インドの将来の製造業を支える「ヤマハNTTFトレーニングセンター(YNTC)」が初の卒業生を送り出す

■「ヤマハNTTFトレーニングセンター」は「日本式ものづくり学校」の第1号

中国に次いで約13億人という人口を抱えるインドは、13億人を超える国民のうち、25歳未満の若者が40%以上を占めるという若者が多いエネルギッシュな国です。しかし、一方で就労年齢に達した若者たちの失業率が高く、長年にわたる社会課題のひとつとされています。

また、急速にモータリゼーション化が進み、世界最大の二輪車市場でもあります。その反面、大気汚染も深刻で電動化の動きも出始めています。

ヤマハ発動機は、同国向けのオートバイをリリースする一方で、人材育成にも関わっています。インドの若者に製造業の幅広い知識と経験を伝える「日本式ものづくり学校」は、現在までに日本の企業、団体など16機関が認定を受け、それぞれが個別のカリキュラムにて人材育成を行っています。

ヤマハ発動機
感染拡大の影響により、約2か月遅れて開かれた卒業式

「ヤマハNTTFトレーニングセンター(YNTC)」はその第1号として、4年前に同社のチェンナイ工場内に開校され、今年9月に初めての卒業生を送り出しています。これは、ナレンドラ・モディ首相が2014年に提唱した製造業の振興策「Make in India」と「Skill India」は、若者の就労環境の改善にも大きな期待のかかる政策によるものです。

ヤマハNTTFトレーニングセンター
「ヤマハNTTFトレーニングセンター」の様子

日本政府もこの取り組みへの協力に調印し、官民による技能移転プログラム「日本式ものづくり学校」などを推進しています。

卒業生など学生や関係者からの期待も大きいようで、「YNTCを卒業すれば、政府から短大卒同等と認定されます。それだけに人気も高く、定員40人に対して毎年200人ほどが入校を希望します」と、チェンナイ工場長のアジャイ・マハジャンさんは語っています。

「私たちは、彼らに製造の知識や技術だけでなく規律や英語を教え、4年間かけて形にしていきます。全国どこの職場でも通用する優秀な人材を育てるためです」と続けます。

同校に入校した学生は、安全や品質に関する基礎的な考え方や規律、ものづくりの基本を少しずつ身につけていきます。二輪車組立、部品管理、機械加工、完成検査などの各工程を半年ごとに巡回して学び、製造業のさまざまな側面に触れながら経験を積んでいくそう。

ヤマハ発動機 ヤマハNTTFトレーニングセンター
各工程を巡回して幅広い知識と技術を身に着けるという

しかし、すべてが順調なわけでなく、1期生として入校した44名のうち、晴れて卒業式を迎えたのは27名。「家庭の事情で継続できなかった学生や、コロナ禍で影響を受けた学生もいます。私たちは日本の製造文化を身に着けた人材を一人でも多く輩出するために、奨学金制度の整備などにも取り組んでいます」とマハジャンさんは説明しています。

卒業生たちから寄せられたコメントには、「ヤマハ発動機や日本の文化を身に着けることができた」「私自身の生活や振る舞いが改善された」「規律や時間管理の大切さを知った」など、精神性や姿勢に関する記述が多いそうで、技術だけでなく、「日本式ものづくり」の土台を成す姿勢も評価されているそうです。

塚田 勝弘

この記事の著者

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塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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