「SUPER FORMULA NEXT50」が発表。JRPがスーパーフォーミュラのこれからの50年を見据えたプロジェクトとは?

■カーボンニュートラルとデジタルシフト、そしてドライバーファーストがテーマ

全日本スーパーフォーミュラ選手権のプロモーターである株式会社日本レースプロモーション(JRP)が、2021年10月25日(月)に東京都港区のHondaウエルカムプラザ青山で『SUPER FORMULA NEXT 50(SF NEXT 50)』のプロジェクト発表会を行いました。

発表会の様子
発表会の様子

1973年の全日本F2000選手権に始まるフォーミュラカーレースの国内トップカテゴリーはF2、F3000、フォーミュラニッポン、そしてスーパーフォーミュラなどとシリーズ名称を時代に合わせて変えながら、2022年に50年の節目を迎えます。

その節目にあたってJRPとホンダ、トヨタなどのパートナーシップの下で、2022年以降のサステナブルなモータースポーツ業界づくりを目的としたプロジェクト、『SF NEXT 50』をスタートすることとなりました。

JRP会長 中嶋悟 氏
JRP会長 中嶋悟 氏

JRPの中嶋悟会長は、自身のレースデビューの時期でもある1973年を振り返り、第一次オイルショックが日本を襲っていた時期でもあると語ります。そして現代の温暖化と重ね合わせて「燃やすものが無かった時代から燃やしてはいけない時代」とまとめ、両方ともモータースポーツ業界、自動車業界のピンチの時代とも語ります。

そんなピンチの時代にも50年間培ってきた「速さへの憧れ」「競うことの楽しさ」「勝つことの喜び」といったトップフォーミュラが持つ魅力をさらに発展させ、これからの社会において必要とされるモータースポーツを目指し、様々な取り組みを進めるとしています。

SF2021第6戦もてぎで優勝のマシン
SF2021第6戦もてぎ優勝マシン

これまで SUPER FORMULA をはじめとする国内トップフォーミュラは、グローバルで活躍する日本人のトップドライバーを数多く輩出、また海外のレーシングドライバーのチャレンジの場として機能しています。

今後さらにその価値を向上し、日本はもとより世界中のレーシングドライバーが参戦したくなる、また世界中の子どもたちに憧れられる「アジアを代表する SUPER FORMULA」となることを目指すとのこと。

そのためにも、ドライバーにフォーカスした「ドライバーファースト」というテーマのもと、SUPER FORMULA という世界最高レベルのレースが世界中のモータースポーツファンの共感・応援が得られるよう、2022年から段階的に、情報発信の在り方やサーキットの楽しみ方等を進化させるようです。

SF NEXT50の取り組み
SF NEXT50の取り組みのイメージ

また、カーボンニュートラルをはじめとしたモビリティへの技術開発、エンターテイメントなどのデジタルシフトなどの取り組みを行っていくこととなります。

カーボンニュートラルについてはefuelやバイオマス燃料など、実質的に温暖化ガスの排出をしない燃料を使った実験車両を製作し、2022シーズンのレースウィークの中の木曜日と金曜日を使い各サーキットでテスト走行を行うとのことで、その様子や内容はエンジンなどを開発するトヨタやホンダのみならず、広く一般にも公開していくということです。

エンターテーメントのイメージ
エンターテーメントのイメージ

そしてエンターテイメントでは特にテレビやインターネットを通じた観戦に対してデジタルシフトをしていくとのことです。

ドライブデーターを見ることが出来るアプリ
ドライブデーターを見ることが出来るアプリ

現段階で開発が進んでいるものとして、任意の選手のレース中のドライブデータを見ることが出来るアプリがあります。

これはステアリングの角度、アクセル開度、ブレーキ踏力、タイヤの消耗などが表示され、オンボードカメラ映像とともにそれらを見ることが可能となります。また無線通信の音声もフルタイムで聞ける機能も搭載されるとのことで、より一層の臨場感を得ることが出来るようです。

これも「ドライバーファースト」というテーマに則していると言えます。

●現役トップドライバーもSF NEXT50に期待

SF NEXT50の概要説明の後、第2部ではスーパーフォーミュラ現役トップドライバーの2名を交えたトークショーが行われました。

トークショーの様子
トークショーの様子

スーパーフォーミュラで3度のシリーズチャンピオンという記録を持つ山本尚貴選手は「中嶋会長に憧れてレーサーを志しました。中嶋会長がF1で現役のころはボクの父親も学生だったと思いますが」と冗談交じりでトークを始めます。

山本尚貴選手
山本尚貴選手

そしてSF NEXT50については「目標を掲げることは簡単なことだと思いますが、それを具現化して、実行させることは非常に難しいと思います」と語ります。

また、山本選手は「このNEXT50プロジェクトが来年2022年から始まりますけど、初年度からファンの皆さんが求められているようなレベルに行けるかどうかは、正直分からないです。が、より良いシリーズにしていけるようにボクたちも頑張っていきたいです」と続けます。

SF2021第6戦もてぎでの山本選手
SF2021第6戦もてぎでの山本選手
小林可夢偉選手
小林可夢偉選手

F1のレギュラー参戦やル・マン24時間レース優勝などの経歴を持つ小林可夢偉選手は「トヨタとホンダが同じ目標で協力し合うことがスゴイことです」とこのプロジェクト全体の感想を述べます。

SF2021第6戦もてぎでの小林選手
SF2021第6戦もてぎでの小林選手

また小林選手は「こういう“変われる”チャンスは、そう滅多に来ないと思います。だから、このタイミングで変わらないといけないという気持ちはあります。同時に、そう簡単にいかないなとも思っています。モータースポーツが、ただクルマを走らせるという認知だけでなく、ドライバーがアスリートとして理解されるようにしっかりとモータースポーツへの貢献、盛り上げをやっていきたいと思います」と続けます。

ドライバーのお二人ともSF NEXT50に期待をするとともに、このプロジェクトに協力を惜しまない様子が見て取れるようでした。

ホンダのインディマシンとF1マシン、トヨタのWECマシン
ホンダのインディマシンとF1マシン、トヨタのWECマシン

業界の垣根を越えてのチャレンジを象徴するかのように、この発表会の後方ではホンダとトヨタのグローバルモータースポーツ参戦マシンが並べられていました。

なお、この発表会の様子は動画でもご覧いただけます。

サスティナブルに変革する次の世代の国内トップフォーミュラー。このプロジェクトが次の50年をどう変えていくのかを期待して注目していきましょう。

発表会の登壇者
発表会の登壇者

(写真・文:松永 和浩

この記事の著者

松永 和浩 近影

松永 和浩

1966年丙午生まれ。東京都出身。大学では教育学部なのに電機関連会社で電気工事の現場監督や電気自動車用充電インフラの開発などを担当する会社員から紆余曲折を経て、自動車メディアでライターやフォトグラファーとして活動することになって現在に至ります。
3年に2台のペースで中古車を買い替える中古車マニア。中古車をいかに安く手に入れ、手間をかけずに長く乗るかということばかり考えています。
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