新会社「カワサキモータース」 BEV/HEVで二輪世界市場をリード

■2030年売上高1兆円を実現

2021年10月6日(水)、バイクのカワサキを担う新会社「カワサキモータース」(兵庫県明石市川崎町)の事業説明会が都内で行われました。

同社は10月1日、川崎重工業のモーターサイクル&エンジン事業部門の分社化により100%子会社として設立されたばかりです。

カワサキ BEVスポーツバイク
EICMA2019年発表のEVプロジェクトは、分社化でさらに明確な経営戦略の柱に。説明会会場に展示されたバッテリーEVスポーツバイク

新会社の社長に就任した伊東浩氏は、川崎重工のモーターサイクル&エンジンカンパニープレジデント常務執行役員からの昇格。

ハイブリッド車、メグロ、ニンジャZX25Rなどカワサキモーターサイクルならではの商品を提案する伝統と変革の中心的存在でした。

「分社は悲願でもあった。非常に大きな権限をいただいたので、スムーズで素早い意思決定ができるので、どんどん発表できる。私はうれしく思っている」と、興奮気味に語っています。

カワサキモータース伊藤浩社長
売上高2030年に1兆円をめざす、と意気込みを語る、新会社「カワサキモータース」伊藤浩社長

カワサキモータースの事業は、川崎重工グループ唯一のコンシューマー向け。経営の自由度を生かして「消費者の変化に素早く対応できる、柔軟でアジャイルな組織体制」を確立させて変化に対応させていくことで、新会社としての一段の成長を目指します。

同社は2021年度の売上高4100億円を見込んでいますが、2030年には1兆円、営業利益を6.1%から8%以上に引き上げることを目標に掲げました。

●世界初のハイブリッド・スポーツバイクで技術革新。オフロード四輪では300億円投資で成長を

カワサキモータースはグローバル市場での「モーターサイクル」、北米市場を中心とする「オフロード四輪やジェットスキー」、米国の牧場などで使われる乗用の芝刈り機に提供する「汎用エンジン」を3つの柱に事業を展開しています。

モーターサイクル分野では、カーボンニュートラルの実現で技術革新を印象付けます。

事業説明会の会場にはハイブリッド・ロードスポーツのテスト車両の実車を展示。またロードスポーツの電動車や二輪車搭載のための水素エンジンも展示しました。ハイブリッド・ロードスポーツは世界で初めての実車公開です。

カワサキ HEVスポーツバイク
世界初の実車公開となるハイブリッドEVのストリップモデル。「特に当社のハイブリッドは当社の技術の粋を集めた。技術の面では業界をリードしていきたい」と伊藤社長

「特に当社のハイブリッドは当社の技術の粋を集めた。技術の面では業界をリードしていきたい」と、伊藤社長は語ります。

この詳細については、関連記事で詳報します。

ただ、モーターサイクル分野の成長は「ベースラインが上がる」程度と見込んでいて、売上をけん引する主役は、オフロード四輪分野のようです。現在の生産はアメリカ・ネブラスカ州の工場ですが、2023年度からメキシコ・ヌエボレオン州の工場でも生産を開始。生産設備の新設や増強で5年間総額300億円を投資します。

「オフロード四輪は日本では想像しにくいが、米国では軽トラのように扱われている。この市場は底堅く、継続的に伸びている。アウトドアレジャーでも今後も伸びていく」(伊東社長)

●川崎重工グループとの関係、より深く

事業説明に先立ち川崎重工の橋本康彦社長が登壇。新会社への思いをこう語りました。

川崎重工業・橋本康彦社長
「カワサキモータースの成長が当社グループの持続的成長にとって必要不可欠」と語る橋本・川重社長

「カワサキモータース川崎重工のシナジーによるコングロマリット・プレミアムの実現に欠かせない存在。その成長が当社グループの持続的成長にとって必要不可欠」

分社化しても、事業間のシナジー効果で、川崎重工グループの価値をあげていくことを明確に示した言葉です。説明会では配送用ロボットが、その先駆けとして紹介されました。

配送ロボットは、カワサキモータースの四輪バギーの走行車体技術とロボテックス技術を組み合わせた製品で、障害物を自動認識して回避するだけでなく、マークした人に追従する高機能ロボットです。

●グループ初の外国人、女性社長で多様性をアピール

さらに、カワサキモータースは、その傘下の国内販売会社「カワサキモータースジャパン」の社長に桐野英子氏を登用。同社最大の生産拠点カワサキモータースUSAの次期最高責任者には、マイク・ボイル氏を決めました。

川崎重工グループとして初の女性社長、初の外国人社長です。

カワサキモータースの企業シンボルは「Let the good times roll(=もっと楽しもう) カワサキに関わる人すべての、よろこびと幸せのために」。新会社設立と共に、そのメッセージを伝えた形になりました。

(文・写真:中島 みなみ