日産がJAXAと共同開発を行っている月面ローバ(探査車)の試作車を公開

■月面という厳しい環境下で磨かれた制御を市販車にも反映させる!?

日産自動車は、日産グローバル本社ギャラリーにおいて、2021年12月2日(木)より12月27日(月)まで「Nissan Futures」イベントを開催しています。

このイベントは、日産が描く電動化の最先端を体感できる内容になっていて、同社のチャレンジの歴史を振り返りながら、現在の技術、電動化の未来を感じることができます。さらに、オンラインツアーでも気軽に楽しめるイベントになっています。

日産自動車 月面ローバ
日産とJAXAと共同研究を行っている月面ローバ(探査車)の試作機

宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)と共同研究を行っている月面ローバ(探査車)の試作機も公開されています。月面は起伏に富んだ地形が多く、月面ローバには高い悪路走破性や、高効率な走行性能が求められるそうです。

日産自動車 月面ローバ
月面ローバ(探査車)の試作機

同社は、2020年1月から共同研究に参画し、日産リーフなどのEVの開発で培ってきたモーター制御技術と、日産アリアに搭載される電動駆動4輪技術制御の「e-4ORCE」も応用され、駆動力制御についてJAXAと研究が進められています。

快適な乗り心地を実現するという「e-4ORCE」は、前後に2つのモーターを搭載した日産アリアのe-4ORCEモデルに採用されています。

それぞれのトルクを個別にコントロールすることができ、加速時のトラクション性能をはじめ、減速時も前後モーターそれぞれで回生量を調整。ブレーキ時のクルマの沈み込みを減少させるなど、ボディの揺れを抑える制御も盛り込まれています。

日産自動車 月面ローバ
リーフで培われてきたモーター制御技術が反映されている

コーナリング時は、前後のモータートルクと4輪のブレーキを協調制御することにより、ドライバーのステアリング操作に忠実で、滑らかで心地よいハンドリングを実現するそう。こうした制御により、雨天時の濡れた路面や雪道など、様々な道路環境下で安心して運転できます。なお、日産アリアのe-4ORCEモデルは、2022年夏以降の発売予定となっています。

JAXAとの共同研究では、この「e-4ORCE」をさらに進化させ、砂地などの過酷な環境下での走行性能を高める技術開発が進められています。砂漠などの砂地を走行する際はタイヤが空転し、砂に潜ることで脱出困難な状態(スタック)に陥ることがあります。スタックを回避するためには、ドライバーがタイヤの空転量を繊細にコントロールする必要がありますが、非常に高い技量が必要になるのは言うまでもないでしょう。

日産自動車 月面ローバ
起伏のある月面では緻密なトルクの制御が必要
日産自動車 月面ローバ
月面ローバでは、日産アリアの「e-4ORCE」をさらに進化させる

共同研究では、路面状況に応じてタイヤの空転量を最小限に抑え、様々な路面環境で走りを高める駆動力制御を研究、開発しているそうです。タイヤの空転量を最小限に抑えることで、砂地でのスタックを回避できるだけではなく、空転によるエネルギーロスを最小化することにも高効率化にも寄与。

こうした開発は、月面で走るローバだけでなく、地球で走るクルマの走行性能も向上させることが期待されます。

塚田 勝弘

この記事の著者

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塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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