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■新型「ノア」「ヴォクシー」のデザインコンセプトは、堂々・活発プラス価値観の進化
迫力のフロントフェイスが話題騒然のトヨタの新型「ノア」「ヴォクシー」。賛否両論も出ているそのスタイリングにはどんな意図があるのか。さっそく、エクステリアデザインを担当した曽和氏にお話を聞きました。
── では始めに。新型の開発に先立ち、先代のデザインをどう評価・総括しましたか?
「実は先代も自分が担当したのですが、「エモーショナルボックス」のコンセプトのもと、低床化やリアオーバーハングの延長を行いつつ、フロントデザインでは堂々とした高級感を出しました。とくにヴォクシーは外観にこだわりを持つユーザーに評価され、インフルエンサー的な存在になったと認識しています」
── 「堂々・躍動的な力強いハコ」という新型のデザインコンセプトは、その結果を受けたわけですね。
「はい。事前のユーザー調査では、ノアは堂々かつ上品さ、ヴォクシーはスポーティで魅惑的といったイメージがありました。その共通項と言える堂々、活発といった新たな刺激に対し、さらに価値観の進化を加えたのが新型のコンセプトなんです」
── 先代比で35mm広く、70mm高くした(ノア)パッケージの意図はどこにありますか?
「拡幅はTNGAプラットフォームの採用のためですが、走りのよさを取り入れつつ扱いやすいサイズを踏まえ、先代のエアロシリーズより狭い1730mmに抑えました。高さは室内高1400mmを実現するためのサイズアップですね。全長は同じですが、シートの足元スペースや荷室の拡大を図っています」
── 「ハコ」としてはAピラーをかなり寝かせましたね。
「ええ。ピラーを後ろに引いた方が視界確保にはいいのですが、サイドビューがデザインテーマである「ENERGETIC BOLD」(別図参照)にそぐわなかった。その分三角窓を大型化し、かつピラーを限界まで細くして使い勝手に対応しています」
●オラオラ系は狙わないモダンなノア
── さて、話題騒然のフロントですが(笑)、3つの表現についてひとつずつ伺います。まず標準のノアのキーワードである「堂々とモダン」は、ちょっと相反する言葉に思えますが
「まず誤解のないよう言っておくと、最初からオラオラ系を考えていたワケではなく(笑)、初めから「モダン」を掲げていたんです。ミニバンはフロントのカタマリが大きいのでパーツ類も大きくなります。それらをバラバラにせず、一括りにしてシンプルにまとめたかった。ガチャガチャ感を廃し、結果堂々とモダンさを両立させる意図です」
── ノアの「S-Z」「S-G」シリーズのキーワードは「王道」ですが、このメッキ表現が「王道」とは意外です
「大きかったのは、先代のマイナーチェンジが認知されたことですね。つまり、ノアとしてはすでに当たり前の表現であり、常套手段という意味での『王道』です。従来、ファミリーに大きく寄っていたノアのイメージアップ、ブランド力アップを目指した表現でもあります」
●ヴォクシーの「怪しく光るランプ」、その意図は?
── ヴォクシーでは「先鋭」に加え「怪しく光るランプ」とのキーワードがあります。やはり「先鋭」は意外ですが…。
「アッパーグリルの薄さとロアグリルのスクエアな表現、つまり薄い目と分厚い口の組み合わせによる「先鋭」ですね。「妖しい光」は作り込み感を上げることによる独創性を意図しています。実は当初グリル全面を「横バー」だけで考えていたのですが、中心部のみをバーで示し、ここを両サイドから覆うイメージに変えた。これにより網目模様が横バーの中に入って行く表現ですね」
── 結果的に顔ばかりが話題になっていますが、それについてはどう感じていますか?
「そのようですね(笑)。ただ、やはりグリルはブランドイメージを作る重要なパーツですし、先のとおり、その点ミニバンは大きな造形になりますから、自然に堂々とした表現に行き着くんですね。それと、やはりユーザーが求めるイメージと一致していることが重要だと考えています」
●動きのあるサイドビューへ
── では次にサイドビューです。先代まではライバルに比べサイド面に大きな特徴は見られませんでしたが、今回は動きが見られます。
「はい。まず、深いプレスのラインを前後に通し、リアまでキャラクターの連続感が続くようにしています。同時に、ショルダー面をスーツの折り目のようにスッキリさせました。一方、フェンダーの抑揚は3ナンバー化の最大のメリットで、世界観を変えることができた。ただ、あくまでも室内空間の確保が最優先で、ボディ前後を絞った部分のデザイン代を無理なく使った抑揚なんです」
── サイドウインドウは先代同様リアへ抜いていますが、「力強いハコ」を考えるとボディ色のピラーの方がエネルギー感が出ませんか?
「たしかにしっかりしたハコ感は出ますが、前進するような動感が足りなくなる。長さ感も減ってウインドウが縦長に見えてしまいます。リアピラーの形状については後ろから見るとわかるのですが、上部はリアコンビランプにつながり、下部はリアスポイラーにつながる形状としてます」
── そのリアランプは3車種共通ですが、これは何を意図した形状ですか?
「リアパネルを上下で分け、ランプは上のキャビン部にグルーピングさせたかった。同時にガーニッシュもブラックにして一体化させ、それによって広い室内を表現しています。一方、下部はライセンスプレート枠をなくしてスッキリした広い面を作り、これをシリンダー状のカタマリが下から支える造形にしています」
── 最後に。今後もトヨタのミニバンはこの路線で進化して行くと考えていますか?
「まだ新型を送り出したばかりで難しいところですが、やはりミニバンはファミリーの身近な存在として期待値が高いんですね。なので、今後も私たち(トヨタ車体)のライフワークとしてデザインに取り組みたい。どういう方向に進むかについては、たとえばいまBEVを始め全方位での動力源を展開していますが、そうした広い可能性の中でベストな答えを見つけたいと思います」
── クルマ自体の進化により柔軟な対応をするということですね。本日はありがとうございました。
【語る人】
トヨタ車体株式会社 デザイン部 主査
新型NOAH・VOXY プロジェクトチーフデザイナー(PCD)
曽和 丈朗氏
(インタビュー:すぎもと たかよし)