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■オン/オフ両方でワクワクな新型グラベルバイク
ヤマハ発動機(以下、ヤマハ)がリリースするe-バイク(スポーツ電動アシスト自転車)、YPJシリーズの最新作「WABASH RT(ワバッシュRT)」は、グラベルバイクという新しいスタイルを取り入れた新感覚モデルです。
北米を中心に盛り上がりをみせているこのスタイルは、オンロードとオフロードの両方での快適性や、高い走破性を両立していることが特徴。
近年、アウトドア・ブームが続く日本でもかなりの注目株で、近所の河川敷を走ったり、自然の中を散策するなど、さまざまな用途で使われています。
ワバッシュRTは、そんなグラベルバイクの魅力を、新型ドライブユニットや大容量バッテリー、優れた電動アシスト機能などにより、さらに磨きをかけたモデルです。
注目の新型モデルを、2022年3月10日(木)の発売にさきがけて試乗する機会をゲット! 一体どんな乗り味なののか、早速紹介してみましょう。
●ロードバイクのようなオフロード車
実は筆者、グラベルバイクなるものは見るのも、乗るのも初めてです。オフロード系のスポーツ自転車といえば、マウンテンバイクが有名で、筆者も1台所有していますが、外観はかなり違います。
ワバッシュRTの見た目は、どちらかといえばロードバイク。
マウンテンバイクのようにフロントフォークにサスペンションはありませんし、ハンドルもドロップ・タイプ風のデザインになっています。
ただ、普通のロードバイクと違うのは、ブロックパターンが付いた太めのタイヤを装着していること。ワバッシュRTには、700×45Cサイズのワイドタイヤを採用。荒地でも地面をしっかりとグリップするオフロードの快適性と、オンロードの軽快さを兼ね備えているといいます。
また、ハンドルもよく見ると、いわゆるロードバイクのドロップハンドルと違い、下部がハの字型に広がった形状をしています。
これは、フレアハンドルを呼ばれるタイプなのだそうです。
オンロードや平坦なオフロードなどをクルージングをするときなど、通常走行ではハンドル上部を持つことで、比較的的ゆったりとしたポジションで走ることが可能。
一方、林道・砂利道などの荒れた未舗装路では、広がったハンドル下側を持つことで抑え込みがしやすく、良好なコントロール性や安定性を得られます。
また、ハンドルバーバッグなど、長距離ツーリングの際に必要なアクセサリーも取り付けることが可能です。
●サスペンション付きシートも装備
ちなみに、グラベルとは英語で「gravel」と表記し、砂利道などの未舗装路を意味します。
モータースポーツのラリー競技、WRC(世界ラリー選手権)などではおなじみの言葉で、舗装路を走るターマック(tarmac)と区別されて使われます。
つまり、グラベルバイクは、未舗装路を走る自転車という意味。
ただし、マウンテンバイクと違い、舗装路走行での快適性や長距離走行も考慮した仕様になっていることが特徴。オンロードとオフロードでの走りを両立した、デュアルパーパスなモデルなのです。
ほかにも、ワバッシュRTでは、ハンドルバー右側の専用レバーを操作するだけで、走行状況に応じたシート高の調整が乗車したままでも可能な「ドロッパーシートポスト」を装備。
しかもサスペンション付きなので、路面に大きな段差やデコボコなどがあっても、衝撃を吸収してくれ、未舗装路での快適な走行をサポートしてくれます。
変速機構には、複雑な地形やライディングスタイルに対応する外装11段のグラベル専用リヤディレイラー「SHIMANO GRX」を採用。チェーン落ちを抑制するスタビライザー機能も搭載し、路面状況に応じた使い分けが可能です。
●アシストモードの自動選択も可能
ワバッシュRTは、新型のドライブユニットと最新の制御システムの採用も注目点です。
まず、ドライブユニットには、ヤマハYPJシリーズで初採用の「PWシリーズST」を搭載します。
これは、初心者から経験豊富なライダーまで、またオンロードでもオフロードでも、上質なアシストを提供する最新型のドライブユニットです。
特徴は、従来ユニットの「PWシリーズSE」と比べ100gの軽量化を実現しつつも、新設計プログラムの採用で、急な登り坂での発進でも、しっかりとしたトラクションを発揮すること。
加えて、高いクランク回転数(ケイデンス)まで対応したパワーサポートを実現します。
制御システムでは、独自の「クワッドセンサーシステム」を装備。
これは、スピード、ケイデンス、ペダリングトルク、角度の4つのセンサーから得た情報を瞬時に演算し、ライディングコンディションを正確に把握する機構で、ライダーが求める最適なアシスト力を常に提供してくれます。
加えて、「オートマチックアシストモード」も採用します。これは、走行状況に応じてライダーの要求にシンクロするアシストを自動選択する機能です。
そもそもワバッシュRTには、ハンドル左側にある多機能メーターにより、5つのアシストモードが選択できます。モードには、「HIGH(ハイモード)」「STD(スタンダードモード)」「ECO(エコモード)」「+ECO(プラスエコモード)」「OFF(アシストオフ)」が用意され、道路状況や道の勾配などにより、好みに応じたアシスト力を選べます。
オートマチックアシストモードは、それらのうち、「HIGH/STD/ECO」の3モードを自動で選択。いちいちモードを切り替えなくても、バイクが自分で最適なアシストモードを選んでくれる賢い機能なのです。
オートマチックアシストモードは、メーター左側にある切り替えスイッチで「A」を表示させると起動。
ちなみに、メーターにはほかにも、スピード、バッテリー残量、オド(積算距離)、トリップ(走行距離)、残りアシスト走行可能距離などの表示機能があります。
●悪路の急な登り坂も楽に走破!
