■インバーター一体式大トルク高回転タイプのモーター
2021年1月14日、ヤマハ発動機は、スバルテクニカインターナショナル(STI)が開発中の近未来モータースポーツEV「STI E-RA」に搭載される電動モーターユニットを提供したと発表しました。
「STI E-RA」は、2022年に国内サーキットを含む走行実験を経た後、2023年以降、ニュルブルクリンクサーキットでのタイムアタックでラップタイム400秒(6分40秒)に挑戦することを最初の目標に掲げています。
同モデルは、STIが地球温暖化対策を主としたカーボンニュートラル時代において、モータースポーツで新しい技術の経験と修練を積むことを目的に開発中のモータースポーツEV。
そのコンセプトカーである「STI E-RA CONCEPT」は、「東京オートサロン2022」のSUBARU/STIブースに出展されています。
ヤマハ発動機の電動モーターユニットは、同社がエンジン開発で培ってきた技術や感性を活かし、エモーショナルなパワーユニットの創造を目指して開発したそう。
エンジン開発で培われた鋳造や加工技術をはじめ、高効率なセグメントコンダクタ巻モーターの採用などにより、コンパクトでありながら高い出力を実現。
ヤマハ発動機製のこのモーターは、インバーター一体式大トルク高回転タイプで、蓄電量60kWhのリチウムイオンバッテリーで駆動されます。
さらに、独自のトルクベクタリングシステムも採用されています。ドライバーの感覚を損なうことなく、4輪それぞれのグリップ限界までバランスを均等化。グリップレベルを最大限に引き上げながら、車体の姿勢を安定させる技術を搭載。
最大の効果を得るため、車輪速や車速、舵角やGやヨーレート、ブレーキ圧、輪荷重などの各種センサーからの信号をリアルタイムで計算され、各輪の駆動制動トルクを決めてインバーターに指示を出します。
このモーターは、4輪へダイレクトにモーターが付いているためレスポンスに優れ、しかも車体のヨーを直接的にコントロールできる構造になっています。
将来のモータースポーツ車両(FIA E-GT)のレギュレーションにも盛り込まれていることからも最適な手段としています。
ヤマハ発動機は、CO₂排出量を2010年比90%削減を目標として掲げていて、今回のように、電動モーターユニットの試作開発受託は、この目標達成に向けた取り組みのひとつとしています。
(塚田勝弘)