■GRヤリスのハードコアモデル、GRMN
東京オートサロン2022のTOYOTA GAZOO RACINGブースで華々しく発表されたGRMNヤリス。
GRMNの「MN」は「マイスター・オブ・ニュルブルクリンク」の略で、これまでのトヨタのハードコアモデルにもつけられていた名称。
これまでには86、マークX、ヴィッツ、IQが2種出されており、ヴィッツ以外は100台限定、ヴィッツは200台限定となっていました。それを見ると500台限定はかなり多いな、という気がしますが、グローバルでの500台限定なので妥当な数字かもしれません。
そのGRMNヤリスですが、MNが示す通りニュルブルリンク北コースでの開発がよく報じられていました。
しかし、実はニュルだけで開発されていたわけではなく、日本のサーキットで、それもスーパー耐久というレースの場で公然と開発が行われていたのです。
発表の際に、TOYOTA GAZOO RACINGの佐藤プレジデントの語っていた「モータースポーツの現場で鍛え上げた」という部分の一端は、スーパー耐久にもあったのです。
豊田章男社長がモリゾウ選手となって、GRヤリスの販売開始の日からスーパー耐久に参戦しST-2クラスチャンピオンとなり、また2021年には全日本ラリーでチャンピオンとなるような活動がGRMNを造っていったと言えます。
●各部に見るS耐マシンとの共通点
GRMNヤリスで特に特徴的と言われる部分に、エアアウトレットが開いたカーボンボンネットと、スワンネックマウントのリアウイングがあります。
実は、これまでこの形状のウイングを取り付けたGRMNヤリスの開発車両がニュルでスクープされたことは無いようです。なのでこの形状、スワンネックマウントのウイングをつけたGRヤリスを初めて見たとおっしゃる方が多いように感じました。
しかし、スーパー耐久のROOKIE Racing GR YARISをご覧になったことがある方は、「なるほど」とうなずいてしまうことでしょう。
このレース写真はROOKIE Racing GR YARISのデビューレースであるスーパー耐久2020 富士SUPER TEC 24時間レースで撮影したものです。ちなみに、このレースの予選日である9月4日がGRヤリスの発売日となります。
取付位置のゲートスポイラー、スワンネックマウント、ウイングは誤差の範囲の形状の差異はありますが、ほぼ同じものと言えます。
スーパー耐久のST-2クラスからST-5クラスのエアロパーツは、公道走行可能な車検対応品であることが義務付けられています。レース用のGRヤリスに車検対応品を取り付けるということは、近いうちにトヨタの純正オプションとして販売されるに違いないと考えていました。
しかし、フルカーボンのウイングにアルミ削りだしのスワンネックマウントは、ドレスアップパーツと考えると本格的過ぎるとも思えました。その本格的過ぎるウイングが、なんとGRMNヤリスに装備されていたのです。
また、もう一つの特徴であるエアアウトレットの開いた、つまり穴開きのカーボンボンネットも、ROOKIE Racing GR YARISには装備されていました。
GRMNヤリスのものとROOKIE Racing GR YARISのものでは穴の形状が異なりますが、位置などはほぼ同じと言えるのではないでしょうか。
ROOKIE Racing GR YARISのバンパーにはドライビングランプが埋め込まれていませんが、それ以外はGRMNヤリスと同じカタチとなっています。
2021年のスーパー耐久では水素エンジンカローラが走ったりすることで、最近ではレースの形態をした実験場、と称されることもあります。
しかし、それ以前からGRMNヤリスそのものの姿を見せながら車両開発をしていたのだと考えると、トヨタの大胆さに驚愕するとともに、やはりレースは実験場なのだということに気づかされます。
(写真・文:松永 和浩)
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