実際に乗ってみると、このオートマチックアシストモードのすごさが体感できます。
オンロードはもちろん、石がゴロゴロしたフラットダート、悪路の急な登り坂など、走行状況に応じてその都度アシストモードが自動で切り替わってくれるので、まるでオートマ車に乗っているようにとっても楽チンです。
まさに「魔法」のアシスト機能ですね。
ちなみに、このモデルには、3タイプのサイズがあり、L(全長1815mm/サドル高955〜1110mm)、M(全長1790mm/サドル高895〜1050mm)、S(全長1780mm/サドル高835〜935mm)の3タイプから選べます。
身長165cmの筆者はSサイズを選んだのですが、車両重量21.1kg(Lサイズ21.3kg、Mサイズ21.2kg)という軽量な車体により、路面に大きなデコボコがある悪路の下り坂や、木の根っこがを超えるような林道でも、コントロール性は抜群。
また、そういったハードな道でも、先述したフレアハンドルの下側を握れば、暴れる前輪をハンドルで押さえ込むことが容易で、高い安定性も発揮します。
さらに、フラットなダートでは、リヤブレーキを効かせて後輪をスライドさせてターンさせるブレーキターンも簡単にできちゃいます。
特に、ディスクローターにフロント180mm径、リヤ160mm径を採用した油圧式ディスクブレーキの効きは抜群。
ブレーキレバーの入力に対し、制動力がリニアに出てくれるため、欲しいときに、欲しいだけの制動力を得られる高いコントロール性も合わせ持ちます。
●街にも自然にもマッチするボディカラー
もちろん、悪路だけでなく、舗装路やフラットダートなどでの快適性もかなり高いため、長距離走行でも疲れにくく、自然の中でゆったり走ることも可能です。
なお、このモデルには、500Whクラス36V/13.1Ahの大容量バッテリーを装備するため、ロングライドも楽勝です。
アシストできる1充電あたりの走行距離はモードによって違いますが、ハイモードで85km、スタンダードモードだと101km、オートマチックアシストモードでは96km。
より長距離を走りたいときは、エコモードで137km、そしてプラスエコモードでは、なんと200kmを実現します(道路状況、走行モード、走り方、気温、車載重量などによって変わるので、あくまで参考値です)。
フレーム下部に内蔵されたバッテリーは、専用充電器につなげば家庭用100Vコンセントで充電可能。
バッテリーを車体から取り外すこともできるため、家の中での充電にも対応。充電時間は、バッテリー残量がほぼ無い状態からフル充電までが約3.5時間です。
休日に、ちょっと近所の河川敷にある未舗装路を走ったり、ハイエースなどのワンボックスカーを持っていれば、キャンプ場などまで運び、出先で自然の中をツーリングするなど、さまざまな用途でアウトドアが楽しめるのがこのモデル。
車体色のセレスタイトブルーも、ばっちり自然にマッチするのはもちろん、意外に街中でも似合うおしゃれな色合い。
バッテリー供給タイプのLEDランプも標準装備して、夜間でも見通しがよく、被視認性も抜群です。
フレームやフォークの各所にはダボ穴タイプのアクセサリーマウントも設けられ、ロングツーリングやバイクパッキングに適した、さまざまなアクセサリーの装着も可能です。
価格(税込)は、43万8900円です。
(文:平塚 直樹/写真:堤 晋一、ヤマハ発動機)