ヤマハ発動機が約5年前から開発を進めた水素エンジンは、じつは扱いやすく、楽しい走りを生み出せす内燃機関だった!

■レクサスRC Fなどに搭載される5.0Lエンジンをベースに開発

トヨタが開発を進めている水素エンジン。2021年11月には、川崎重工業、スバル、トヨタ、マツダ、ヤマハ発動機の5社がカーボンニュートラルの実現に向けて、内燃機関を活用した燃料の選択肢を広げる挑戦について共同で発表しています。

ヤマハ発動機の広報グループが発信しているニュースレターの今回のテーマは、カーボンニュートラルへの取り組み。

トヨタ 水素エンジン
2021年のスーパー耐久シリーズに参戦した水素エンジン搭載トヨタカローラ

上記の発表会でヤマハ発動機の日髙祥博社長は「当社は、2050年にカーボンニュートラルの実現を目指しています。その一方で、社名に発動機とあるように、内燃機関への強い思いとこだわりを持った会社でもあります」。

さらに「水素エンジンは、カーボンニュートラルと、当社の内燃機関への思いを同時に実現する可能性を秘めています。個性や得意領域が異なる各社と協力し合い、さらに仲間を増やしていくことで未来につなげていきたいです」と、日髙社長はカーボンニュートラルと内燃機関への想いを語っています。

上記5社は、共同発表において内燃機関を活用した燃料の選択肢を広げる共同研究の可能性について検討を開始したことを明らかにしています。会場で披露されたのが、トヨタからの委託によりヤマハ発動機が開発したV型8気筒水素エンジン。

ヤマハ発動機
90度V型5.0リッターDOHC 32バルブの高性能エンジンを水素化

レクサスRC Fなどに搭載される5.0Lエンジンをベースに、インジェクターやシリンダーヘッド、サージタンクなどに改良が施された水素エンジンは、最高出力335kW/6800rpm・最大トルク540Nm/3600rpmを発揮します。

ヤマハ発動機が自動車用水素エンジンの開発に着手したのは約5年前。AM開発技術部の山田健さんは、プロジェクトが進むにつれて可能性の高まりを感じたそうです。

同氏は「100%水素を燃料とするエンジンは、じつは非常に扱いやすく、楽しい動力特性を持っていたということです。電子制御デバイスに頼らなくても、水素エンジンは操作しやすいフレンドリーな特性を備えています。半信半疑という感じで試走した人たちも、皆さん笑顔でクルマを降りてくる。そんな姿を見ているうちに、ガソリンの代用という消極的な動機ではなく、水素エンジンならではの特性に大きな可能性を感じるようになりました」と手応えを語っています。

さらに、山田さんたちが開発の過程で大切にしているのが官能性能で、ドライバーが五感で感じる魅力だそうです。

たとえば、特徴的な8in1集合排気管が奏でるハーモニックな高周波サウンドもそのひとつで、「エンジニアとしてもやりがいのあるチャレンジです。動力性能だけでなく、まだ見ぬ内燃機関の魅力を追求していきたいです」と続けています。

100%水素エンジンの可能性は、カーボンニュートラルという視点だけでなく、内燃機関ならではのドライバビリティの美点をさらにブラッシュアップする点も見逃せないようです。

塚田 勝弘

この記事の著者

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塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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