「チーム パルクフェルメ」は、利益を優先せず、優良かつ良質な自動車評論を展開することを目指したコンテンツ制作チームです。今回はフェラーリ・ローマを取り上げます。
■その名も「ローマ」
これほど甘美な響きを持つ地名もないでしょう。
ローマ。
風光明媚、幾多の古代遺跡、過ごしやすい地中海性気候…。これまで自動車の商品名として使われてこなかったことが不思議なほどです。日本で言うなら“ホンダ・カルイザワ”みたいな感じでしょうか。
そういえばかつてイスズ・アスカ、ミツビシ・サッポロなんて名前のクルマがありました。日本人だとディーラーの社名のようにも聞こえてしまいますが、しかしフェラーリなら、そしてローマなら、きっと世界中の人々が甘い生活を連想するに違いありません。
フェラーリ・ローマは2019年にイタリアで発表されたV8ツインターボエンジン搭載のFRクーペです。日本では2021年初頭から納車が始まっています。
エクステリアデザインはフェラーリ内製。その元となったのは、1960年代のグランドツーリング系フェラーリです。基本コンセプトとして「La Nuova Dolce Vita」(新しい甘い生活)を掲げています。1950〜60年代におけるイタリア・ローマの自由なライフスタイルを現代的に再解釈したものだそうで、当時のエレガントなカーデザインの要素をモダンなフォルムに生まれ変わらせた、としています。
ローマのエクステリアは、そのハイパワーやスポーティネスを巧妙に覆い隠しています。すなわち近年のフェラーリには珍しくフォーマルな佇まいを持っており、力強さをことさらに訴えるようなディテールは見当たりません。往時のGTフェラーリのシンプルかつ優美なフォルムを、現代のデザイン言語によって見事に昇華させたといっていいでしょう。
●V8 FRフェラーリ最高の性能
リヤには電動スポイラーが備わりますが、普段は格納されており、高速走行時に自動で作動します。低速走行時はリヤウインドウとひと続きの平面です。高速走行時はリヤスクリーンに対して135度の角度となり、250km/hで95kgのダウンフォースを発生します。中間では最大ダウンフォースの約30%を発生します。走行状況に応じて作動のしきい値は変動し、車両統合制御装置であるマネッティーノのポジションともリンクしています。
パワートレーンは2017年デビューのポルトフィーノと基本的に同じです。90度V8ユニットは3855ccにターボ過給して620馬力、760Nmを発生。リヤに8速DCTを配置するトランスアクスル方式となっています。2.37kg/psというパワーウェイト・レシオを誇り、かつ、実は歴代フェラーリV8・FR車の中で最もパワフルなこのクルマの0-100km/h加速は3.4秒。最高速は320km/hに達します。
構成的にはポルトフィーノのクーペ版と言っていい存在ですが、主要コンポーネントの70%は新設計とされています。車重がポルトフィーノより大人1人ぶんほども軽量なのは、クーペとカブリオレの関係性の定石どおりです。
ちなみに「ポルトフィーノ」も地名です。ポルトの名から連想される通り、港です。北イタリアのジェノヴァ県にあり、東京ディズニーシーのモチーフになったというほどの観光地だそうです。ニッサン・アタミみたいなものでしょうか。それじゃ保養所にしか聞こえませんが。
ハンドル位置は左右を選べます。車検証上の乗車定員は4名。しかし頭上も膝前も狭く、大人は短時間でもムリです。ポルシェ911やアウディTTクーペと同様に、ラゲッジスペースと考えたほうがいいでしょう。
(文:チーム パルクフェルメ/写真:J.ハイド)
●SPECIFICATIONS
全長×全幅×全高=4,656×1,974×1,301mm
ホイールベース:2,670mm
車重:1,570kg(空車重量)/1,472kg(乾燥重量)
駆動方式:FR
エンジン:V型8気筒ツインターボ
排気量:3,855cc
トランスミッション:8速DCT
最高出力:620PS(456kW)/5,750rpm
最大トルク:760N・m/3,000-5,750rpm
タイヤ:(前)245/35ZR20(後)285/35ZR20
燃費:8.9km/リッター(WLTCモード、複合の11.2リッター/100kmより換算)
価格:2,682万円