電動化進む欧州でアジアンブランドが人気上昇。トヨタが3位、ヒョンデが10位【週刊クルマのミライ】

■欧州における2021年の販売台数トップのブランドはフォルクスワーゲン

自動車ファンにはおなじみの欧州系の自動車業界リサーチ会社「JATO」が、2021年のヨーロッパ(28の国と地域)におけるブランド別販売ランキングを発表しています。

まずは、そのトップ10ランキング(販売台数と前年比)をご覧ください。

1位 フォルクスワーゲン 1,273,892台(-5.6%)
2位 プジョー 727,973台(-3.1%)
3位 トヨタ 706,056台(+9.6%)
4位 BMW 681,252台(+1.2%)
5位 ルノー 676,651台(-17.2%)
6位 メルセデス 640,385台(-14.2%)
7位 アウディ 596,260台(-0.5%)
8位 シュコダ 585,361台(-8.6%)
9位 フォード 553,658台(-19.2%)
10位 ヒョンデ 510,810台(+21.4%)

JATOの発表したランキングは、あくまでも「ブランド別」なので、同じフォルクスワーゲン・グループのアウディシュコダは合算されていませんし、BMWとMINIも別扱い。

さらにいうと10位のヒョンデにつづく11位は同じ現代自動車グループのキア(500,805台 +19.6%)だったりします。

ちなみに、テスラの販売台数は167,969台で、ブランド別ランキングでは21位となっています。

欧州の電動化は一気に進んでいるという印象からすると、テスラ・ブランド全体で17万台に届かない販売規模というのは少ないと感じるかもしれません。

欧州の建前としての環境志向と、ユーザー心理の本音が乖離しているのはこれまでも感じることができましたが、電動化についてもまだまだ市場マインドとしてはついていけていない部分もありそうです。

たしかに補助金によって電動車両の売上は伸びていて、BEV(電気自動車)とPHEV(プラグインハイブリッド)の新車販売を合わせると2割近いシェアを得ていますが、このランキングを見ていると電動化を喧伝しているブランドほど前年比で落ち込んでいるようにも見えます。

実際、フォルクスワーゲンの主力モデルである「ゴルフ」の2021年の欧州における販売台数は205,408台にとどまっています。

これは前年比で-27.9%、前々年比では-50.0%と半減しているのです。そのぶん電動車両が売れているのであればいいのですが、完全にはカバーできていないために、ブランドとしては前年比割れの販売台数に落ち込んでいるといえそうです。

●トヨタ車の売れ筋はヤリス。年間182,590台

toyota yaris
日本でも売れに売れているヤリスは欧州でのトヨタ車ではトップの人気モデル。WRCでのプロモーションも効いているようだ

逆に、電動化に対して冷静に対応している印象のあるトヨタはブランド全体として伸びています。

単独ブランドとして見ると欧州で3番手というのは驚きではないでしょうか。

「欧州の電動化に乗り遅れたトヨタ」という意識高い系にありがちな文脈からすると意外かもしれませんが、これが事実です。

その原動力となっているのはヤリスです。

手頃なハイブリッドカーというのは、現時点で市場が求めている最適解ということもあるのでしょうし、また欧州でのプロモーション効果の大きいWRCでチャンピオンを獲ったことも、高い支持につながっているのかもしれません。

そんなヤリスの2021年における販売台数は182,590台で前年比+1.3%。車名別の販売ランキングでも7位につける人気モデルとなっています。

●ヒョンデはPHEVもあるSUVモデル「TUCSON」が人気

Hyundai_Tucson
ヒョンデのラインナップで欧州で人気ナンバーワンなのが「TUCSON」。48Vマイルドハイブリッドのほか1.6Lガソリンに44.2kWのモーターを組み合わせたハイブリッド、プラグインハイブリッドなども用意する

ヒョンデとキアを合わせて欧州販売が100万台を超えるところまで急成長している現代自動車グループ。その販売を引っ張る人気モデルはヒョンデのSUV「TUCSON」となります。

日本では販売していないのでなじみがないかもしれませんが、欧州では149,170台、前年比で+64.3%も売れている人気急上昇中のモデルです。

最近のヒョンデらしい個性的な顔つきは大きく見えますが、実際のボディは全長4500mm・全幅186mm・全高1650mmと扱いやすいサイズとなっているのも人気の理由でしょう。

基本となるパワートレインは、1.6Lガソリンターボ(150PS)、同48Vマイルドハイブリッド仕様、スポーティマイルドハイブリッド仕様(180PS)、1.6Lディーゼル(115PS)、同スポーティマイルドハイブリッド仕様(136PS)を用意。

1.6Lガソリンターボに44.2kWのモーター、1.49kWhのバッテリーを組み合わせたハイブリッド仕様ではシステム出力230PSを誇ります。

2022年モデルとして登場したPHEV仕様は、同じく1.6Lガソリンターボに66.9kWのモーターを組み合わせた仕様となり、システム最高出力は265PSまで高められ、欧州ではトヨタRAV4 PHVのライバルとして注目を集めています。

自動車コラムニスト・山本晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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