フルモデルチェンジした11代目・ホンダ シビックのCVTはいい意味で存在感が消えている【公道試乗】

■パワートレイン全体でリニアな味つけ

●新デザインのパドルシフトを使えばマニュアル操作が楽しめる

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試乗したのは新型シビックのEXグレード(353万9800円)、ボディカラーはプラチナホワイト・パール(3万8500円高)

まもなく誕生から50年を迎えるホンダシビックは、グローバルにホンダの基幹モデルとして常に進化を遂げています。ただし、かつてシビックが担っていたベーシックカーとしてのポジションはフィットに譲り、ミドルクラスへと成長しています。

そのため日本では、ホンダらしい走りを期待するユーザーが選ぶようなキャラクターになっています。スタイリングやパッケージも重要ですが、ことシビックに関しては、走りの味つけや上質さが商品企画の根幹になっているといえるのです。

そんな新型シビックを八ヶ岳周辺で試乗することができました。タイトなワインディング、昔ながらの市街地、高速道路といった各シチュエーションにおいて新しいシビックは、どのような走りを見せてくれるのでしょうか。

今回は、CVT車に的を絞ってお伝えします。

●CVTだからこそターボラグを消したリニアな加速が味わえる

まず大筋のスペックをいえば、ボディサイズは全長4550mm×全幅1800mm×全高1415mm、ホイールベース2735mm。先代モデルと比べて、幅はそのままに全長を伸ばし、全高を低くしています。なおかつリヤのオーバーハングは短くするなど、凝縮したシルエットとしているのが特徴です。

エンジンはL15C型の1.5L 4気筒ガソリン直噴ターボ。使用燃料はハイオクで、最高出力134kW(182PS)/6000rpm・最大トルク240Nm/1700-4500rpmとなっています。将来的にはハイブリッドの設定も予告されていますが、今回試乗したCVT車は純エンジン車ということもあって、車両重量は1370kgと十分に軽量に仕上がっています。

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かつてのホンダF1ファンなら感涙もの、IHIの斜流タービンを装着。エキゾーストポートを4-2集合タイプとしているのも大きな変更点

1.4t以下のボディに240Nmという太いトルク、この数値からすると右足でアクセルペダルを操作すれば、思い通りに加速させることができることは容易に想像できるでしょう。

それでもターボとCVTの組み合わせというのは、リニアリティについて不安もあるのではないでしょうか。ターボラグと呼ばれる過給圧が高まるまでの遅延は知られていますし、CVTについてはラバーバンド・フィールがあるという先入観を持っている方も多いでしょう。

はたして、それは杞憂といえます。IHI製斜流タービンを採用したエンジンはターボラグをほとんど感じさせない仕上がりになっていますし、トルクコンバーターの性能向上を果たしたCVTは加速時の反応遅れのような悪癖はありません。アクセル開度に応じたリニアな加速Gを感じられます。

このあたり、ターボエンジンとCVT双方の良さをうまく組み合わせることで、それぞれのネガを消しているという印象です。CVTだからこそターボラグを消したリニアな加速が味わえるといえます。

加えて、CVTの制御に「全開加速のステップアップ制御」「ブレーキ操作ステップダウンシフト制御」を取り入れるなど多段変速のようなフィールも演出した、いい意味でCVTらしくないトランスミッションとなっています。

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シフトゲートはストレートタイプで、パターンはP・R・N・Dだけのシンプルなもの

ただし、日常的な領域ではそうしたCVTにおける工夫が、これまたいい意味で感じられない仕上がりとなっていました。

アクセルを踏み込んでいったときに加速とエンジンサウンドが完全にリンクしているように感じられ、まるでエンジンがダイレクトにタイヤを駆動してるような印象を受けたのです。もちろん現実的には変速をしているのですが、CVTの存在を忘れるような瞬間もありました。それほどパワートレイン全体におけるリニア感は高かったのです。

こうした好印象には、遮音性を上げながら、あえてエンジンの発生する音を「ノイズではなくサウンドとして作り込むこと」で、ドライバーの耳に届けるという設計が効いています。この加速と音の一体感というのは新型シビックの開発において重視されたポイントだといいます。絶対的な速さとしては突出しているわけではありませんが、こうした作り込みは、シビックに走りを期待するユーザーも満足させることでしょう。

●クルマと一体になったようなドライビングが楽しめる

このように市街地や高速道路などDレンジ任せで走っているシーンにおいては、リニアリティに優れたパワートレインという印象でしたが、それはワインディングでも変わることはありませんでした。

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ワインディングを楽しんでいるとき、CVTのネガはまったく感じなかった

ドライブモードでSPORTを選ぶと、よりレスポンスを感じられるような低めの変速比としてくれますし、アクセル操作に対するダイレクト感も増していきます。アクセルのオン/オフ操作で加速と減速を思いのままにコントロールできると感じられるものでした。

さらに、非常に操作性のよいパドルシフトを使うことで、マニュアルモードでの操作も可能となっています。左側のパドルシフトを引けば、どんどんシフトダウンをしていきエンジンブレーキを積極的に活用できます。そして、シフトダウンしすぎるようなことがあっても、適切に制御してくれるので姿勢が乱れるようなこともありません。

そもそも新型シビックではリヤのスタビリティが高くなっていることもあって、ワインディングでは常にオン・ザ・レールといえる走りが味わえます。その爽快なステアフィールをCVTはまったく邪魔しません。ステアリング操作に集中できることで、よりクルマと一体になったようなドライビングが楽しめたのです。

山本 晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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