/スバル社内のエンジニアの運転技術&評価スキルを高める人財育成)として走らせるマシンは、BRZの市販車をベースとして、水平対向の2.4リッターエンジンをカーボンニュートラル燃料を使用するように改良しています。
市販車では共同開発しているGR86とBRZなので、トヨタとスバルで情報共有できる部分はお互いに共有しているとのこと。しかしレースを戦う上での勝負に関わる部分、特にエンジンが違うことで起因するような部分はお互いの手の内を見せていない、という開発を行っているそうです。
両社の間では「仲良くケンカしよう」というスローガンで開発されたGR86とBRZを使い、スバルの中村社長は「余計なことを言ってしまった」とエクスキューズを入れた上で、「レースはガチンコ、ということでGR86とBRZはガチンコレースのための開発を行ってきている」と語ります。
両社が使用するカーボンニュートラル燃料は、ブランドも製品も同じということで、その燃料についての基本的な部分は情報共有がなされているといいます。
そのカーボンニュートラル燃料はWRC(FIA世界ラリー選手権)でコントロール燃料として使われているもので、回収した二酸化炭素と電気由来の水素によるe-fuelと植物由来のバイオマス燃料をブレンドしたものとのこと。ガソリンの基準で言うとJIS規格のハイオクガソリンに近いものとのことです。
記者会見は予選セッションの前に行われましたが、この席上でTeam SDA Engeneering BRZ CNF Conceptに乗る井口卓人選手は、カーボンニュートラル燃料に合わせてセッティングしたマシンを、フリー走行などで乗った感想として、「ガソリンエンジン車と変わらないフィーリング」と話しています。
●水素エンジンカローラは次のフェイズへ!
昨年の富士24時間レースからスーパー耐久デビューし、バッテリーEVだけではない新しいカーボンニュートラルの選択肢の一つとして、水素燃焼エンジンを開発するために最終戦岡山まで参戦し続けた水素エンジン搭載のカローラ、ORC ROOKIE Corolla H2 Conceptは、今年もスーパー耐久を走ります。
その水素エンジンも、レースを戦う上での信頼性は昨年のシーズンでかなり向上し、水素の充填時間も富士24時間レースの5分から今回の鈴鹿戦では1分30秒ほどと、大幅に短縮!
昨年から引き続きエンジンの信頼性や出力の向上、水素充填時間の短縮などの基本部分の開発は継続しつつ、今年は排出ガスの精査とその課題の解決に着手するとのことです。
水素燃焼のエンジンは、積載する水素と空気中の酸素を結び付けて燃焼させますが、空気には窒素も含まれるため、排出ガスに二酸化炭素は無いものの窒素酸化物は含まれてしまいます。この窒素酸化物を除去するための触媒や機構などの開発も、今シーズンの課題として挙げられています。
そして今回、「情熱ある意志」の新たなパートナーとして紹介されたのが、山梨県知事の長崎幸太郎氏。山梨県が進める水素事業の一環として、山梨県で生産された水素をこの鈴鹿戦で提供しています。この水素製造も再生エネルギーで行われているため、水素カローラに関しては「作る・運ぶ・使う」の中でも、カーボンニュートラルの実現を行っているとのことです。
この山梨県などの参入を含めて、記者会見のバックボードに連なるブランドは何と22! これらのブランドが、カーボンニュートラルの新しい選択肢に協力をしていこうということなのです。
カーボンニュートラル燃料、水素燃焼エンジン、そしてマツダのバイオディーゼルと、カーボンニュートラルへの選択肢を開発する実験場としての役割を果たすスーパー耐久のST-Qクラス。
この2022シーズンでカーボンニュートラルの研究成果は、レースという舞台の中で一気に進んでいきそうです。
(写真・文:松永 和浩)
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