目次
■若手とベテラン2人の実力者が新加入
世界最高峰の2輪レース「MotoGP」に参戦するヤマハは、9月16日、ワークスチーム「モンスターエナジーヤマハMotoGP(Monster Energy Yamaha MotoGP)」の契約ライダーとして、ケガで長らく欠場していた「フランコ・モルビデリ」選手と2023年シーズンまで契約したことを発表。
また、モルビデリ選手が所属していたヤマハのサテライトチーム「ペトロナス・ヤマハSRT(PETRONAS Yamaha Sepang Racing Team)」には、元ドゥカティ・ワークスライダーの「アンドレア・ドビツィオーゾ」選手が加入。2022年シーズンまで契約したことも公表されました。
両選手は、イタリアのミサノで9月19日(現地時間)に決勝が行われる「第14戦サンマリノGP」からの参戦となるため、残り5戦となった2021年シーズンの活躍が注目されます。
●ヤマハMotoGPの黄金コンビが復活
当初、2021年シーズンのヤマハMotoGPワークスは、現在ランキング1位の「ファビオ・クアルタラロ」選手(フランス出身22歳)と、「マーベリック・ビニャーレス」選手(スペイン出身26歳)がライダーとして走っていました。
ところが、ヤマハとビニャーレス選手は、契約を2021年シーズンで終了することを6月末に発表。その後、8月に開催された「第10戦スティリアGP」で、ビニャーレス選手が危険なマシン操作を行ったということで、次戦以降のエントリーが取り消され、8月20日にはシーズン途中で契約を即時終了することが発表されました(ビニャーレス選手は第13戦アラゴンGPからイタリアのアプリリア・ワークスで参戦)。
今回のモルビデリ選手ヤマハワークス加入は、そういったシーズン途中でのゴタゴタを沈静化させ、ビニャーレス選手が抜けた空席を埋めるといった意味もあります。ですが、やはりモルビデリ選手自身が高い実力を持っていることも事実です。
イタリア出身のモルビデリ選手(26歳)は、2013年シーズンからMotoGPの下位クラスMoto2に参戦し、2017年には同クラスのチャンピオンも獲得。2018年シーズンからは、ペトロナス・ヤマハSRTに加入しMotoGPクラスに昇格。
これまでにMotoGPクラスで表彰台6回、3度の優勝にも輝いており、2020年シーズンにはランキング2位を獲得しています。
ところが、ペトロナス・ヤマハSRTからの参戦4年目となる2021年シーズンは、当初からケガで悩まされ、6月25日に左膝の半月板と十字靭帯前部の手術を実施。
「第9戦オランダGP」以降を欠場していましたが、長期のリハビリを終え、ようやくサーキットに戻ってくることに。ちょうどビニャーレス選手の席が空いていたことと、これまでの実績を評価されてシーズン途中からのワークスチーム入りとなりました。
ちなみに、ヤマハワークスでチームメイトとなるクアルタラロ選手とは、2019年からの2年間、おなじペトロナス・ヤマハSRTでも闘っていました。当時の2人は、ヤマハワークスよりも好成績を残すレースもあり、どちらも注目度が高かったライダー。
今回のモルビデリ選手ヤマハワークス加入は、まさに「黄金コンビの復活」ともいえるだけに、今後の活躍が期待されます。
●ロッシのチームメイトは実力派のベテラン
一方、モルビデリ選手が抜けたペトロナス・ヤマハSRTには、前述の通り、アンドレア・ドビツィオーゾ選手が加入します。
同チームには、2021年シーズン限りで引退を表明したヴァレンティーノ・ロッシ選手が走っていますが、そのチームメイトとなります。
ドビツィオーゾ選手は、昔からのMotoGPファンにはおなじみのトップライダーです。イタリア出身35歳の大ベテランで、2001年からMotoGPの前身であるWGPに参戦し、2012年シーズンにはヤマハのサテライトチームからMotoGPに参戦した経歴もあります。
2013年からは、MotoGPのドゥカティ・ワークスに加入し、エースライダーとして活躍。2017年から2019年までの3シーズン連続でランキング2位を獲得するなど、多くの実績を持つライダーです。
また、マシンの開発能力も高いといわれており、現在のドゥカティ製MotoGPマシンが好成績を残す礎を築いたともいわれています。
ところが、ドゥカティとドビツィオーゾ選手は、2020年シーズン限りで契約を終了。まだまだトップクラスの実力を持ちながらも、2021年シーズンはMotoGPを走っていなかったのです。
チームメイトとなるロッシ選手とは、長年多くのバトルを繰り広げてきたライバル。引退を表明し最後のMotoGPシーズンとなるロッシ選手と、豊富な経験を持つドビツィオーゾ選手がどんなレースを繰り広げるのかも注目です。
いずれにしろ、2021年シーズンも残り5戦。ヤマハのMotoGPチームが一体どんな活躍を魅せてくれるのか、筆者もワクワクしながらレースを楽しみたいと思います。
(文:平塚 直樹)