■絶対リアは滑らせないという操縦安定性重視の味付けが特徴
2021年4月に公開された2代目スバルBRZ。約9年振りのフルモデルチェンジを行い、7月29日に正式に発表されました。
新型BRZには、すでに袖ケ浦フォレストレースウェイでのサーキット試乗を行っていますが、ようやく公道での試乗を行うことができました。
2代目となる現行型BRZはたくさんのトピックスがありますが、最も注目が高いのは従来モデルから排気量がアップした新型の2.4L水平対向4気筒エンジンでしょう。
先代モデルから最高出力は28psアップの235ps、最大トルクも38Nmアップの250Nmへと出力向上を実現。
さらに徹底した吸排気性能の強化とフリクション低減によって、トルクを向上。またレスポンスも素早くなり、滑らかに高回転まで吹け上がるスポーツカーらしいフィーリングとともに、力強い加速を実現しています。
シャシーは先代からのキャリーオーバーですが、スバルグローバルプラットフォームの開発から得たノウハウを採用。さらにインナーフレーム構造や構造用接着剤などによりボディを再構築。
その結果、先代モデルに対してフロント横曲げ剛性約60%、ねじり剛性を約50%向上させました。これにより、ハンドル操作への応答性を高めて、より軽快な動きを実現させると同時に、旋回時のトラクション性能を向上させています。
また、現状AT車のみですが、運転支援システム「アイサイト」を標準装備。プリクラッシュセーフティや全車速追従機能付きクルーズコントロールを採用。開発陣によると現在MT車用のアイサイトを開発中とのことでした。
現行型BRZのグレード構成は、現在のところ価格順でSとRの2種類。それぞれトランスミッションは6速MTと6速ATを用意し、価格帯は280万~312万円となっています。
SとRの違いはRが17インチタイヤに対して、Sは18インチ。シート表皮がRはファブリックでSは合成皮革。スピーカー数はRが6個に対してSは8個。そしてSはフロントシートヒーター機能を装着しているのをはじめ、ドアトリムがレザー調素材、ドアミラースイッチがサテン調シルバー加飾、パワーウィンドウスイッチがクロームメッキ加飾付となります。
今回試乗したのは、上級グレードSの6速MT車で、215/40R18サイズのミシュランパイロットスポーツ4というハイパフォーマンスタイヤを装着し、車両本体価格は297万円となっています。上記の装備差があるにも関わらず、Rの6速MT車とは17万円差なので、Sの方がバリューは高いと言えます。
先代モデルから引き継がれたヘキサゴングリルは、より低く、ワイドに設置されBRZの特徴である低重心を主張しています。さらに、フロントフェンダー後方に配置されたエアアウトレットやサイドシルスポイラーは空力性能向上に貢献しています。
インテリアは、水平基調のインストルメントパネルや低く設置されたメーターバイザーによって、広いガラス面積による良好な視界を確保。太いセンターコンソールによって左右が独立した空間を演出し、ドライバーは運転に集中することができます。
また、7インチカラーTFT液晶とLCD液晶を組み合わせたデジタルメーターは、視認性の高さだけでなくエンジンを掛けた時のオープニングやエンジンを切った際のエンディングにアニメーションを楽しめるように工夫されています。
ギアを入れて走り出すと、0.4L排気量アップしたエンジンパワーを感じます。昭和のチューニングの格言である「排気量アップに勝るチューンはない」という言葉どおり、低回転域からトルクを発生し、どこまでも伸びていく感覚を覚えます。特に3000回転を超えるとエキゾーストノートが変わり、パンチのある走りを楽しめます。
パワーアップしたエンジンに合わせて、シャシーも強化されているため非常にコントロールしやすいのが現行型BRZの特徴です。FR車ながら、4WDのスバルらしく後輪をできるだけ滑らさないようにセッティングされていて、どんなシーンにおいても安定感抜群です。
この乗り味はBRZとGR86の最大の違いで、GR86がアグレッシブな味付けでドライバーのスキルによって楽しさが変わるのに対して、BRZは誰でも安定感の高い走りを味わえるように味付けされています。こうした点にメーカーの哲学が反映されているのがスポーツカーの楽しいところです。
排気量がアップしたエンジンと剛性の上がったシャシーによって、6速MT車は操る楽しさを十二分に楽しめますが、6速AT車でも十分楽しめます。
現在、2L以上の自然吸気エンジンを搭載したスポーツカーは日産フェアレディZやシボレーコルベットなど数えるほどしかありません。このような大排気量自然吸気エンジンを楽しめる最後のチャンスかもしれないと考えると、BRZの魅力はさらにアップするでしょう。
(文・写真:萩原 文博)