■ソフトトップと大きく異なるRFの味わい
2021年12月に商品改良を受け、2022年1月中旬から発売されているマツダ・ロードスター。
ソフトトップだけでなく、リトラクタブルハードトップのRFも同時に一部改良を受けています。RFにもボディを路面にピタリと押さえるような挙動が得られる「KINEMATIC POSTURE CONTROL(KPC)」が採用されています。
ソフトトップとRFを改めて同じコースで乗り比べると、RFの余力ある走りが際立ちます。
ソフトトップは、132PS/7000rpm、152Nm/4500rpmの1.5Lエンジンを搭載。今回の試乗車であるRF(「RS」グレード)は、184PS/7000rpm、205Nm/4000rpmを発揮する2.0Lエンジンを積んでいます。
RFの車両重量は1100kg(MT仕様)で、ソフトトップの990kg〜1020kgと比べると、100kg前後重くなっています。
パワーウェイトレシオは、RF(「RS」グレード)が5.97kg/PS。ソフトトップ(「RS」グレード)は、7.72kg/PSで、動力性能の数値でもRFの速さを物語っています。
実際、排気量と最高出力、最大トルクの余力の差は大きく、山道の上り坂で顕著に感じられます。ソフトトップは、車両重量とパワーはちょうど良い案配ともいえますが、RFの屋根を閉じて走ると、先述した剛性感の高さもあり、グランドツアラーのようなキャラであることが伝わってきます。
先述した「KPC」の採用により、高速コーナリング時のボディの浮き上がりが抑制され、コーナーでの安定感が増していて、より安心してステアリングを握れるのは朗報。コーナーからの立ち上がりも力強く、モアパワーを抱かせるシーンはほとんどありません。
2人でロングドライブを楽しむのであればRFの方がより向いているかもしれません。
RFの利点であるリトラクタブルハードトップを閉めると、ソフトトップとは明らかに違う高いボディ剛性感が得られるのが美点で、コーナーでの安定性はもちろん、路面からの衝撃を受ける感覚もまるで違います。荒れた路面のコーナリングでは、オープン時とクローズ時では違うクルマではないか!? と思えるほど差が感じられます。
当然ながらソフトトップと100kgもの重量差がありますから、山道でヒラリヒラリと走る軽快感ではソフトトップに譲ります。「RS」は、ビルシュタイン製ダンパーが備わりますが、とくに屋根を開けると足まわりの硬さが少し気になります。同時に、フロントサスタワーバーが配置され、フロントセクションの剛性感向上が図られています。
とくに恩恵が大きく実感できるのは、ボディ剛性感のバランスに富むクローズ時です。パワーリトラクタブルハードトップの開閉は、世界最速レベルを誇ります。
ワンタッチで屋根を開け放つと、ボディの剛性感はさすがに低くなるものの、オープンドライブならではの開放感を堪能できますし、風の侵入そのものや巻き込みも比較的少なく、より容易に長い間、オープンエアを堪能できる利点もあります。
ほかにも、駐車時の安心感(セキュリティ面から)なども享受できる利点がRFにはあります。大人のオープンスポーツモデルとして指名買いする手もあるでしょう。
なお、今回の商品改良では、上質なナッパーレザー内装に、新ボディカラーの「テラコッタ」が組み合わされた新グレードの「RF VS Terracotta Selection」も加わっています。ソフトトップと味わいが大きく異なるRFは、大人向けのオープンスポーツモデル、グランドツアラーとしての資質を備えています。
●価格
「RF RS」:430万7600円
「RF VS Terracotta Selection」:379万8300円(MT)、382万5800円(AT)
(文/塚田勝弘 写真/小林和久)