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■4社で交換式バッテリーのコンソーシアム設立
カーボンニュートラルに向けた「クルマの電動化」は、4輪車はもちろん2輪車にも波及しており、特に輸送などで利用されるビジネスバイクなどを中心にEV化が検討されています。
そんな中、イタリア製スクーター「ベスパ」ブランドなどを手掛けるピアジオの日本法人ピアジオ グループ ジャパンは、2021年9月13日、ホンダ、ヤマハ、そしてオーストリアのバイクメーカーであるKTMの4社で、「二輪車および小型電気自動車用交換式バッテリーコンソーシアム(以下、SBMC)」設立に向けた合意書を正式に締結したことを発表しました。
これにより、SBMCは、今後、電動バイク用の交換式バッテリーの世界共通化などを目指すといいますが、実際、これはどんな内容なのでしょうか?
●EVバイクも航続距離や充電時間が課題
今回設立されたコンソーシアムは、モペッドやスクーター、2輪車、3輪車、4輪車など小型電気自動車の「輸送部門での普及」を促進することを目的としています。
つまり、前述したビジネスバイクや荷物運搬用の小型モビリティなどにおいて、EVモデルを一般化することが目標。これにより「バッテリーのライフサイクルマネジメントをより持続可能なものにすることを目指す」といいます。
そして、そのためには、共通して開発された交換式バッテリーシステムを利用することが、「低電圧エレクトロモビリティの開発の鍵となる」としています。
具体的に、SBMCでは、航続距離や充電時間、インフラ、コストなど、電動モビリティの未来についてユーザーが抱く懸念に対し解決策を見出すために、以下の4つの目標を掲げています。
1. 交換式バッテリーシステムの共通技術仕様の策定
2. バッテリーシステムの共通使用の確認
3. 欧州および国際的な標準化団体におけるコンソーシアム共通仕様の標準化および推進
4. コンソーシアム共通仕様の適用を世界レベルに拡大
現在のEVは、2輪車でもガソリン車に比べ航続距離が短い、充電時間が長い、充電場所などのインフラが少ない、といった課題があります。
たとえば、ホンダのEVビジネススクーターで50ccバイクに相当する「ベンリィe:I/プロ」では、一充電あたりの走行距離は87km。駆動用バッテリーには、取り外しも可能な独自の「ホンダ・モバイル・パワーパック」を2個搭載しますが、満充電には約4時間が必要です。
ガソリンエンジンを使った「ベンリィ」シリーズは10Lの燃料タンクで65.2km/L(2017年モデル)でしたから、航続距離は雲泥の差です。しかも、ガソリンであれば5分もあれば給油可能ですが、EV仕様ではフル充電にかなり時間がかかります。
●交換式バッテリーのメリットとは?
そういったEVバイクの課題解決策のひとつとして、現在考えられているのが各メーカーが共通化した「交換式バッテリー」を搭載することです。
これは、たとえば、充電ステーションなどに、フル充電された交換式バッテリーを置いておけば、電気が少なくなった電動バイクはいちいち時間をかけて充電しなくても、バッテリーを交換するだけで素早く移動できるという考え方です。
また、交換式バッテリーは、たとえばコンビニなどにも設置しておけば、専用のインフラを作る必要がないといったメリットもあります。
そして、そのためには、各メーカーが作るEVバイクも、すべて共通した交換式バッテリーにすることが合理的です。今回設立されたコンソーシアムの目的は、まさにここにあります。
しかも、SMBCでは、4社間で策定するコンソーシアム共通仕様を、将来的には欧州や国際団体にも標準仕様として認めてもらう、つまり世界共通化することを推進するといいます。
●国内2輪メーカーも共通化の動き
電動バイクの交換式バッテリーについては、国内の2輪メーカーでも共通化する動きがあります。
ホンダ、ヤマハ、カワサキ、スズキの4社は、2019年4月に「電動二輪車用交換式バッテリーコンソーシアム(以下、コンソーシアム)」を創設し協働を開始。
2021年3月には、日本での電動2輪車普及に向けて、相互利用を可能にする交換式バッテリーと、そのバッテリー交換システムの標準化(共通仕様)に合意しています。これにより、4社は共通仕様を前提とした交換式バッテリーを相互に利用する技術的検証(規格化)を進めていくとしています。
ちなみに、これら4社のコンソーシアムは、2020年9月から約1年間実施予定の交換式バッテリー電動二輪車実証実験「e(ええ)やん OSAKA」にも連携。
業界団体の日本自動車工業会の2輪EV普及検討会、大阪府、大阪大学が共同で約1年間実施した大阪府内における実験で、大阪大学の学生・教職員に前述のベンリィe:を20台を貸与。
バッテリーの交換ステーションを大阪大学のキャンパスや周辺の協力コンビニエンスストア店舗に設置することで、EVバイクの利便性などを検証、将来的な普及に向けたシステムの提案を行うというものです。
ともあれ、今回設立されたSMBCの取り組みは、まずはビジネスバイクなどからスタートするようですが、将来的には一般ユーザーが乗るEVバイクなどにも活用できるかもしれません。
国内4メーカーの動向も含め、今後どうなるのかが気になるところです。
(文:平塚 直樹 *写真はイメージです)